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NO.18 |
心臓と不整脈
(5−5)
心臓病患者の日常生活上の注意
ここからは心臓病患者さんの日常の生活上の注意ということで話をさせていただきます。心臓病のない方でも予防という意味でお聞き下さい。
日常生活では、可能であれば自分で脈をとったり、血圧を測ることを習慣づけましょう。
病院にかかっていらっしゃるような方は、体重はなるべく毎日、少なくとも1日おきくらいに測っていただくのが理想です。尿回数や尿量が変わっていないかどうかもチェックしてください。
手や足がむくんでいないかどうか、夜中に苦しくなるとはないか(ひゅーひゅー、ぜいぜいすることは心臓病や気管支喘息でみられます)、朝起きた時に爽快かどうかというようなことも大事です。
心臓を守るための生活法についてお話します。起床時はゆっくりと起きる、冷たい水はなるべく避けてぬるま湯で洗顔するほうが良いと思われます。トイレは心臓病の方に特に重要で、トイレを暖かく保つことがまず大切です。それと便秘時に力むと心臓発作を誘発することがありますので、便通を良くすること、トイレはできれば洋式のほうが望ましいと思われます。
食事は適量をゆっくり食べることが大切です。
お風呂もぬるま湯で38度から40度くらいが望ましいです。半身浴は心臓への負担が少ない入浴法で、胸の下までつかるだけでも十分に暖まります。首までつかると水圧の関係で心臓に負担がかかる場合がありますので、長く入りたい時は半身浴の方が良いと思われます。基本は、ぬるま湯であまり長湯をしないということが心臓病の方には大事です。
テレビはなるべくスリラーなど避け、楽しい番組を見るようにしましょう。実際にはなかなか難しいことですが、暗いニュースばかり見ているのは心臓に良くないようです。
長い間座っていると、たまに背伸びをすることが大事です。長時間の飛行機の旅で同じ姿勢を続けるために肺塞栓症という合併症がおこる場合がありますが(エコノミークラス症候群)、長時間座っている場合は時々立ち上がって運動する事が大事です。
寝る前にはあまりものを食べないようにしましょう。太りますし、熟眠の妨げになります。心臓病のある方はお独りで寝るのではなく、ご家族の方が傍にいたほうが良いでしょう。布団は軽めで暖めたものが良いです。
通勤に関してですが、朝はゆとりを持って出勤しましょう。ラッシュを避け、運転する場合にはゆとりを持って運転しましょう。高速道路は心臓病の方、血圧の高い方には勧められません。勤務時間は超過せず、時間内に留めることが大切です。
職場での昼食は弁当のほうがバランスが良いでしょう。仕事内容は、もし病み上がりであれば、無理をしないで人に頼めるものは頼みましょう。勤務後のおつき合いもほどほどにして断わる勇気も必要です。神経をすり減らす会議にはあまり出席せず、旅行する時は普段と同じペースで、出張の時には普段と同じような生活リズムを保つよう心がけましょう。
主婦の方の場合に移りますが、家事はなるべく冷たい水を使わないで、暖かいお湯で食器を洗うことが望ましいです。掃除をする時も無理な姿勢ではなく、楽な姿勢ですることが大事です。布団を干す時も、なるべく暖かい時に布団を干した方が良いでしょう。スーパーに行く時もゆとりを持ちましょう。高齢になりますと、お孫さんをあやすのも結構負担になることがありますので、ほどほどにしましょう。テレビは楽しい番組を見ましょう。
なかなか難しいことではありますが、冠婚葬祭の挨拶は心臓病で病み上がりの方にはストレスになりますので、断われるものなら断わったほうが良いでしょう。出張、旅行に行く時にはなるべく重い鞄は避けましょう。温泉に行かれた場合にはぬるいお湯で長湯しない、入浴はせいぜい2回にしましょう。
賭け事、競馬とかマージャンも心臓に良くありません。心臓病の方の夫婦生活は、まったくだめということではありませんので、医師に相談して指導を受けることが大切です。囲碁将棋などの勝負事はなるべくしないほうが良いでしょう。
食事の話に移りますが、食事はバランスを考えるということが一番大事です。規則正しく、脂っこいものは避ける、夕食は軽めに、夜食は控える、時間をかけてゆっくり食べる、味付けは薄め、というのが基本です。
食べ物の中では、海草類や野菜が血圧に良いとされています。キノコ、海草類、野菜類の食物繊維はコレステロールの吸収を阻害する働きがあります。それから青色魚、いわし、さば、あじなど良い方の脂肪を含んでいるので好ましい食物と言われています。
コレステロールの多く含まれる食品は皆さんご存じと思いますが、いか、うなぎ、レバー、たこ、筋子などです。逆に少ないものは、とりのささ身やいわしです。食品に含まれる塩分を頭に入れておくことも大事なことです。梅干しは1個で2g、たくわんですと一切れ0.6g、味噌汁一杯1.4g。私もしょっぱいものが好きでついつい味噌汁を2杯飲んだりしますが、それだけでも3g位になってしまいます。塩鮭は4gということで、こう見てきますと普段塩分をかなり摂っていることがわかります。
外食の時には脂っこいもの、フライとか天ぷらとかになりがちですが、摂り過ぎには注意しましょう。
運動は、腕立て伏せや短距離走など短時間にきつい運動をしますと、無酸素運動という酸素を使わない運動になり体に負担がかかりますので、無理のない軽い運動を続けるほうがより効果的とされています。
タバコは百害あって一利無し。タバコを20本吸う方は心臓病が2倍くらいになりますし、50本になりますと3倍になります。また、タバコは、血圧を上昇させ、脈を増やし、血管を痙攣させます。また、善玉コレステロールを減らし一酸化炭素を増加させます。タバコを止めるためには、周りの人に「止めます」と宣言して後に引けなくする、熱中できる趣味を持つ、まわりにタバコを置かない、「これで健康になれる」と楽天的に考える、など環境整備が必要です。最近はニコチンガムですとかニコチンテープというものが市販されていてニコチン中毒を少しづつ軽減しながら止める方法があります。タバコは「私はもう歳をとったから、止めても止めなくても変わらない」とおっしゃる方がいらっしゃるかもしれませんが、タバコを5年間止めますとかなりタバコを吸っていない状況に近くなるというデーターもありまして、何歳から止めても有効と言われています。
お酒についてお話します。冒頭の挨拶で支社長さんがおしゃっていましたが、大量にお酒を飲むと血圧を上げて、脳血管障害も多くなりますので、大量飲酒は明らかに悪いとされています。一方、適度にお酒を飲みますと、飲んでいない方と比べて心臓病が起こりにくいというデーターもあります。赤ワインのポリフェノールは良い成分と言われています。
飲む量はどの程度が適量かといいますと、ビールは大瓶1本まで、日本酒は1合まで、ウイスキーはシングル3杯まで、ワインは180cc、焼酎は0.5合までです。毎日の飲酒は勧められず、週に最低でも1日、できたら2日か3日やめるのが望ましいです。
性格傾向についてですが、心筋梗塞や狭心症になりやすい性格気質はタイプA気質です。1度に多くのことをやろうとする、絶えず動いていないと安心できない、苛立ちをすぐ言葉にする、挑戦的な言動をとる、早口でしゃべる、食べるスピードが速いなど。基本的に努力家で、日本人に多いタイプですが、こうのようにきっちりしないと気のすまない性格の方というのは心臓病になりやすいとされています。
ストレスはコレステロールを上げますし、動脈硬化を進行させますし、立腹しますと血管が縮みます。
最後に、ストレスに強い日々の過ごし方ですが、規則正しい生活をする、十分な睡眠をとる、食事は規則正しくし、仕事も無理の無いようにする、ゆとりの時間をつくる、スポーツを心掛ける、生活の支え、人生の目標を持つなどです。
以上、心臓病と不整脈、生活習慣病についてお話させていただきました。これで終わらせていただきます。
Q&A
講演会での質疑応答
Q.心臓病の方が入院した時、食事に納豆がついていないと言うのはは本当でしょうか?
Q.狭心症の患者ですが、心臓が左にあるにもかかわらず右胸が気持ち悪く感じるのはなぜですか?
Q.飲む薬が多すぎるため、朝だけ飲むようにしていますが大丈夫でしょうか?
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