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食塩をとり過ぎてはいませんか
(1−1)
札幌医大病院 栄養係長
成田博子
心臓・血管病の予防
食塩は塩化ナトリウムといい、ナトリウムと塩素の化合物です。この両方を補給するために食塩をとります。問題になるのはナトリウムの方です。ナトリウムは多くの食品に自然に含まれているために、不足することはありません(食塩の生理的な最低必要量は、1日1〜2g程度とされております)。
むしろ、とり過ぎによって高血圧を引き起こし、高血圧が長期にわたると血管に悪影響が出て、動脈硬化が起こります。さらに血液の流れに障害が起き脳血管障害(脳卒中)、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、腎不全などの合併症を起こす危険があります。
食塩の目標摂取量と摂取状況
平成6年厚生省第5次改定日本人の栄養所要量で、ナトリウムの目標摂取量は食塩として1日10g以下とされています。平成6年国民栄養調査の結果によると、食塩の摂取状況は全国平均1人1日当たり12.8g(北海道の平均は12.6g)で、昭和62年まで減少傾向にあった摂取量が逆に増加し、ここ4年は横ばいが続いています。
成人病予防の観点からも、今後とも食塩の目標摂取量である1日10g以下を達成するには塩分の多い料理や食品などの摂取を控えるよう努力する心要があるとしています。
食事療法の基本
・減塩食とする。
・肥満がみられる場合にはまず減量する。
・栄養素の過不足がないようにする。
・高脂血症がある場合には、それに対する食事療法を行う。
・カリウム、カルシウムを積極的にとるようにする。
食事療法の進め方
(1)減塩でナトリウムを制限する。
高血圧予防には食塩を1日10g以下とし、既に高血圧の場合は7g以下を目安にします。漬けもの、塩蔵類、汁もの、加工品などナトリウム含有量の多いものを控え、調味料では食塩、みそ、しょうゆをできるだけ控えたおいしい減塩食をつくることがコツです。日常から減塩の食習慣を身につけるようにします。(2)摂取エネルギーの制限
肥満者には高血圧者が多く、減量により血圧は低下します。肥満で血圧の高い人は減塩より、まず減量を行う方が効果的です。男性で1日1600kcal前後、女性で1400kcal前後とし(パンフレットNo53号参照)月に1〜2kg前後の減量を目標とし、適正体重を維持するようにします。減量には、運動を加えると効果的です(早歩き1日30分以上など)。(3)タンパク質を十分とる。
タンパク質が不足すると高血圧から脳卒中へ進展する割合が高くなります。一方、タンパク質を十分摂取すると食塩による血圧上昇作用が抑制されます。肉・魚・卵などの動物性タンパク質食品と、大豆・大豆製品の植物性タンパク質食品をまんベんなくとるようにします。(4)油は植物油か魚油を
植物油や魚油に多い多価不飽和脂肪酸には、血圧低下作用があります。また動脈硬化予防のためのコレステロ−ルの低下にもこれらの油が有効です。魚油には血栓を予防する働きもあります。いずれの油も新鮮なものを使用する必要があります。(5)カルシウム・カリウムを積極的にとる。
これらはいずれも食塩中のナトリウムによる血圧上昇作用を抑制する働きを持っています。カルシウムの摂取量を増やすには、牛乳,乳製品・豆腐,緑黄野菜を積極的にとるようにします。特に牛乳・乳製品のカルシウムの吸収はよい。カリウムの摂取量を増やすには新鮮な野菜・果物を積極的にとることです。カリウムは水に溶けやすいので、これらを生で食べることをお勧めします。(6)食物繊維をとる。
食物繊維の中でも、とくに果物や海草に含まれる水溶性の食物繊維には、ナトリウムを包み込み、糞中へ排泄する作用があり、血圧上昇作用をある程度抑制します。(7)食事はゆっくり楽しく食べる。
血圧の上昇にストレスは深く関与します。1日3回の食事はストレス解消の場です。おいしく楽しく食ベることは、食事の内容と同じくらい大切なことです。
食事療法の注意点
減塩が不十分だったり、食塩に反応しない高血圧のタイプ、またはこれら以外の要因が高血圧の成因になっている場合は、血圧が低下しないことがあります。減塩でイライラするのではなく、もう一度内容のチェックをしてみることが大切です。
減塩食にすると1〜2週間は何となく気力がない状態が続きますが、慣れてくるとこうした状態はなくなります。
おわりに
食事療法は、日々の積み重ねが大切です。
新鮮な食材の持ち味を生かして、減塩食が減塩食でなく、それぞれの家庭にあった健康食として、おいしく食べられる工夫が必要です。そして、途中で止めずに続けられることが食事面での、高血圧や合併症の予防・コントロールをする上での基本です。
おいしい減塩食を作るには 高血圧食中等度食品構成目安表 食品の中の塩分含有量 食塩摂取量を制限するときの目安量

