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運動
(3−2)
治療法はここ十数年で急激に進歩発展
虚血性心疾患は循環器疾患の中でも「花形」であり、その治療法がここ十数年急激に変化、 進歩した分野である。バイパス手術、血栓溶解療法、冠動脈形成術(いわゆる風船療法)など、 どれも確かに大きな進歩であり、症状軽減など目の前の問題に対しては非常に有効であるが、 膨大な医療費がかかり、国家としても大問題である。
動脈硬化に対する根本策は病気予防
そしてまた、これらは動脈硬化という基礎疾患に対しては、いずれも根本的な対処の仕方ではなく、より根本的な方法は病気の予防にあることは言うまでもない。成人病の予防策がいかに有効であるかは、図1の脳卒中の減少がなによりも雄弁に物語っている。この減少は主に減塩 などの食事の改善、薬物の開発による高血圧の治療の結果であり、発症した脳卒中の治療法の進歩によるものではない。
しかし虚血性心疾患の成因は脳卒中ほど簡単ではなく、種々の生活様式(ライフスタイル)に 関係する因子が関係していることが分かっている。関係している因子を虚血性心疾患の危険因子 (リスク・ファクター)と呼んでいる。
3大危険因子は高脂血症、喫煙、高血圧
まず第1に挙げられるのは高脂血症(高コレステロ−ル血症)である。これは食事中の動物性 脂肪、コレステロ−ルなどのとり過ぎが主な原因であり、日本では戦後の食事の欧米化によりこ れらの摂取が急増したのが原因である。次に喫煙、高血圧が挙げられ、これらを併わせて3大危険因子と呼んでいる。これらの因子が組み合わされ増幅されて冠動脈を障害すると考えられてい る。
これらの危険因子を持つ人の中からより高率に心筋梗塞、狭心症、突然死などが発生すること は、かなり以前より疫学的研究によって良く知られていたが、これらの因子をコントロ−ルしたら本当に心筋梗塞を防げるのだろうか(これを1次予防と呼んでいる)。
コレステロ−ルが高いことは、何かもっと根本的な虚血性心疾患を起こしている原因があるこ とを示す単なる指標である可能性もあるわけである。影を治療の対象にしても仕方がない。
コレステロール低下で心筋梗塞発生率下がる
このような趣旨の研究によって血中のコレステロ−ルを下げることによって実際に心筋梗塞の 発生率が低下することがこの病気の多い米国で証明されたのは、ほんの10年ほど前である (1984年)。禁煙も明らかに効果のあることが分かっている。血中のコントロ−ルに関しても 効果は前二者より弱いようだが明らかになってきている(血圧のコントロ−ルはしかし先に述べたように脳卒中の予防に絶大な効果がある)。
さらにコレステロ−ル低下、禁煙に関しては2次予防(既に週去に心筋梗塞を起こした人で 再発作を予防すること)効果も明らかになっている。
運動負荷機器を前にした札幌市中央
健康づくりセンター長の西島先生。

