![]() |
No50 |
知って減らそう心臓病
ここまで進んだ診断と治療
(3/4)
さてもう一つ、実は前回のフォーラムのアンケートの中で、不整脈の話も知りたかった、あるいは心臓全体の話をもっと聞きたかったという声もありましたので、今日は少し幅広く、不整脈のほうの進歩もご紹介をしたいと思います。不整脈もかなり検査と治療法が変わり、また進歩してきた分野と言えると思います。電気生理学的な検査と、カテーテルアブレーションという、カテーテルを心臓に入れて、そこを電気的に焼いて不整脈を治してしまうという治療法が今殆ど大きな病院、大学病院をはじめとして行われるようになってきています。まずカテーテルを送って、心臓の中に色々な電極を入れます。そして電位というのをはかって、どこに異常があるのか。脈が遅い不整脈の場合、どこまでその刺激を伝えるところがつながっているのか、切れているのか。脈が速い場合には、どこからその速い原因が出ているのか。あるいは薬を試してその機序がわかれば、そこに対してどれだけ薬が効くかということで、有効な薬をチェックすることもできる。こういう診断と治療で、電気生理的という難しい言葉ではありますが、こういったことができるようになってきました。
今非常に大きく進んでいるのが、このカテーテルアブレーションといって不整脈の原因の部分をカテーテルを入れて電気で焼くんですね。大体50度です。お風呂の温度が40度ちょっとですから、50度のお湯というと手を入れると結構熱いんですね。50度の温度で大体50秒位焼くんです。そうすると刺激が伝わってくる部分を壊すことができる。瘢痕組織という組織に変えることができて、不整脈をこれで治すことができるのです。マッピングといって、全部心臓の中で電位をはかっておく。どこからの原因でこの不整脈が起きているのかを決めて、そこを焼いていく。コンピューターを駆使してやっていく。時間も短いものだと2時間位で終わるのですけど、心房細動という長いものだと5、6時間もかかる。その間、先生たちが大体4、5人かかりきりですけど、これうまくいくと不整脈の薬をやめることができるんです。特に脈が速くなるタイプで、WPW症候群というのは本当にもう1 時間半位で終わってしまいます。しかも95%〜97%治ります。
問題なのは心房細動。今年齢が上がってきて、非常に患者さんが増えているのです。これはまだ95%、100%というわけにはいかないのですけど、大体最近で70%位の方がこれを治すことができるようになってきています。これは事前にMDCTで、きれいに画像を出しておく。そして、どこを焼き切るかということを、先程のマッピングという電位をはかる検査であわせて決めていくわけです。そして、その結果ここを焼くと決めたら、カテーテルを入れて、1か所、2か所というふうに焼いていくんです。1回焼くのに50秒位かかりますから、それを繰り返して周りを全部焼き切る。ここから不整脈が伝わらないように、出ないようにしていくわけです。これを別のところも同じく場所を決めておいて、このアブレーションというカテーテルで1か所ずつ焼いていく。ですから、何時間もかかるというのはおわかりいただけるかと思います。これで大体70%位の方が心房細動が出なくなるんです。そうすると薬が要らなくなります。心房細動が出るとすごく苦しいんです、脈が速くなってばらばらになっていますからそういった意味でもこういった治療法は常に進んできていると言えると思います。
もう一つ、不整脈の原因の電位というのが見つかっているんです。この原因の電位がきれいに消えていることによって完全に焼き切れた、異常な電位がなくなったというのがこれでわかるんですね。これも大きいんです。焼いたけど結果がどうだったかというのではなくて、きれいに異常な電位が全部消えている。切れた、うまくいったということもこれで確認をして、そして治療を終わることができる。これも全部循環器内科の医者がやっているのです。
そのほか色々なデバイスがあります。脈が遅い方は、皆さんご存じのペースメーカーですね。それから致死性の不整脈といって心室細動、これも意識がなくなります。そういった場合には電気的な埋め込み型の除細動器というのを入れておいて、心室細動が出たら自動的にドンと自分の中で止めて、死なないようにする。それから、心不全の方には両室ペーシングといって、心房と心室を両方うまく時差をかけてペーシングして、弱っている心臓であってもできるだけ効率的に動いてもらうようにしていく。心不全に対してもこういう治療法が今行われています(表5)。
さらにこういった心不全の方は、心室細動という危ない致死的な不整脈が出やすいのです。そういった方には、この両室ぺーシングという心不全に対するペースメーカーと同時に、ICDという除細動器を一緒にしたものも入れることができる。このように埋め込み型のペースメーカー的なものは大きく進歩しています。
![]() |
|
|
それから、MRIですね。まだこのMRIというのは、CTやエコーのように日常の臨床で皆さんが使えるというところまでは至っておりませんが、何といってもMRIがいいのは造影剤が要らないんですね。放射線の被曝がないのです。だから、今ここが大きく研究として進められています。短所は、金属があると検査ができません。これも皆さんご存じのとおりです。このようにいろいろな形で今MRIが使われてきています。MRIで見ると心臓の動きがきれいに見えて、先程のCTやエコーと同じように今後使っていくとすると、本当に有用で何も負担のない検査ですので、これも期待されているところです。
![]() |
![]() |

