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NO.8 |
心臓核医学検査とは
(3−2)
心臓の特徴
1、心臓のかたちは複雑!心臓は身体の中心線より左側前方にあり、2つの大きな静脈(下大静脈、上大静脈)が右心房に、4つの肺静脈が左心房に、そして2つの心室には2つの大きな動脈(肺動脈と大動脈)がつながっています。
左心室と右心室では形態、動き方、壁の厚さが大きく異なります。さらに心臓の動きを司る神経が精密機械のようにみつに張り巡らされています。このように大変複雑な形は画像診断を難しくしています。
2、心臓を取り巻く環境は複雑!心臓の周りには、胸壁(筋肉、皮下脂肪、肋骨、胸骨)、肺(空気の層と呼吸運動)、脊柱(骨)、横隔膜、肝臓や胃の一部など、極めてさまざまな臓器があり、画像化の妨げになります。
3、心臓は複雑に動いている!強い力で血液を送り出しながら24時間常に空間的物理的に動いているのは心臓だけです。また、心房と心室は逆時相で動き、左右の心室では異なる動き方をします。動いている臓器を画像化することは非常に困難でした。もちろん、その動き(収縮と拡張)も病気によって違うため、正確に評価しなくてはなりません。
4、心臓の6変化!このような心臓はさらに病的状態で以下の様な変化をするため画像診断は極めて重要となります。
心臓の大きさは変化する………拡大や狭小化
心臓の壁は変化する………肥大や菲(ひ)薄化
心臓の血管は変化する………冠動脈硬化(狭心症、心筋梗塞など)
心臓の弁は変化する………逆流や狭窄(弁膜症など)
心臓の動きは変化する………心機能の低下(心不全など)
心臓の電気・リズムは変化する………不整脈
心臓核医学検査(シンチグラフィ)の特徴
心臓核医学検査には以下のように、X線CT、超音波(エコー)法、MRI、カテーテル法にない優れた特徴があります。
(1)ごく微量のラジオアイソトープ(数ml)を静注するだけの、極めて肉体的負担の少ない検査です。従って、乳児から高齢者まで、また外来患者から重症患者まで適応できます。
(2)形態(解剖学的)診断のみならず、心機能、血流、代謝、交感神経、障害心筋などの機能診断ができます。
(3)運動負荷検査や反復撮影で、ダイナミックな心臓の働きを評価できます。一時的な評価のみならず追跡することでその変化を観察できます。
(4)死角なく評価できます。前述のごとく様々に変化する心臓から出るγ線をとらえて画像化しますので、死角はありません。特に、ここ10年で広く普及した断層装置(スペクト=SPECT=Single−PhotonEmmision Computed Tomography)を用いることで心臓を局所的に詳細に評価できます。
(5)高い安全性。ラジオアイソトープ(放射性同位元素)を用いますので、その放射能の影響(被爆)は避けられませんが、診断にもちいる核種はおもにγ線を放出し、エネルギーが低く、半減期(半分に減る時間)も短いため問題になることはほとんどありません。また核医学検査が原因で不妊、胎児への悪影響(奇形、流産)、癌(がん)の発生をみることはありません。また、アレルギー他の副作用はほとんどありません。
ただし、安全性をさらに高め(施設の整備)、最新のカメラ・コンピュータを駆使し、特殊な装置で造られるラジオアイソトープ(放置すると数時間から数日以内に自然消滅していく)を用いるため高額になるのが欠点です。

