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NO.7 |
薬を正しく飲んでいますか?
(3−3)
アルコール飲料と薬
アルコールと薬との相互関係において最も大切な点は肝臓のアルコール代謝と薬物代謝が競合することです。
アルコールは通常肝臓のADH(アルコール脱水酵素)−ALDH(アルデヒド脱水酵素)によって代謝され体内から消失していきます(図3)。
ところが、大量に飲酒したときには肝臓中のMEOS(ミクロソーム・エタノール酸化酵素)系によって代謝が行われます。このMEOS系こそが実は薬物の主な代謝経路なのです。
大量飲酒者・常飲酒者ではMEOS系の酵素活性は大きく亢進していると考えられます。このような場合、飲酒していない時には薬物の生体内分解能が増大しているために期待した薬理効果が得られず、飲酒時には薬物代謝とアルコール代謝が競合するためアルコールも薬物も作用が増強されるという結果がもたらされます。
このため、常時大量のアルコールを飲む人は薬の安定した効果が得られないことになります。大量飲酒者は自分の飲酒量を低めに申告する傾向があり、医師の禁酒指導に従いにくい人達が多いので問題は一層複雑になります。
アルコールと薬物の相乗作用の典型的な例は様々な精神安定剤です。
内科医が最もよく処方するベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠導入剤だけではなく、抗うつ剤、古くから使用されているバルビツレート類、さまざまな麻酔薬、フェノチアジン系、ブチロフェノン系の向精神病薬においても同じです。
飲酒していないときにはこれらの薬は効きにくく、飲酒しているときは作用が増強されます。
大量飲酒者が手術時に麻酔が効きにくいのは前者であり、アルコールと精神安定剤を一緒に飲むともうろう状態となったり、異常興奮が出たり、ブラックアウト(薬物・アルコール摂取時以降の記憶欠如)などが発生するのは後者の例です。
薬を正しく服用するために
多くの薬は対症療法として使用されます。薬物療法を施すことによって症状は緩解したとしても「イコール病気が治った」ということではありません。調子がよいからといって勝手に薬の量を減らしたり止めたりすることは決して良策とはいえません。
その意味で、飲み忘れに気づいたときは余分に飲むのではなく、気づいた時点から飲み始めることも肝要です。そして、「薬を飲んだら具合が悪くなった。どうしたらいいだろう」。こんな時は遠慮することはありません。すぐにかかりつけの病院か処方薬をだした薬局に相談してください。
長期にわたって服用することが多い高血圧の薬や心臓の薬、糖尿病薬を上手に服用して薬を自分の味方に付けてしまうことが最善の治療といえます。

