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NO.6 |
ペースメーカー
(4−4)
生活上の注意点
(1)車のエンジンをのぞかない (2)携帯電話は22cm以上離して (3)電磁調理器は絶対にダメ (4)高圧送電線に近づかない (5)低・高周波治療器は使わない |
電気・磁気に関する注意事項ぺースメーカは精密なコンピュータを内蔵した電子機器ですので、他の電気、磁気に影響を受けることがあり、これをぺースメーカの電磁障害といいます。
これを除けばぺースメーカの植え込みを受けたことによる日常生活上の特別な制限はありません。背景に心臓病や他の疾病があるかどうかにもよりますが、特別な病気がない場合、趣味としてのスポーツや重労働以外の就労は可能です。
食生活、飲酒、入浴も普通にして差し支えありません。車の運転、旅行にも特別な制限はありません。ただし、自動車のエンジン本体は高電圧のスパークを発生していますので、ボンネットをあけてエンジンをのぞき込むようなことは避けて下さい。
また、飛行機に搭乗する場合、金属探知器にぺースメーカが反応することがありますので(ぺースメーカには特別な影響はありませんが)、この場合は係員にぺースメーカ手帳を提示して下さい。
また何か他に病気がある場合、日常生活はその病気により制限をうけることがありますので、主治医の指示に従って下さい。
上述の通りぺースメーカは体に電気が流れたり強い磁気にさらされると作動不全を起こします。この電磁障害を予防するため表に示すような注意が必要となります。
一般家庭で使用される、漏電していない電気器具は通常の使用をする眼り、安全です。しかし、内部にモーターや磁石を内蔵している電気器具も多いため、ぺースメーカ植え込み部に電気器具を近づけるようなことはしないで下さい。
肩こり用磁気治療器も一種の磁石ですので、使用するときはぺースメーカ本体の上に貼ったり、近づけたりしないで下さい。
店舗などの盗難防止器がぺースメーカに異常を与え、体に異常を感じる場合がありますが、その装置から離れればぺースメーカの作動はもとに戻ります。
ハンディタイプの携帯電話はぺースメーカ植え込み側と反対の耳に当て、十分に距離をとって(ぺースメーカ植え込み部と22cm以上離して)使用して下さい。
肩掛型携帯電話と自動車電話は出力が大きいため、アンテナから30cm以上離れて下さい。
一方、漏電している電気器具、体に電気を流すことを目的とした機器(電気風呂、肩こり治療器などの低周波治療器、高周波治療器、医療用電気治療器)および強い電波・磁気を発生する機械(全自動マージャン卓、電磁調理器、磁気マット、溶接器、大きなモーターを内蔵するもの、高出力トランシーバーなど)は絶対に使用しないで下さい。
また高電圧の工業機械、大型モーター、100ワット以上の送信塔やアンテナ、高電圧変電所、高圧送電線などには近づかないで下さい。もし近づいてしまった場合には自分の脈に異常がないか注意して下さい。
脈の異常や体の異常(めまい、ふらつき、動悸など)を感じたら、その場を離れて下さい。
異常が回復しない場合は直ちに主治医に連絡して診察を受ける必要があります。
また医療機関で使用される機器・装置でぺースメーカに影響を与えるものとして磁気共鳴診断装置(MRI)、電気メス、除細動器、ジアテルミー治療器、通電鍼(はり)治療、コバルト照射、γ線照射装置などがあります。
調整により使用できることもありますが、医療機関で診療を受ける際には、これらの機器・装置を不用意に使用されないように、必ずぺースメーカを植え込んでいることを医療機関に伝えて下さい。
おわりに
ここ10数年のぺースメーカの進歩には目をみはるものがあります。大きさは半分以下に、電池の寿命は倍以上になりました。さらに実際の心臓の電気現象を模倣して、より自然に近いかたちで作動するような工夫もなされてきています。ぺースメーカを植え込まれた患者さんがより質の高い生活を送れるよう、この進歩が今後も休むことなく続くことを願いつつ、ぺースメーカの解説を終えます。

