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NO.6 |
ペースメーカー
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ペースメーカが必要となるのは?
前述の心拍数低下による症状がある洞不全症候群や房室ブロックの患者さんでは、健康な生活を送る上でぺースメーカが必要となります。しかし、無症状の場合でも完全房室ブロックや、2度の房室ブロックでヒス束以下の障害が原因の患者さんでは、ある日突然、失神などの症状が出現する可能性が高いため、ペースメーカの植え込みが行われます。
ペースメーカとは?
このような患者さんを治療する目的で考えられた医療器具が体内式ぺースメーカです。ぺースメーカは本体とリードからできています。本体は手のひらにのる程度の小さなもので上胸部の皮下に植え込まれ、電池の役目をします。リードは50cm程度の長さで、本体と心臓を結ぶ電線の役目をします。多くの場合、リードは鎖骨の裏の血管(鎖骨下静脈)を通して先端は心臓に固定され、手前側は本体に接続されます。(図3)。
植え込み手術は1〜2時間程度で、局所麻酔で行われています。こうして植え込まれたぺースメーカはリードを通して、患者さんの心拍数を絶えず監視しています。もし心拍数が設定された数値(「設定レート」ど呼ばれます)以下に減少した場合、ぺースメーカは数ミリアンぺアーの微弱な電流をリードを通じて心臓に流し、心臓を収縮させます。これにより心拍数は設定レート以上に保たれ、全身の血流不足による症状が予防され、健康な生活を送ることが可能となります。
ただし、1回ぺースメーカを植え込めば、それでよいかといいますと、そうではありません。ぺースメーカ本体の電池は徐々に消耗するため、定期的に手術をして交換する必要があります。電池寿命は機種や作動状況によりかなり変化しますが、おおよそ5年から10年の間です。リードも電線ですのでしだいに劣化します。
この場合はリードを新たに追加することが必要となります。植え込み後は電池の消耗や、リードの状態を観察するため、3〜6カ月に1回程度、植え込みを受けた病院の外来を受診し、ぺースメーカチェックを受ける必要があります。
ペースメーカの種類
現在用いられているぺースメーカの代表的なものはVVI、DDD、及びこれらに心拍応答機能のついた機種です(図3)。
VVIと呼ばれるタイプのぺースメーカは心室だけを電気刺激するもので、長所はリードが1本ですみ、小型軽量で、心房細動などの心房で起きる不整脈を合併している患者さんでも使用できる点です。短所は心房−心室の順に心臓を刺激できませんので、血液を送り出す効率が多少低下する点です。
一方、DDDは心房と心室にリードを挿入し、心房−心室の順番に心臓を刺激することができます。従って血液の拍出はVVIに比べ、効率がよくなります。しかし、リードが2本必要となること、VVIに比べ若干サイズが大きいこと、心房の頻脈性不整脈を合併する患者さんには使用し難いこと、電池寿命がVVIより短くなる可能性があることなどの不利な点もあります。
また、心拍応答機能がついたぺースメーカは患者さんの体動などをぺースメーカ本体に内蔵されたセンサーで感知して、運動時に自動的に設定レートを増加させるものです。
この機能がない場合、VVIにしてもDDDにしても洞結節機能が極端に低下した患者さんでは、運動しても心拍数は設定レート(通常は毎分60〜70回)のままとなり、「運動すれば心拍数が増加する」という生理的な反応は得られません。
日常生活をする上では、心拍応答機能がなくても全く問題は起きませんが、より活発な生活を望む患者さんで、洞結節機能が極端に低下している場合にはVVIないしDDDに心拍応答機能のついた機種が用いられます。サイズ、リードの本数は単純なVVI、DDDと変わりませんが、心臓を刺激する回数が自動的に増えるのですから、必然的に電池寿命は短くなります。
このようにぺースメーカによって、いろいろな特徴がありますので、主治医は年齢、性別、植え込み後の生活状況などを患者さんとよく相談して機種を決定します。
また、現在のぺースメーカは植え込んだ後でも、プログラマーと呼ばれる機械でぺースメーカと交信することによりどのくらいぺースメーカが作動したか、電池がどのくらい消耗しているかなどを知ることができますし、設定レート、心拍応答機能のオン・オフなどを変更することも可能です。
植え込み後の外来通院の際に、主治医は患者さんの症状やぺースメーカの作動状況を観察し、より良いぺースメーカの設定を見つける努力をします。

