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動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版 前編
― 動脈硬化を予防するための脂質異常症の新たな診断と治療方針 ―
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札幌医科大学医学部循環器・腎臓・代謝内分泌内科学
矢野俊之氏
2 冠動脈疾患予防のための脂質管理目標
治療目標は全ての脂質異常症を持つ人で同じではありません。まずは、冠動脈疾患、つまり狭心症や心筋梗塞があるか否かで治療目標が大きく異なります。冠動脈疾患がない人は一次予防としての治療を行い、ある人はさらなる進行・再発を予防するための治療(二次予防)を行います。
一次予防:まず冠動脈疾患のなりやすさ(発症率が高い・低い)を判定します。なりやすさは、臨床情報、検査結果及び併存疾患が反映された過去のデータをもとに三段階に分かれており(図2)、10年以内の発症率が9%以上を高リスク、2%未満を低リスク、その間を中リスクとします。その上で、それぞれの脂質管理目標値の達成を目指します。
高リスクの人はより厳しい目標値が設定されています。糖尿病、慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患がある人は、それだけで高リスクになります。その他、図2のフローチャートに基づいて目標が設定されます。
一次予防では、まずは生活習慣の改善を行います。その上で必要であれば薬物治療を開始します。その際に、まずはLDLコレステロールを目標値まで低下させることを優先させます(図3)。
二次予防:既に冠動脈疾患になっている人が対象ですので、積極的に治療を行います。生活習慣の改善とともに薬物治療を早期から開始します。LDLコレステロール値100mg/dl未満、non-HDLコレステロール130mg/dl未満が目標です(図3)。
家族性高コレステロール血症、急性冠症候群(最近おきた狭心症や心筋梗塞)及び糖尿病に他の高リスク病態(慢性腎臓病、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、メタボリックシンドローム、喫煙、等)を合併している人ではさらに治療を強化することが勧められています(LDLコレステロール値70mg/dl未満、non-HDLコレステロール100mg/dl未満)。
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