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心臓病の機器診断ことはじめ
(3−2)


手の骨はくっきりと写り、周囲の軟部組織は淡く写る 
 X線の発見

 X線は、1895年(明治28年)、ドイツの物理学者レントゲンによって発見されました。11月8日のことでした。真空での陰極線の性質を研究中に、陰極線から蛍光作用のある未知の放射線が放出されることを発見し、これをX線と命名したのです。

 翌年の科学誌ネーチャーで「手にX線をあてると、手の骨はくっきり写り、周囲の軟部組織は淡く写る」と述べています。発見の第一報を12月28日発行の学会誌に報告、翌1896年1月23日にはビュルッツブルグ大学で公開講演を行います。この講演では、居合わせた長老ケリカー教授の手が撮影・供覧されました。X線発見の報は、1月5日のウイーンの新聞のスクープの後たちまちに全世界に伝えられます。

図3 レントゲン
メディカルトリビューン(2000)より

 日本でも、早くも明治29年2月29日発行の東京医事新誌935号には、「不透明体を通過する新光線の発見」と題した記事がみられますし、同年4月にはもう、アメリカ医師会で心臓の大きさ、形、動き等が臨床応用として報告されたといいます。さらに、この年1年間でX線に関する学術論文が1000編余にのぼったとされるなど、X線の発見がいかに衝撃的であり、反響が大であったかが窺われます。「X線の発見」によってレントゲンは、1901年、創設されたばかりのノーベル物理学賞の第1回受賞者となります。図3は1998年アンチグア・バーブダ発行の切手で、レントゲンと共にケリカー教授のX線写真が示されています。

 X線の発見によって医師は、史上初めて体内を覗く手段を手にしたわけで、その診断的価値は計りきれないと予測されますが、事実、その後登場する造影剤、カテーテル法、コンピューター理論などとの連動で、循環器疾患の形態診断の上にも機能診断の上にも新たな側面を拓き続けることになります。


人体の心臓の発電現象を体の表面から記録
 アイントーヴェンの心電計と心電図

図4 アイントーヴェン
HEART(1997)より

 心臓は筋肉でできたポンプであり生涯を通じて拍動を続けます。古くから、筋肉の興奮が発電現象を伴うことは知られていましたが、心臓も例外ではありません。

 人体の心臓の発電現象を、拍動に伴う電流の変化として体の表面から初めて記録したのは英国のワーラーで、1887年、毛細管電流計を用いての成果でした。

 この毛細管電流計による記録はしかし、機械的制約のため歪(ゆが)みの大きいものであり、理論的な曲線を得るためには複雑な数学的処理を加える必要がありました。

 この報告に接したオランダのアイントーヴェンは、より歪みの少ない記録を求めて研究を重ね、1903年(明治36年)、弦線電流計を考案しました。これは、磁界の中に細い水晶の導線を張り、この導線の振れを拡大して写真撮影するというもので、微細な心臓の電気的変動にも追随し、複雑な数学的処理なしに記録可能な装置でした。

 この装置の原型は、重さ350キログラムの巨大なもので2つの部屋を占拠し、その操作には5人の人手を要したといいます。この後、これに倣った心電計が商品化され、日本にも1911年に輸入・設置されます。

 因みに北海道では、1924年の時点で、「北海道大学医学部にアイントーヴェン式心電計が備えられていた」といいます。

 彼の発明からごく短時日のうちに、遠いヨーロッパから日本へ、そして北海道へもたらされたわけで、心電図がその後の循環器病学の発展にはたした寄与の大きさを考える時、先人の先見性に敬意を表せざるを得ません。

 アイントーヴェンは、彼の装置で記録された曲線にelectrocardiogramの、また曲線の各部分にQ、R、S、Tの名称を与えましたが、これは現在になお継承されています。

 図4は1993年オランダ発行の切手であり、アイントーヴェンの背景に彼の記録・命名になる心電図波形が描かれています。「心電図記録法の発見」によってアイントーヴェンは、1924年、ノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

 
  
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