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No43 |
メタボリックシンドロームはなぜ恐ろしいのか?
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メタボリックシンドロームはどうして怖いのか? お腹周りが85p以上の男性は、40歳以上では半数を超します。女性は90p以上でも20%います。このような状態では病院に行っても飲む薬はありません。普通病気として扱われません。血圧は正常高値血圧といって130〜140の間、85〜90の間、これは本当は高血圧ではないのですが、メタボリックシンドロームの基準に入っています。血糖は110〜125、空腹時で126以上から糖尿病です。この間は境界型糖尿病といってこれも病気ではないのです。中性脂肪は150以上で高中性脂肪血症ですけれど、少し高いからといって普通薬は出しません。善玉コレステロールは40未満ですけど、低いからといって、これに対してだけ有効な薬はありません。結局、少し太っていて、病院に行っても薬はいらない、ちょっと気をつけましょうという程度の異常でも、これが複数重なってくると心臓血管系の病気になりやすい、あるいは糖尿病になりやすい要因になるのが怖いところです。健診だけ受けていると、病気ではないけれどもちょっと気をつけましょう、といわれる程度の数値なのですが、このちょっとが重なるとすごく危ないというのが、メタボリックシンドロームなのです。個々で見ると何ともないが、それが重なったら大きな病気をひとつ持っているのと同じくらい危ない。そういった意味では、よほど気をつけていないとついつい見逃してしまいます。
30年間続けてきた私たちの端野・壮瞥町研究によりますと、メタボリックシンドロームのない方に比べて、ある方は2倍心臓病になりやすいことが明らかです。薬を何も飲んでいない、自分は健康だと思っている方が、6年間みていくと2倍心臓病になるんです。同じ端野・壮瞥町の研究でみますと、メタボリックシンドロームがある方はない方に比べて2〜4倍糖尿病になりやすい。糖尿病にも心臓血管系の病気にもなりやすいのです。そういった意味でメタボリックシンドロームは非常に怖いんですね。逆にいうと心臓血管系の病気や糖尿病になりたくない方は、メタボリックシンドロームにならないようにすればいいんだ、ということにもなるわけです。
メタボの診断と保健指導/来年度から健保に義務付け
ここでまた厚生労働省による日本の政策に戻ってみます。同省では来年4月からの標準的な健診、保健指導のあり方に関して、まず3つの方針を立てました。ひとつは「健康日本21」の健診を進めていくにあたってメタボリックシンドロームに対しての適切な診断の基準と保健指導の基準を作る。これはもうできました。ふたつ目はこの健診と診断を健康保険(国保か社保)によって義務化する。これは18年度、19年度が試行で20年から実施になります。三つ目は来年2008年から7年間、2015年までに糖尿病などの生活習慣病あるいは予備軍を25%減らす。これが厚生労働省の三つの政策です。その準備をいろいろとしてきました。昨年7月に1年がかりで作った学習用の教材と基準というのがあります。これは厚生労働省のホームページで全部見ることができますので、機会がありましたら開いてみてください。もし手に入らない場合には私のほうに手紙でも電話でもいただければお送りできると思います。
健診のやりっ放しはもうありません
何が変わるのか。今までは基本診査といって、老人保健法によって40歳以上の方を市町村が健診をしていましたが、今度は医療保険者、すなわち国保か社保でやることになります。ステップ1として腹部肥満があるかないか、ない方は肥満があるかないか。第2ステップで血糖、脂肪、血圧、タバコ、コレステロールなどを測り、それらがどのくらい重なってるかをみる。腹部肥満がある人はリスクが2つ以上あれば症候群、1つであれば予備軍とするわけです。最終案が検討中ですので、もう少しでまとまると思います。多分、プレスリリースされますので、新聞でご覧いただけるでしょう。ここでメタボリックシンドロームと判定されると、積極的支援として半年にわたって個別指導を受けます。1人30分以上の個別指導か7、8人のグループ指導になります。半年後にもう一度チェックします。ですから、今までのように健診のやりっ放しではありません。必ず指導を受けてもらうことで、「遠ざかる健康日本」のような失敗が無くなるのではないか、というのが厚生労働省の考え方です。厚生労働省がずるいのは、今まで国と地方自治体がやっていたことを社会保険と国保にまる投げしたことです。お金は払わないけれど保険団体でやれということですが、これはしょうがないと思います。軽い人は動機付け支援といいまして、結果が出た時に1回だけ30分〜1時間の個別指導をして、頑張ってくださいとお帰りいただき、翌年また健診を受けてもらいます。これにも該当しない方には、情報提供として今までと同じように結果をお返しします。今、困っているのは、男性40歳以上の半数、女性40歳以上では20%の該当者がいることになりますので、こんなにたくさんの人を指導できるのかということです。少し対象を絞り込んでも1,200〜1,300万人程度になるだろうと推測されております。
身体活動で消費するカロリーを簡単に計算してみましょう。日常生活、例えば洗濯をしても、炊事をしても、歩いても、何をしても、時間を測って何カロリー使っているかを出します。普段の生活の他に、運動をプラスαでやった場合には別に記入して、1日何カロリー使っているかを簡単に分かるようにしてあります。誤解が多いと思うのはゴルフです。1時間で200カロリー使います。5時間かかると1,000カロリーです。だけどゴルフをやって痩せた人はあまりいませんよね。ゴルフをやって1,000カロリーも使っているのに、その後で大ジョッキを3つ飲んだら元の木阿弥です。これにお弁当を食べたら、もう太ります。大事なことは、こんなにいい運動をしているのにそれを悪くするのは本人だということです。運動としてはゴルフは非常にいいです。5時間で1,000カロリー。1,000カロリーといったらすごいです。こういう誤解をないようにしましょう。
無理なく内臓脂肪を減らすための手助けです。まず、あなたの腹囲は何pですか。男性の方で90pとします。目標とする腹囲は何pですか。当然、85pになります。そうすると差し引き5p縮めることになります。これを1ヶ月1pのペースで縮めるとすると5ヶ月かかります。2p縮めるのなら2ヶ月です。どのくらいのカロリーを使えばいいのか。1p縮めるのに7,000カロリーといわれています。ですから、5p縮めるのなら35,000カロリーです。1ヶ月だと7,000カロリーです。それを30で割ると230カロリー。1日230カロリー減らせば5ヶ月たてば5p腹囲が減ります。それじゃ230カロリーをどう減らすのか。当然、食事と運動に別けていいのです。食事で100カロリー、運動で130カロリーでいいし、あるいは、きょう食事を230カロリー減らしたら運動をしなくてもいいし、運動で230カロリー減らしたら食事は普通に摂ってもいいわけです。どうですか皆さん、これだと簡単にお腹をスリムにすることができるのではないかと思います。
ただ、気をつけなければいけないのは、これは健診ですから、血糖が高かったらすぐに病院に相談する、血圧が高い方も病院に相談する、中性脂肪が高い方、150ちょっとではなくて300を超えている方はすぐに病院に行くことが肝要です。そうでない方は先程紹介しました保健指導を受けましょう、ということになっています。指導する方も大変です。食事に運動、糖尿病療養指導士さんや管理栄養士さん、運動指導をする方、いっぱい人がいないとできません。どこででもできるというものではありません。厚生労働省はこれについてはアウトソーシングといって、いろいろな所に頼んで受け皿を作ってもらってやってもいいということを進めています。半年くらい前に読売新聞に大きく載っていましたが、もう既に保険会社などが新しい医療産業としてこの特定健診、特定保健指導のアウトソーシング先として会社を立ち上げ、人も集めているといわれております。
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