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講演  No43

メタボリックシンドロームはなぜ恐ろしいのか?
(5/5)



減量は食事と運動を両輪に

 さて、痩せるためにどうするか。食事だけで痩せるのはあまりお勧めできません。もちろん食事を減らせば、カロリーが減り体重は落ちます。体重は落ちますが、筋肉も落ちてしまいます。お腹の脂肪は落ちにくいんです。お腹の脂肪をとるためには、どうしても運動も併せてする必要があります。運動と食事が両輪です。食事だけでなく、運動も、ちょっとでもいいですから、加えることを念頭に置いてください。食事のポイントは腹八分目ではなくて七分目です。食品の種類を多くすること。お米はいいですが、脂肪は特に控え目に。朝昼晩を規則的に。朝食抜きで痩せている方はあまりいません。それは前の晩に食べているという証拠です。夜遅く食べたものは何に使いますか。寝ている時には何も使いません。そういう状況で食べて飲んだものは全部脂肪になります。朝、昼食べたものは全て使いますから、夜食べ過ぎないように。これがこつです。それからもう一つ重要なのは日本食です。今、世界で一番健全で体にいい食事は日本食だといわれています。お米とお魚と野菜です。唯一、日本食で難があるのは食塩です。食塩の摂取量が、日本食の場合はどうしても多くなりやすいといわれています。食塩にだけ気をつければ、日本食は世界で一番健康的な食事です。

 30年間続けてきた私たちの端野・壮瞥町研究によりますと、メタボリックシンドロームのない方に比べて、ある方は2倍心臓病になりやすいことが明らかです。薬を何も飲んでいない、自分は健康だと思っている方が、6年間みていくと2倍心臓病になるんです。同じ端野・壮瞥町の研究でみますと、メタボリックシンドロームがある方はない方に比べて2〜4倍糖尿病になりやすい。糖尿病にも心臓血管系の病気にもなりやすいのです。そういった意味でメタボリックシンドロームは非常に怖いんですね。逆にいうと心臓血管系の病気や糖尿病になりたくない方は、メタボリックシンドロームにならないようにすればいいんだ、ということにもなるわけです。

女性の腹囲80センチ以上は黄信号、90センチ以上は完全赤信号

 女性の方は別腹というのがありますね。摂取カロリーを訊ねても、女性は甘いものは除いて報告してきます。男性もお酒を除いての報告になります。どちらもちゃんと計算に入れないといけないんです。それから大事なことはやっぱり運動ですね。歩く、あるいは軽く汗をかくくらいの早足で走る。ジョギングです、ランニングでなくていいんです。地下鉄の駅を一つ歩く。これだけでいいんです。脈拍があまり増えすぎないように、ちょっと汗をかく程度の運動を1日30分、週に3回やるとかなり効果があるといわれています。原則は週に90分ですが、30分でもいのです。これまで10分、20分走った時は20分経たないと効果が出ないといわれていましたが、これは違うということが分かってきました。5分でも10分でも6分でも7分でも、やれるだけでいいんです。やらないよりはやったほうがいい。かつては20分以上歩かないと効果がないといわれたので、10分しか時間がない人はやらなかったのです。間違いでした。10分でも効果は充分にでるということが証明されています。

 これは厚生労働省らしい言葉ですね。「医療制度構造改革のポイント」−生活習慣病対策が1丁目1番地。糖尿病などの生活習慣病予備軍を来年から7年間で25%減らす。減らすために健診と保健指導にメタボリックシンドロームの概念を取り入れ、医療保険者に健診と保健指導を義務化する。これが決まったばかりの厚生労働省の新しい政策で、来年4月から始まります。

 動脈硬化性の病気、生活習慣病にはたくさんの危険因子がありますが、年齢と性別と家族歴は自分で選ぶことができませんので、これは忘れてください。肥満、糖尿、高血圧、タバコ、ストレス、高脂血症は全部皆さん個々人が気をつければ治すことができるものです。特にタバコは絶対にいけないと私は思います。どうしてタバコを売っているのか私はわかりません。肥満は特にお腹の肥満が悪いのです。そしてこれがあると高血圧、高脂血症、糖尿病になりやすく、その結果、心筋梗塞や狭心症や脳卒中になりやすいのです。だからこれをメタボリックシンドロームという言葉で呼んで、来年の4月から健康保険でこれを健診し、ひっかかった人は指導をしていくことになったのです。薬を飲むのではなく、食事と運動の指導です。

 このようなことが決まっていますが、1年待つ必要はないのです。できれば、きょうから取り組んでいただいて、来年の義務化された健診で引っかからないようにしていただくことが、皆さんにとって一番の健康だと思います。本当に身近なお話だと思います。生活習慣病、特に動脈硬化性の心臓血管系の病気はガンと違って、皆さんが自分で気をつければ守れるのです。軽い病気だったら自分で気をつければ治せるのです。この点がガンと一番違うところだと思います。自分で努力もしないで、薬は嫌だという人は困ります。努力をする人は薬はいらなくなります。このところだけ忘れないで、どうぞきょうから気をつけていただいて、生活習慣病を少なくしましょう。そして、いざとなったらどうぞ北大でも旭川医大でも札幌医大でもおいでください。でもそうならないように、あるいは病気になってる方でも少しでも薬を減らせるように、そういった意味できょうの話が皆さんにとって少しでもお役に立てれば幸いと思います。

<座長・菊池健次郎先生との問答から>

菊地先生「女性は今のところ90pまでいかない、89pで安心しておられる方もいらっしゃると思うのですがそれでよろしいんでしょうか?」

島本先生「よろしくないんですよね。実は女性が男性より甘いのは日本だけなんです。このガイドライン作りに、私も委員として参加していたのですが、委員の皆さんは女性にやさしかったんです。ところがあのガイドラインが出てからCTを撮っていろいろ調べていったら、男性の85pに相当する女性の腹囲は80pです。油断しないでください。90p以上は完全赤信号です。80p以上が黄信号と考えて、やはりまず80pと思っていただきたいのです」

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