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No43 |
メタボリックシンドロームはなぜ恐ろしいのか?
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わずか3年、遠のく「健康日本21」
2006年の2月の朝日新聞に「健康日本、目標遠のく」という記事が掲載されましたが、厚生労働省がメタボリックシンドロームに注目した理由がここにあります。同省は生活習慣を改善するための政策として2000年に「健康日本21」を打ち出しましたが、その後を追跡すると、実態は遠のく「健康日本21」でありました。肥満者の割合は目標値15%以下に対し、2000年の24%が3年後30%に。朝食を食べない中高生の割合6%を0にしようが、3年後は9%に増えました。日常生活で歩きましょう、運動をして生活習慣の改善を図りましょうと、男性9,200歩以上、女性8,300歩以上の目標を掲げましたが、男性は8,200歩から7,500歩に、女性は7,300歩から6,800歩に後退していました。大量に飲酒する割合は4%から5%に増え、ストレスを感じる人も増えました。厚生労働省が大号令をかけた生活習慣改善の取り組み、その3年後の結果がこれだったのです。厚生労働省にとっては大変ショッキングなことでありました。
■メタボリックシンドロームの診断基準上記に加え,以下のうち2項目以上
腹腔内脂肪蓄積 ウエスト周囲径 男性≧85cm
女性≧90cm
(内臓脂肪面積 男女とも≧100cm2に相当)
リポ蛋白異常 高トリグリセリド 血症≧150mg/dL
かつ/または
低HDLコレステロール 血症 <40mg/dL血圧高値 収縮期血圧 ≧130mmHg
かつ/または
拡張期血圧 ≧85mmHg高血糖 空腹時高血糖 ≧110mg/dL これまでのように、基本診査といって老人保健法により40歳以上の方の健診をし、結果をお知らせして頑張りましょうといっているだけでは全然うまくいかないということがはっきりしたのです。このままではいけない、どうすればいいのかと厚労省は標準的な健診、保健指導のあり方に関する検討会を作りました。私も委員として参加、年間7、8回、東京で会議があります。今週の月曜日にも最終版を作るための検討会があったばかりです。号令をかけただけでは皆さんの健康的な生活は実現しないし、むしろ悪くなっていく。今までの取り組みではだめだ。どうすれば皆さんがもっといい生活習慣を身につけられるのか。このようなことを検討しています。
昨年5月8日、厚生労働省の生活習慣病対策室の矢島鉄也先生が2004年国民健康・栄養調査に関する記者会見を行いました。翌9日、メタボリックシンドロームの頻度が高い、気をつけよう、厚生労働省の方針であるということで、道新だけでなく多くの新聞がほとんどトップ記事で紹介をしましたし、テレビでも放映されました。その後、いろいろなメディアでメタボリックシンドロームが取り上げられ、このお陰で長い横文字が皆さんに覚えていただけるようになりました。厚生労働省の威力は本当に大変なものがあると感心しております。この時に発表された成績がこれです。男性のメタボリックシンドロームは年齢が上がるにつれ増えていきます。腹部肥満があって危険因子3つの内2つあるのがメタボリック症候群、危険因子が1つを予備軍としてありますが、40歳以上の男性では26%がメタボリックシンドローム、26%が予備軍です。52%が予備軍かメタボリックシンドロームです。2人に1人ですよ。ものすごく多いんですね。女性の20代は0です。これはちょっとずるいんですよね。腹部肥満の女性の基準は男性より5p多くなっています。不公平ですけれど、これが決まりです。30代からは増加傾向で、40歳以上でみるとメタボリック症候群が10%、予備軍が10%、合わせて20%です。20%でも多いですよね、5人に1人ですから。これだけ多くの方がメタボリックシンドロームを持っているということが、厚生労働省の調査で分かりました。
その後の反響はご承知の通りです。NHKの「きょうの健康」はもとより、週刊誌、経済誌でもメタボリックシンドロームが大きく取り上げられ、いろいろな所で見聞きしていただく機会が増えました。東洋経済という経済雑誌には「できる社員ほどメタボリックくん」という特集が掲載されました。一生懸命仕事をすると遅い夕食、つき合い酒、運動不足などで、ついついお腹が出てしまう、つまりメタボリックくんのほうが仕事をするという意味なのかも分かりませんが、寿命は縮まります。道新の連載まんがの主人公ほのぼのくんもメタボリックシンドロームを知っていました。極めつけは昨年暮れの流行語大賞でした。年間大賞はご存知の「イナバウアー」と「品格」でしたが、実は、トップ10に「メタボリックシンドローム(メタボ)」が入っていたのです。日本内科学会が代表して受賞しました。昨年1年間でメタボリックシンドローム、メタボくん、メタボ、メタ腹等々さまざまな呼び方がでてきましが、言葉そのものは本当に多くの方に理解していただいたようで、病院でお腹周りを測ってほしいという方もかなり増えているのではないかと思います。
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