血圧の測定法は皆さんご存知かもしれませんが、上腕にカフを巻き、空気を送り込んで血管を圧迫し、いったん血流をとめ、その後徐々に圧迫を緩め、血液が流れて音が聞こえ始めると収縮期血圧、音が消えると拡張期血圧です。心臓の高さに腕を置いてカフを巻いて安静座位の状態で測ります。寝て測るのではなく、安静座位です。1〜2分の間隔をおいて複数回測定し、安定した値(測定値の差が5mmHg未満)を示した2回の平均値を血圧値とします。高血圧の診断は、少なくとも、2回以上の異なる機会における外来血圧に基づいて行います。1回だけでは診断しないことになっています。
日本は世界で一番家庭血圧計が普及している国です。家庭血圧と24時間自由行動下血圧は高血圧、白衣高血圧の診断と、薬の効果がどのくらい持続しているかの判断に使えますので、家で血圧を測ることは、非常に医者の助けになります。病院で測る血圧は高いけれど、家で測る血圧は高くないという人はたくさんいます。逆に、病院で測る血圧は高くないけれど、家で測る血圧は高いという人もなかにはいます。家庭血圧は、朝は起きてから1時間以内、排尿後、座位で1〜2分安静をとってから測ります。服薬前、朝食前です。夜は寝る前、座位でやはり安静にして測ります。可能であれば午前2時前後の睡眠時血圧も測りたいところです。睡眠時血圧は自分で測れませんし、誰かに測ってもらうと目が覚めてしまいます。ですから、きちんと睡眠中に測れるように24時間血圧計があります。労働時間帯の血圧もできれば測定しましょう。大事なことは、測った血圧を必ず記録に残しておき、血圧をコントロールしてもらっている人に、あるいは受診時に持参して相談することです。
家庭血圧は、通常、病院や検診時に測る血圧よりも低いものです。上も下も5mmHgくらい低くでますので、これを正常とします。自由行動下血圧は24時間の血圧を測りますから、平均すると上が135、これ以上あると高血圧としなさいということになっています。病院で測る血圧や検診時の血圧が少し高く、家庭血圧のほうが一般に少し低いということをご承知おきください。
白衣高血圧は、白衣を着た人に測ってもらうと血圧が上がることです。未治療者が病院で測る血圧が高く、家で測る血圧は高くないことを白衣高血圧といい、よく経験される事例です。私の経験では、男性より女性のほうが多いようで、他の危険因子等の有無を考えて降圧治療するかどうか決めます。定期的に血圧を観察します。白衣現象というのは病院で測ると血圧が上るという現象です。医者や看護師は白い衣服を着ていますから、白衣という言葉は世界中で通じます。ホワイトコート ハイパーテンションといいます。このように、血圧はいろいろの状況で動揺するものです。精神的な原因でも動揺するし、身体的な活動によっても動揺します。だから1、2回で決めつけないで、何回か測って、普段の状態を把握することが血圧の管理には大切なわけです。
逆白衣高血圧という言葉は非常にわかりにくいですね。外来で測ると正常だが、家庭血圧や24時間自由行動下血圧のほうが高いという状態で、白衣高血圧よりも心血管病のリスクが高いといわれています。体に長時間作用しているのは普段の血圧です。病院で白衣を見た時に少し上がるが、家ではずっと低いのであれば、血管にあまり影響しませんが、逆白衣高血圧は長時間血管に影響するので、リスクが高いと考えられます。
血圧は動揺しますから、測る時の条件、経過などを知るのは非常に大事なことです。薬を飲んだ後も自分の血圧がどの位になっているかを知り、かかりつけの医師を決めてきちんと管理を受けることが必要です。自分で測った血圧は必ず記録しておきましょう。時間帯も書いておくといいし、その時どういう状況であったかもメモしておくと役にたちます。近頃の家庭血圧計は脈拍数も同時に数えてくれますので、脈拍数も記録しておくことが大事と思います。
年齢別の年次推移で50年間の大まかな経過をみると、日本人男性の血圧は緩やかに下がってきてはいますが、140/90にラインを引くと60歳以上の男性の平均はそれ以上という状況です。全般的にコントロールが良くなっています。脳卒中による死亡は非常に減っています。歳をとるといろいろな状況が起こるのがよくわかります。個人差が大きく、平均値からずれている人が多い。非常に高い人もいれば、年齢とともに上がらない人もいます。先ほどの100歳老人は、恐らく、そういう経過をとっていると思います。女性は閉経期までは男性よりだいぶ低いのですが、閉経期後は男性よりもむしろ増えるスピードが上がり、歳をとると男性とあまり変わらなくなります。80歳になると女性の血圧が高いというデータが多いです。閉経前と後で心臓血管病の発症という点でも違いがでてきます。脳卒中や心臓病の危険性は閉経までは非常に少なく、閉経期後はそれが増えてきます。