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No.31 |
講 演「自分で守れる心臓・血管病」
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肥満は生活習慣病の根源/体質もありますが、相応の対策必要
さて、次は肥満です。肥満を最後にもって参りましたのは、実は肥満があると脂肪が高くなるし、コレステロールも高くなりますし、糖尿病にもなりやすいし、勿論、血圧も高くなり、結局全部の病気に関係してくるからです。更に消化器系になりますと脂肪肝、肝臓まで関係してしまいます。結局、全部これら危険因子の根本に肥満があります。肥満があると、太っているというだけではなく、いろいろな病気を起こし、それが動脈硬化、脳、心臓の病気になるということで気をつけなければいけません。
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生活習慣病の要因は肥満です。過去50年を見ても、男女共に肥満が大変増えています。それと共に糖尿病が増えてきています。高血圧は日本では元々多くて、あまり変わっておりません。この50年で現れてきた生活習慣病は、肥満が一番大きな悪い要因になっています。肥満の原因は食べたり、飲んだりということもありますが、これだけではありません。ひとつは運動不足です。つまり車社会になって歩かなくなった。もうひとつはストレスです。ストレスの時に、ストレス多食と言って食欲が強烈に出てきて、もう自分で止められない状態になります。食べた後また直ぐ食べたくなる。多分、何人かの方が経験されていると思います。肥満と食事・運動・ストレス。この三つがまさに現代社会の現象です。
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肥満から、先程来お話してきた、全部の病気が関連して出てくるということで、肥満が今の生活習慣病の根源であり、そのような病気であると考えてよいと思います。さて、肥満には実は2つのタイプがあります。男性型の肥満と女性型の肥満です。男性型の肥満は内臓脂肪型肥満と言いまして、りんご型とも言い、お腹が太っています。女性型の肥満は洋ナシ型と言いまして、お尻に脂肪がついています。あるいは皮下脂肪型とも言いまして、皮下脂肪に脂肪がついています。
勿論、肥満はないのがいいのですが、同じ肥満であれば、絶対に男性型の肥満のほうが危険であることは、はっきり分かっております。肥満自体は決していいことではありません。皮下脂肪型がいいのかと言ったらそうではないのですが、同じ脂肪でもお腹につくと危険性が増すということは分かっておりまして、男性は女性よりも産まれた時から既に不利に出来ています。お腹に脂肪をつける要因に男性ホルモンがあり、女性ホルモンは逆にお腹の脂肪を減らし、皮下脂肪によく分布させるようになっています。
男性は瞬発型で、直ぐにこの脂肪を使えるような構造になっています。これに対し、女性はここにエネルギーを貯めておいて、飢餓やお産を含め、長いストレスに耐えられるような身体になっています。これは何万年もかかってできてきた体質ですから、私たちが変えることはできませんけれども、そう言った意味でも、動脈硬化に対しては、男性は女性に比べて不利にできています。だからこそ気をつけなければいけない、ということです。
饅頭怖い、お酒が怖い/口に入ったものは全部カロリー
減量については、多くの方がトライして駄目だった、繰り返しトライしても駄目だった、という経験をお持ちだと思います。私も太っては痩せ、太っては痩せを3、4回繰り返しております。
減量がどうして難しいのか。食欲に打ち勝つというのは大変です。それはわかるのですけれども、もうひとつは、よく「隣の誰かさんは同じものを食べているのに太らない、私はほとんど食べていないのに体重が減らない」ということを耳にします。昔は、そんなことは絶対にありえない、太るということは使うエネルギーと摂るエネルギーの差だけで決まり、結局、太るのは摂り過ぎなのだ、とだけ言ってきました。すると、そんなことはないと言う患者さんが沢山いまして、外来でも、本当に押し問答を繰り返したこともありますが、最近、実はちょっと違う、やっぱり太りやすい体質、痩せやすい体質があるということが分かってきました。
このベーター3受容体遺伝子とUCPIという2つの遺伝子が分かりまして、この遺伝子を持っている方は、300カロリー、はなから300カロリー少なくていいのです。ですから、この遺伝子を2つ持っている方が、そうでない方と同じものを食べていたら、300カロリー少なくていいのに、おにぎり2個分毎日多く摂っているので、そういう方は必ず太ります。いま分かっているのはせいぜいそこまでです。1日300カロリーの差までは、遺伝子の違いで説明ができるようになりました。*
これはむしろ経済的なことで、1日おにぎり2個分食べなくても、そうでない方と同じというふうに理解すれば体重を維持できるはずです。ですから、結論は体重だけみていれば分かります。体重が増えたらどんな理屈があっても食べ過ぎです。体重が増えないような食事が、その方にとって丁度バランスのとれた食事になります。
治療を頑張ったけれどもなかなか痩せられないという方は、抵抗性の肥満といいますけれど、今はこういう検査が血液を採って送るだけで直ぐ分かるようになってきましたので、主治医の先生とご相談されるといいでしょう。ただし、まだ保険は利いていませんので、少し費用がかかります。そういう方は頭の中に、自分は1日おにぎり2個分食べなくていい、食べなくて当たり前、と思っていると丁度良くなります。
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