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 No.31

講 演「自分で守れる心臓・血管病」
(3/5)



10年後、20年後が怖い高血圧/雄弁に物語る疫学研究

 さて、次は高血圧の話です。血圧とは何なのか。ポンプと同じで、藻岩山の頂上に貯水槽があったら、各家庭にこの高さの差で圧力がかかって、水道に水を送ります。この高さが血圧です。心臓が収縮して血液を押し出しますが、その圧力が強い場合が高血圧、逆にこれが非常に低くて、チョロチョロとしか水が出ない状態、これが低血圧です。
 
 高血圧がどうして怖いのか。蛇口をひねると水が勢いよく、たくさん出てくる。これは家庭の主婦にとってはいいことです。しかし、高い圧力が長く続くと、この水道管にさびがつき、最後は詰まってしまうのと同じで、いま一瞬血圧が高いのは全く問題がありませんが、長く続いて血管に障害がくること、つまり、動脈硬化がくることが高血圧で一番怖いことです。
 
 皆さん、全力で走ってみてください。血圧はほとんど200までいきます。でもその時だけだから大丈夫なのです。それがずうっと続くと血管に障害がでてきます。ですから、瞬間的な問題はあまり気にされなくても結構です。高血圧と言われて怖いのは10年後、20年後であって、今、この瞬間ではありません。

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 そういうことで、高血圧も動脈硬化を起こす非常に危険な要因になります。血圧値につきましてはご承知のように140/90以上が高血圧です。至適血圧という表現があります。その人が最も血圧の影響を受けないで、動脈硬化性の脳卒中、心筋梗塞にならない一番適切と思われる血圧値で、120/80です。多分、多くの方が思っておられる血圧値より大分低いんじゃないでしょうか。これが最も望ましい血圧と言われております。
 
 それから、血圧の基準140/90は、実は病院の血圧です。決して皆さんが家庭で測っている血圧ではありません。

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 これは私も25年にわたってみている「端野・壮瞥研究」という疫学の研究ですけれど、1977年に、血圧が130未満、130から140、140から150、160、160から180、それ以上と分けて、その後をずっと追っております。そうすると、きれいに血圧の高い順に死亡率が大きくなっております。

 結局これを見ても、130未満の方がよいということは、直ぐにお分かりいただけると思いますし、180以上の方はこんなに生存率が低くなっています。その原因も、心臓血管系の病気が多いということがはっきりしております。

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 さて、家で血圧を測る時のことですが、たくさんの方が家庭血圧計を持っていると思いますし、種類は指の血圧計、手首の血圧計、上腕の血圧計と三種ありますが、必ず上腕の血圧計で測ってください。指の血圧、手首の血圧は誤差が大きいということがわかっています。もう買ってしまったのなら仕方がありません、これは指の血圧計で測っていますということを、かかっているお医者さんにお話をし、その血圧計を病院に持参してチェックしてください。その差を理解しながら使っていただくことが大変重要です。

 もうひとつ、さっき申しあげた家庭の血圧は、病院の血圧と違います。大体、10低目にでています。ですから、病院で140/90が高血圧なら、家では130/80と思ってください。大体ですけれども、家の血圧は低目に出ます。病院で140/90が高血圧だから、家で135/85は正常血圧だと思われると、高血圧なのに治療しないということになってしまいます。およそ上も下も10低目に考えれば間違いありません。

 薬を飲んでいても同じです。140/90を超えているから薬を飲んだ、家で計ったら130/80だから薬を止めよう、ということにはなりません。130/80は薬があまり効いていない程度の状態と思ったほうがよいと思います。そのぐらい家では血圧は上も下も低目に出ています。どうか、病院の血圧で基準が決まっているのであって、家庭の血圧は低目なんだということを念頭においていただきたいと思います。

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 次に高脂血症と肥満ですけれども、まず高脂血症にはコレステロールだけでなく、いろいろなタイプがあります。コレステロールが高いタイプ、中性脂肪が高いタイプ、両方が高いタイプ、HDLコレステロールが低いタイプ。ここでHDLコレステロールは善玉コレステロールとも言われ、血管壁からコレステロールを抜き取り、肝臓に運んで代謝します。だからHDLは善玉と呼ばれます。これは高ければ高いほどいいのです。これに対し、LDLというのが悪玉。肝臓からコレステロールを持っていって血管に入れて、先ほど動画で見た黄色い粒子、あれを全身の血管に入れて動脈硬化を起こします。

 基準値ですが、コレステロールは総コレステロールで220以上、悪玉LDLコレステロールで140以上、中性脂肪で150以上、善玉HDLコレステロールでは40未満、これが高コレステロール血症、高脂血症の基準になります。ここで是非気をつけていただきたいのは、実は、運動をすると善玉コレステロールが非常に高くなることです。人によっては100近くまで上がります。そうすると、総コレステロールが220あっても、内訳が善玉100、中性脂肪150だとすれば、中性脂肪の5分の1がコレステロールになっていますから、悪玉は220マイナス100マイナス30で、90です。

 220の総コレステロールでも、運動して善玉コレステロールが100、中性脂肪が150の方は、実は見かけ上は220と高い値でも、悪玉はたったの90になります。ですから、総コレステロールの高い方も、できれば、内訳を見てください。善玉が高い方は場合によってはあまり心配しなくてもいい、薬なんか飲まなくてもいい、という可能性があります。

 ただし、善玉が低くて総コレステロールが高かったら、これはもう当然悪玉が多いことになりますから、薬を飲んで、ちゃんと治療しなければいけません。可能でしたら総コレステロールだけで判断しないで、悪玉と善玉ふたつを、ついでに、診ていただけるとよろしいと思います。

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 善玉が増えるのは運動だと言いました。その他に、良いか悪いか私にはわかりませんが、お酒でも増えます。人によっては、HDLコレステロールを上げるために酒を飲んでいる、と弁解している方もいますけれども、お酒を飲んで増える善玉のHDLは、実は、あんまり善玉の作用が強くないということも言われておりますから、お酒でHDLを上げるのはどうも邪道なようで、太っている方であれば痩せること、運動することが一番オーソドックスなやりかたになります。

 コレステロールが高いとどういう症状がでてくるか。よくでるのが黄色腫といわれるものです。眼瞼黄色腫という黄色いプツンとしたものが、この柔らかい眼瞼の所にでてきます。これは皆さんよくご覧になることがあると思います。これだけでは診断がつかないので、診断を本当につける時には、アキレス腱を診ます。このアキレス腱に黄色腫ができて、触ると腫れております。この場合、写真を1枚撮ると、直ぐ診断がつきます。何ミリということで。アキレス腱が腫れている場合には、まず間違いなく高コレステロール血症で、特に家族性と言っていい。この場合は大変に危険です。

 眼のここに、ここにもありますね、黄色いのがプツンと。これはコレステロールがただ皮下組織に溜まっているだけです。黄色腫と腫瘍の「腫」を使っていますが、腫瘍じゃありません。黄色いコレステロールが、ここに溜まっているだけです。こういう場合にはコレステロールが高い可能性があるので、検査をしたほうがいいと思います。モナリザもここにありまして、この頃、テレビの番組でモナリザもコレステロールが高かったんじゃないかと言われておりますけれども、こういうところに出てまいります。


    
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