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No.31 |
講 演「自分で守れる心臓・血管病」
(2/5)
糖尿病の患者さん、50年で50倍に/原因は生活習慣の変化
いま糖尿病は日本で720万人、予備軍といわれる方が880万人、併せて1,600万人います。25年間で250万人増え、非常に多くなっています。糖尿病は典型的な生活習慣病です。どうしてか、皆さん考えてみてください、50年前、糖尿病っていましたでしょうか。戦後まもなくの頃、勿論いました。ただ、非常に少なかったのは覚えていると思います。
この50年で糖尿病の患者さんが、実に、50倍になっています。1955年を1倍とすると75年で10倍、85年で31倍、2000年で50倍になっております。50年で遺伝子なんて絶対変わりません。
じゃ何が変わって糖尿病が50倍になったのでしょう。これは、さっき申しあげた生活習慣、運動不足、肥満、ストレスの増加などに起因するものです。生活習慣の変化で50倍増えているのです。遺伝子は変わっておりません。そういった意味で、糖尿病も典型的な生活習慣病です。
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もし、糖尿病の方が軽症なうちに50年前と同じような食事、あるいは、車がほとんどありませんでしたから、自ら動くという習慣に戻ったら、患者さんの数は50分の1になります。日本人の遺伝子はそういう遺伝子なのです。だから患者さんは50分の1に減り、50人のうち49人は病気がなくなるのです。 たった50年で50倍。まさに生活習慣が原因です。昔だと贅沢病と言っていたのですが、今は国民全部が飽食の時代ですから贅沢病とは言えないかもしれませんが、しかし、原因はそういうことです。 糖尿病はどうして怖いのか。血糖が上がるだけでは、どうということはないのですが、大事なことは、糖尿病は血管病だということです。血糖が高いだけではなく、生命の予後、QOL・生きがいなどいろいろなことに影響してくるのが血管病です。
高血糖、インシュリンが高い、脂肪が上がる、高血圧になる、肥満になる、尿酸も高くなる、こういった代謝の異常があって糖尿病になります。その結果、細い血管の障害が生まれ、網膜症、腎症、神経症を発症します。太い血管の障害では、動脈硬化で心筋梗塞、脳卒中、足の血管にくると閉塞性動脈硬化症になります。このように、細い血管も太い血管も、全身の血管に障害がでてくるから糖尿病は怖いのです。
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これは糖尿病性網膜症の網膜です。これはまだ良いほうですが、ここに出血があります。これが進むと網膜剥離を起こし、完全に失明します。糖尿病で失明される方が増えています。
同じ細い血管に障害が来ると腎症、腎臓病です。いま透析になる患者さんは、腎炎よりも糖尿病性腎症が一番多いのです。
足の血管がこのように直ぐに壊死を起こしてしまいます。こういうふうに、ここも赤くなっています。こういうところで切る。次にここで切る、次にここで切る。医者としてこんなに辛いことはありません。もちろん、患者さんは非常に辛いと思いますが、ずっと診ている医者も辛いのです。
だから、申しあげたいのは、こうなる前にやっていただければ、どれだけいいか。そこのところをよくご理解いただければ、本当に幸いです。
太い血管のひとつで、これは冠動脈という心臓の血管です。ここで詰まっていますね。そこを風船で開くと、完全にこのように戻ります。ですから、こういう心筋梗塞の初期でも、狭心症でも、ここまできたら直ぐ病院においでください。時間さえ2、3時間以内なら、風船で膨らますとほとんど元に戻すことができます。こういうことが起きやすいのも糖尿病です。
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