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NO.28 |
とかち健康フェア2003
肥満と生活習慣病 -肥満を科学する-
(5/8)
*肥満と肥満症、そして「死の四重奏」
今までお話しましたように、肥満になると脂肪細胞が正常ではなくなっているので、ある程度以上の肥満は、病気として扱うべきである、と私たちは最近考えています。それで、そういう肥満は、"肥満症"と言い改めることとし、日本肥満学会がそのための診断基準を作りました。肥満症の診断は、BMI 25以上をまず肥満と呼び、肥満に関係するいろいろな病気(高血圧や糖尿病や高脂血症など)を持っている方を肥満症と呼んで、肥満自体を病気と扱って治療すべきであると規定しています。また、内臓脂肪型肥満も同様に規定されています。BMIが25以上でウエストが男性85cm、女性は90cm以上の方は内臓脂肪が溜まっていると考えられます。そういう方は積極的にCT検査をして内臓脂肪の面積を測り、もし内臓脂肪の面積が100cm2を超えている場合は内臓脂肪型肥満と判断して、積極的に肥満の治療をしようという流れになってきています。
ちょっと怖い名前ですが「死の四重奏」というものがあります。これは最近言われていることで、この四重奏の四は肥満、耐糖能異常(糖尿病に近い方)、高脂血症、高血圧の4つをあらわします。この4つを同時に持っている方は、将来的に非常に死亡率が高くなるということで「死の四重奏」と呼んでいるわけです。 同じような状態を「シンドロームX」と呼ぶ外国の先生方もいます。
高血圧、高血糖、高コレステロールなどは、病院の外来で血圧を測ったり、血液検査の結果で判断されますが、これらの病気の一つひとつは氷山の一角であって、実は、これらの病気は海の中では一つに繋がっている、というふうに譬えられています。こういう患者さんがいらっしゃると、血圧が高いから血圧の薬を出しましょう、血糖値が高いから糖尿病の薬を出しましょう、と個々の治療をするわけですが、その氷山から顔を出している病気の一つひとつを治療しても全体には影響が大きく現われませんので、患者さんの治療にはなっていません。患者さんをトータルに治すには、全体的に診て治療しなければいけないのではないか、と最近は言われています。
私はこの氷山というものは肥満ではないかと考えております。肥満を治すことによって、高血圧、糖尿病、痛風などがきれいに治る方が多いからです。ですから私は、きょうお話しております肥満を治すことによって、氷山の氷全体を少なくすることによって、海の上に見えているこれらの病気も減らすことができるのだと、皆さんに理解していただきたいと思っています。
*自分の適性カロリーは?
次に食事療法についてお話します。まず、自分の適性カロリーを知らないといけません。そのためには、最初に自分の理想体重を計算する必要があります。これは簡単な式で分かります。身長(m)×身長(m)×22です。BMI 22の人が最も死亡率が少ないと先程述べましたが、それを元にこの式は成り立っています。例えば、身長160cmであれば、1.6×1.6×22=56kgになります。
次に基礎代謝量を求めます。基礎代謝量とは人間が生活していくために最低限必要なカロリーで、何もしないでベッドに一日中横になっていても、基礎代謝量分のカロリーは消費されます。大雑把に、標準体重に24を掛けたものが基礎代謝量とします。先程の方なら、56s×24=1,344 kcalが基礎代謝になります。最低これだけ食べないと命に関わるということです。この基礎代謝に必要なカロリーを加えます。事務系などデスクワークをしている人は約300 kcal、営業回りなど少し歩く距離が多い中程度の仕事をしている人は500 kcalを加えます。先程の人は基礎代謝1,344 kcalで営業の仕事をしているとすると、500を足すと1,844 kcalになります。物理的にはこのカロリー以下の食事をすると体重は減るわけです。
*バランスの取れた栄養を
食事内容の決め方ですが、「今のカロリー以下に抑えればいいのだ」、単に「食事の量を減らせばいいじゃないか」と思う方が多いのですが、やみくもにカロリーを減らさないで下さい。無理なダイエットは長続きしませんし、リバウンドを招きます。食べたいのを無理に我慢していて、それがふっと切れてしまうとどんどん食べてしまいます。これがリバウンドで、この状態で摂り過ぎた栄養は必ず内臓脂肪につきます。そうすると、せっかく痩せたのにまた病気になる可能性が出てきます。
健康的に痩せるためには、バランスの取れた栄養を考えることが大切です。自己流ですと栄養不足を招き、体重は減るが痩せると言うよりやつれた状態になってしまいます。それを避けるにはどうすればいいか。ここでは四群点数法を紹介します。食事の材料を大きく四つの群に別け、それぞれからバランス良く食べればよいと言われています。
第1群が牛乳、乳製品、卵類、第2群が肉、魚類、豆あるいは豆製品、第3群が野菜、果物、第4群が穀物(パンやごはん)、脂類(料理で使う脂、ドレッシングなど)、嗜好品(お菓子類)です(表1参照)。私たちの体はある程度は脂肪で出来ていますから、これも最低限摂取しなければいけません(主に1,2群)。筋肉なども蛋白質(これも1、2群で主に摂れる)で出来ていますから、いたずらに蛋白を減らすと、脂肪は減るのですが筋肉も減って、やつれてしまいます。ビタミン(3群)ももちろん必要です。これら4群の食物をバランスよく摂るようにすれば、偏った食事を防ぐことができます。
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