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NO.28

とかち健康フェア2003
肥満と生活習慣病 -肥満を科学する-
(3/8)



*皮下脂肪と内臓脂肪

 肥満の状況はご理解いただけたと思いますので、次は、肥満とはどういうものか詳しくお話いたしましょう。皆さんは肥満になると、お腹の皮を引っ張って、こんなに脂肪が溜まってしまったと溜息をついたりするのではないかと思います。この自分でつまめる脂肪を皮下脂肪と言います。体型を作るもの、あるいは外から見える脂肪が皮下脂肪です。実はもうひとつ脂肪が溜まる場所があります。それは内臓脂肪と言われるものです。この内臓脂肪は腹筋の内側、腸の周りに溜まっている脂肪です。そのため、内臓脂肪は外からは見えず、また手でつまむこともできません。腸や腎臓などを、皮膚を通して触ることができないのと同じことですね。この皮下脂肪と内臓脂肪は、CT検査という体を輪切りにしたような写真を撮ることによって区別できます。皆さんが腹筋運動をする時に使うお腹の筋肉である腹筋をご存知だと思いますが、この腹筋と皮膚の間にある脂肪が皮下脂肪、腹筋の下にある脂肪が内臓脂肪です。

 皮下脂肪は体の外の環境から体を守ったり、あるいは保温したりして、コートのような役割で体を保護してくれる働きをもっています。内臓脂肪は、腸の場所があまり変わらないように腸を支える役割をしてくれると考えられています。最近になり、内臓脂肪に脂肪が溜まったタイプの肥満は、皮下脂肪に脂肪が溜まった肥満に比べて病気になりやすいということが分かってきています。

*内臓脂肪100平方センチメートルに病気がひとつ

 内臓脂肪の面積をCT検査の写真で測り、内臓脂肪がどれくらいになると病気になるかということを調べた人がいます。その結果、内臓脂肪の面積が100平方センチメートルになると生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症など)がひとつ増えてくることが分かってきました。ですから、皆さんの内臓脂肪の面積を測れば病気のなりやすさが分かるのですが、CTを受けなければならないのでお金もかかりますし、放射線も浴びますのであまりよろしくない、もっと簡単に測る方法はないかと研究をした人がおります。多くの肥満の方のウエストを測って、さらに同じ人の内臓脂肪の面積を測定し、ウエストと内臓脂肪面積の関係を調べてみました。その結果、内臓脂肪面積が100平方センチメートルになるウエストは、男性が85cm、女性は90cm位ということが分かりました。これを超えていると、自分は内臓脂肪が溜まっている、と認識していただいてよろしいと思います。

 血液中の中性脂肪もコレステロールも内臓脂肪が溜まっている人ほど高いことが分かっています。内臓脂肪が増えると血糖値も増えることが分かっています。高脂肪食や運動不足が続くと、体の中に食事として取り込まれたカロリーが増え過ぎ、余ってしまいます。そうすると、まず肝臓や皮下脂肪が余分なカロリーを貯え、満杯になると次に内臓脂肪に貯えます。この内臓脂肪が増えすぎると、血液のコレステロールや血糖値が上がってくるわけです。つまり内臓脂肪は食べ過ぎの状況、毎日食事で摂るカロリーの量が多過ぎることを反映していると考えられます。その結果、生活習慣病と関係が深いのは、皮下脂肪型の肥満よりも内臓脂肪型の肥満だということになります。

*更年期過ぎの女性はご用心

 話は戻りますが、肥満と血圧、あるいは肥満と血糖や尿等の関係には男女差があるとお話しました。肥満の男性は血圧が高くなりやすいが、肥満の女性はそんなに上がらない。血糖値と尿酸値も男性は顕著に上がるが、女性はあまり上がらない。考えられているのは、女性ホルモンの作用ではないかということです。女性ホルモンは、脂肪を内臓脂肪より皮下脂肪に溜める働きをもっています。その結果、女性はどちらかというと丸い体型になるようです。女性は子供を産むための非常に大事な存在ですので、皮下脂肪を溜めて外部のいろいろな衝撃や環境から体を守るという本能的なもので、皮下脂肪が溜まりやすくなっていると言われています。

 男性にはそれがありませんので、皮下脂肪も溜まりますが内臓脂肪の方がより溜まりやすく、その結果、肥満に関係する病気に女性よりもなりやすいと考えられています。だからと言って、女性ホルモンが出ているので女性である私は大丈夫、というわけではありません。女性ホルモンの分泌は更年期を過ぎると減ってきますので、その頃から状況は男性に近くなり、脂肪が内臓脂肪により溜まりやすくなってきます。その結果、高血圧や糖尿病などいろいろな病気になりやすい状況を迎えます。ですから女性の方も、更年期を過ぎると、更年期前の方以上に食事や運動量に注意する必要があります。

*減るのはまず内臓脂肪

 肥満の方に食事療法などをすると、体重が減ってきます。ダイエット食を始めて5日、10日、15日とみていると、皮下脂肪はそれほど減ってきませんが内臓脂肪の減り方は非常に急激です。ですから病気にとっては大変いいわけです。ただ、ここで予想されるのは、ダイエットを始めて何日も経ったけれども指でつまめる脂肪(皮下脂肪)があまり変わらない、体型もそう変わらない、ダイエットの効果があまりないのではないか、と思われる方が結構いらっしゃるかもしれないということです。しかし、そういう状況であっても、目に見えない内臓脂肪はきちんと減っています。今は体脂肪率を測れる体重計があるので、それで見ていただくと確かに脂肪が減っていることが確認できます。体型的に変わっていなくても内臓脂肪はきちんと減っている、と理解すればダイエットを続けるモチベーション(やる気)になるのではないかと考えております。これで肥満ということをある程度理解していただけたのではないでしょうか。

*脂肪細胞が余分な脂肪や糖分を取り込む

図2 次の疑問点は、肥満症はどうして生活習慣病を引き起こすのかということです。先程も言いましたように、肥満はいろいろな病気に関係しているわけですが、なぜそうなるかは残念ながら現在でもはっきりとした答えは出ていません。ただ、それを理解するための鍵がいくつか分かっていますので、今回はそれを簡単に紹介いたします。ここでは主に肥満と糖尿病、高脂血症の関係についてお話します。皆さんの印象として、脂肪は何となく脂肪の塊がお腹に溜まっていると思われているかもしれませんが、実は脂肪は細胞で出来ています。私たちの体は数億個(確認)の細胞で出来ていて、脂肪の部分も脂肪細胞というもので成り立っているわけです。この脂肪細胞が脂肪を取り込んだり、余った糖分を取り込んだりして、皮膚の下やお腹の中に溜まっているわけです。電子顕微鏡で観察すると、正常な脂肪細胞はテニスボールのような状態で並んでいて、隣の細胞との間に隙間が空いているように見えます(図2に模型図を示しました)。これが肥満の脂肪細胞になると、周りの脂肪細胞との隙間はなくびっしり詰まった状態になります。摂り過ぎた脂分を脂肪細胞が取り込んで、その結果、脂肪細胞が体型と同じように太ってくるわけです。

 脂肪細胞の数は、私たちが大人になった時点で殆ど変わりません。これらの脂肪細胞は余った脂肪を取り込んでくれるわけですが、食べ過ぎの状況が続くと、限られた数の脂肪細胞に脂肪や糖が取り込まれますので、だんだん大きくなります。それよりもさらに頑張って食べ過ぎを続けていくと、今度は細胞の数が増えてきます。決められた数の細胞だけではまかない切れなくなって、しょうがなく数を増やしていくのです。以上のように、肥満になると体型が大きくなるのと同じように、脂肪細胞も大きくなって数も増えてきます。

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