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NO.28 |
とかち健康フェア2003
肥満と生活習慣病 -肥満を科学する-
(2/8)
*BMI 25から肥満です
ここではっきりさせないといけないのは、肥満とはどういう状態かということです。同じ体重でも、身長が違う人ではその意味合いが異なります。体重60sで身長150cmなら肥満ですが、身長180 cmなら痩せの体型になります。体重だけを云々しても分からないわけで、肥満を判断するには体重を身長で直した数字が必要になります。この数字を体格指数(ボディ・マス・インデックス)BMIと呼んでいます。BMIの計算方法は簡単で、体重(kg)を身長(m)で2回割った値です。身長が160cmで体重が60sなら60÷1.6÷1.6=23.4で、23.4がBMIです。
日本人のBMIは大体20〜30の間に収まります。統計の専門家はいろいろなBMIの人を比べて、病気のなりやすさや死亡率を調べてきました。その結果、男女ともBMIが25を超えたあたりから、心臓病や頭の血管の病気になる危険性が非常に高くなることが分かりました。がんになる可能性もBMI 25から上がってくることが分かっています。以上のようなBMIと死亡危険度の関係から、私たちはBMI 25以上を肥満と判定することにしています。死亡率が一番低いのは、男女共、BMI 22前後です。それより痩せ過ぎても死亡率が高くなります。22を正常、これより低いと痩せ過ぎ、これより高くて25を超えると肥満と判定します。
概算表を出しておきましたので、自分がどの辺にいるか判断してみて下さい(図1)。この表を見ますと、例えばご自分の身長が160cmとすると、体重が64sより下回っていればBMI 25ではないので、まだ肥満には至っていません。もし身長が160cmで66sだったら、BMI 25の64sを超えているので、肥満の部類に入ると判断できます。この表をみると、自分の危険度はどの辺にあるのかが予測できます。BMIの数字は生命保険会社でも統計的に使っていて、肥満度が掛け金などに反映されている会社もあると聞きます。要するに、肥満も死亡率に関係していますので、こういうものも参考にされているようです。
*肥満と生活習慣病発症はやはり比例する
肥満が最近多くなってきたと言われていますが、なぜなのでしょう。よく言われるのが、食生活の西欧化です。食生活の変化を1955年から1999年までで調べてみますと、意外なことに一日に摂取する総カロリーは2,000kcal前後と、それほど変わっていません。食事の総カロリーはそれほど変わらないのですが、1955年頃の日本人はどちらかと言うと、ご飯などの糖質が主体の食事を摂っています。その後、年を経るにつれて糖質の割合が減ってきて、逆に脂質が増えてきています。恐らく私たちの食生活が、どちらかと言うと、魚類からアメリカやヨーロッパに近い肉食になってきたことを反映していると思います。日本人の食事は総カロリー数ではそう変わらないが、脂肪の摂取量が増えてきたのです。それから交通機関の発達によって、運動する機会が減ってきました。これらの結果、日本人の肥満が増えてきていると考えられます。
肥満は病気になりやすいと言われていますが、男女共、肥満の度合いが増えるにつれ、確かに血圧が高くなってきています。なぜか男性にその傾向が強く、女性も同じ傾向にありますが、男性ほどではないようです。血糖と尿酸値も、肥満の度合いが増えると、値が増えています。女性も増えていますが、男性ほどではありません。肥満と病気の関係には男女差があるようです。非常に不思議な話ですが、これはどうも脂肪のつき方に原因があるようです。これについては後でまた触れます。ここまでのまとめとして、肥満の度合いが大きいほど生活習慣病になりやすい―これは動かし難い事実として皆さんに認識していただきたいことです。
*軽度な肥満でも発症しやすい民族的な素因
日本全体で肥満の方はどれくらいいるのかみてみましょう。BMIが25以上のいわゆる肥満に入る方は、男女共20%です。要するに、日本人の5人に1人はBMI 25以上の肥満の部類に入ります。ただBMI 30以上の高度肥満になるとぐっと数字が減って、BMI 40になるとお相撲さんのようになるわけですが、そういう方は殆どおりません。それに対してアメリカやイギリスはBMI 30の比率が非常に高くなっています。アメリカなどに行くと、日本人にはあまり見かけない、非常に太った方をしょっちゅう目にするかと思いますが、統計的にも大体そういう感触と同じようです。
日本はアメリカやヨーロッパに比べて、太っている人はそんなに多くないので、そういう国に比べればいい方ではないか、とお考えになるかもしれません。ただ、例えば糖尿病の人口はアメリカの白人が7〜15%に対し、日本人は4〜12%であまり変わりません。と言うことは、日本人は軽い肥満でも病気を合併しやすい民族的な素因を持っている、ということになります。
その原因についてはいろいろ取り沙汰されていますが、ひとつには日本人は歴史的に農耕作を中心として生活してきた民族であったため、稲や野菜など穀物類を摂ることが多かったことがあげられます。また、昔から西欧諸国に比べて肉食をする機会が少なく、特に、江戸時代では肉食を禁じられた時期もありました。そういう歴史的背景から、肥満に対してあまり強くない体質を持ってしまったとも言われています。そういう背景はもとより、現実的にそういう状況でありますので、外国人に比べて日本人は太りにくい、太っている人が少ないといっても、決して安心はできないのです。
*女性に増えてきた痩せ過ぎの人
1980〜2000年まで、いろいろな年代の人の肥満を男女比で示してみると、男性は太っている人の割合が増えてきている傾向にあります。それとは対照的に、女性については最近のダイエットブームで太っている方の割合は、どちらかと言うと、横ばいか減少です。特に若い女性は肥満者の割合が最近になって減ってきています。問題になるのは、若い女性の場合、痩せ過ぎている人がかえって増えていることです。先程触れましたように、BMI 22の体型が最も死亡率が少ないのですが、男性ではそれを上回っている方が多く、女性は太っている方も増えてはきているのですが、健康以下に痩せている人も多くなっています。要するに、ほどほどの体型をお持ちの方をなかなか見かけない状況になってきている、と考えられます。
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