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NO.24 |
健康特別講座「不整脈でお困りですか」
外科医の目で見た不整脈
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ペースメーカーが感知し、ペースメーカーが電気ショックをかける
心室細動です(スライド省略)。これを見ると、皆さんは死んでいると思うでしょうね。意識もないし心臓も動いていません。この人には電気的な徐細動といって、体の外から直流で電気をかけます。この場合は400Wsecondの電気ショックを与えます。それによって心室細動がとれてリズムが出てきます。当時は、患者さんの体外からショックを与えなければならなかったのですが、今の最先端は、患者さんの体内にペースメーカーを埋め込んでおき、心室細動になった時にペースメーカーがこれを感知し、電気ショックを自動的にかけます。
これからは紹介するのは、メドトロニック社の好意で提供してもらったスライドです。ペースメーカーの進化の様子を辿ってみましょう(スライド省略)。同社は、私が30年以上も前にこういう仕事を始めたころから既に世界トップのペースメーカーを作っておりました
これは先程申し上げました直流徐細動器で、患者さんが心室細動になった時に体の外から電気ショックを与えます。このようなものがなかったら、患者さんはこの時点でこの世にお別れすることになります。
これは、こういった装置を初めて人間の体の中に全部埋め込んだミドースキーという医師です。彼のアクティブな仕事の恩恵を蒙っている人がたくさんいます。
これは一番初期の植込み式の徐細動器です。患者さんの心臓の表面に接着し、心室細動が感知された場合にはここから直流の電気を流して不整脈を取り除くシステムです。
これは、パッチを当てるものからカテーテル電極に進化してきたものです。これは直流徐細動を発生する装置です。最近の一番進んでいる植込み式の徐細動器は徐脈をコントロールし、いいリズムにします。非常に驚異的な発達をしています。これは、患者さんの皮下に埋め込んだ徐細動器と患者さんの静脈を伝わって右心室の先端にセットされたカテーテルとの間で電流を発生させ、心臓に電気ショックを与えて心室細動を正常に戻すという働きをしております。
これは、こちらの方からだんだん植込み型の徐細動器が進化していった様子を示しています。最初はあまりにも装置が大きくてお腹にしか埋め込めませんでした。それから心臓表面からパッチだったのですが、だんだん小さくなってきてカテーテル電極になってきました。機械本体そのものが小さくなったので皮下に埋め込めるようになりました。
これが一番進んだ状態です。どんどん普及してきまして、特にアメリカでは10万人以上、日本では厚生労働省の認可がやっととれて少しずつ伸びているところです。使い易いですから、これからどんどん伸びて日本人にも使われていくと思われます。
これは植込み型の徐脈を主な対象にしたペースメーカーです。この大きいのがペースメーカーで、患者さんの皮膚から体の中にカテーテル電極が入ってこれと接続しているわけです。この患者さんはこの機械がなかったら、おそらく生きていないでしょう。
1950年代最初のころはこうだったのですね。そして段々ペースメーカーが進化してきました。こちらの大きなものから小さなものへと進化してきました。
臨床で使われる医療器具で、最も進化したのがペースメーカーのシステム
きょう、折角ここに来られたので、皆さんは実際にペースメーカーをご覧になったことがないと思いますので、お見せします。これは最近使われだしたもので、こんなに小さく、薄くなりました。患者さんは体内に入っていても分からないほどです。20グラム前後です。非常に進歩しています。いま現実に臨床で使われる医療器具で、最も進化したのがペースメーカーのシステムです。1950年代、ペースメーカーの黎明期には、患者さんの20、30台の遅い脈を60、70台にしておこう、ただ患者さんを救おうといったごく未熟なペースメーカーでした。次第に、患者さんが本来持っていた心臓の動きに、極めて類似したシステムができるようになってきました。
皆さんがお手元で見ている大きいものは、水銀電池が入っています。水銀電池は非常に不安定で、患者さんの体に埋め込んでいるうちにガスが発生して爆発するとかそういうことがありました。私なんか患者さんに植込んだ後「これどの位持ちますか」と尋ねられ「2、3年は大丈夫でしょう、メーカーもそういっていますから」と答えたら、1月位経って全然作動しなくなってしまい、ものすごく怒られたこともあります。植込んでほっとしていたら、アメリカの会社から「どうも調子がおかしい、全部引き上げる。取り出して欲しい」といわれたこともありました。とても大変な時代でした。
リチューム電池になってからは非常に安全
小さい装置の電源はリチューム電池です。非常に素晴らしい電池で、いまは少なくても6年は文句なしに持ちます。メドトロニックが実際に取り出したペースメーカーを検証した情報によりますと、6年前後で電池が減ってくる傾向がありますので、病院によって考え方は違うでしょうが、我々のところでは大体6年をメドにして交換します。リチューム電池になってからは非常に安全です。
一時フランス、イギリスが原子力で電池を作り、日本でも輸入をどうするかが問題になりました。私も委員に選ばれて検討したことがあるのですが、日本は交通事故が多いですから、もし患者さんが体を傷つけられた時に放射能汚染という問題になったらどうするかというような話もあり、結局、1台も輸入しないことになり、日本では全く使われておりません。リチユーム電池ができてからは、あえて放射能の危険があるものは使わないということになっているはずです。世界で使われているペースメーカーはリチューム電池が中心です。
患者さんの状態に合わせるペースメーカー
そして、患者さんが70なら70でセットしたペースメーカーのリズムに合わせる時代ではなく、生理的ペーシング設定あるいはレートレスポンスといって、患者さんが運動したり精神的な感動を味わったりして血液が増えなければならない時に、リズムを速くして心臓から送り出す血液の量を多くしようというペースメーカーが市場に出てきました。
ごく初期には、ペースメーカーを入れた患者さんの管理は、心電図でペースメーカーの刺激波形を見て、うまく作動しているかどうかが辛うじて分かったのですが、今はプログラマーといって、患者さんのペースメーカーを通していろいろな情報を見ることができます。植込まれているペースメーカーにホルター心電図の機能を持たせているものです。患者さんが携帯するのではなくて、植込まれたペースメーカー自体がホルター心電図の機能を持っていて、一週間分の心電図を呼び出すことができます。危険な不整脈が起こっていなかったかどうか、このペースメーカーがきちんと作動していたかどうか、電池の電圧がどのくらいになっているのか、患者さんの心臓に接着しているリードにどんな変化がでているのか、リードに損傷が起こって抵抗が高くなっていないかどうか、逆に低くないかというように極めて多くの情報を得ることができます。ペースメーカーの入った患者さんの管理が非常に容易になってきました。
ペースメーカーのいろいろな種類
話が前に戻りますが、ペースメーカーにはいろいろな種類があります。これは体外式ペーシングといって、体の外にペースメーカーがあり、患者さんの皮膚を貫いて電気刺激を伝えるリードが、この方の場合は、心臓の右心室の室壁に接着しています。緊急に、とにかく患者さんの脈の遅いのを救わないとならない時に行う方法です。この後、患者さんの状態が落ち着いた段階で、植込み型のペースメーカーを挿入します。
これは静脈を通して心臓の内面からカテーテル電極の先端を接着させる経静脈電極による植込み型ペースメーカーです。電線の先端は右心室の先端部分に接着しています。電流はペースメーカーからこの電線を通って心筋に流れます。心臓が収縮した時、このペースメーカーのリズムを1分間70にセットしておくと、70流れてくるのですが、もし、患者さんの脈拍が順調に回復して80位の自分のリズムが出てきた時には、ペースメーカーはそれを感知して沈黙してしまいます。そうでないと、患者さんのリズムとペースメーカーのリズムがぶつかって非常に危険な状態になります。逆に心室細動を惹き起こすことになってしまいます。そういった場合には、患者さんのリズムが回復したのを感知して、このペースメーカーは電気刺激を発生しないというシステムになっています。
VVIペーシング
これはVVIペーシングです。患者さんの右心室にカテーテル電極を装着し、ここで電気刺激を感知し、刺激が無ければ発生させる方法です。患者さんの脈拍が速くなったり自分のリズムが回復したりすると、ペースメーカーは電気を発生しません。これは、最低限患者さんのリズムを遅くしない方法で、本来持っている患者さんの心臓の働きは無視しています。なぜかといいますと、本来我々の心臓は右心房、左心房が収縮し、次いで右心室、左心室が収縮し、ブースター効果といいまして、最終的におっぱいを搾り出すみたいな感じになります。ところがVVIペーシングは心室だけを電気刺激する方式で、心房→心室の順に刺激ができないので、血液を送り出す効率が低下します。ある意味では非常に乱暴なやり方なのですが、患者さんが徐脈で亡くなるよりはいいだろうという方法です。
DDDペーシング
これはペースメーカーをより生理的な状態に近づけようと右心房にもカテーテル電極を置くようにしたものです。このケースでは電極をVVIと同じように右心室に一つ、もう一つを右心房に置いています。右心房を刺激し、心房から十分な血液を心室に送り込む時間をとって、それから心室を刺激します。これをDDDペーシングといいます。心房と心室が自分で電気刺激を発生した場合には、それを感知してペースメーカーは電気を出力しないようになっています。ですから、できるだけ自分のリズムを温存しようと、そうでない場合には、元々この人が持っている生理的な機能をより生かすようなペーシングをしようというのがDDDペーシングです。今一番進んでいるシステムといってよいでしょう。
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