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NO.24

健康特別講座「不整脈でお困りですか」
外科医の目で見た不整脈
(1/3)


北海道循環器病院院長 大堀 克己先生

 私は外科医ですので、内科医の加藤先生のように緻密な説明はできないと思います。切った張ったの世界にいますので、きっと大雑把な話になるでしょう。ご勘弁ください。

外科医が担当するのは徐脈性がほとんど

 これは心臓の中の刺激伝導系です(スライド省略)。心臓は体から取り出しても自分で動きます。自動能といって、心臓は自分でリズムをとることができます。右心房と上大静脈の接点に洞結節があり、ここで自然に電気を放電します。我々の世界でいえば送電線のようなものが心臓全体に張り巡らされており、発生した電気はその経路を辿って全体に伝わり、心臓が収縮を起こすようになっています。不整脈は主にこういった経路に障害があって起きます。

 私ども外科医が対象にする不整脈は徐脈性といい、脈が遅くなるのがほとんどです。脈が速くなる頻脈性に対する治療としてペースメーカーを使うこともあったのですが、今はアブレーションといって、ほとんど内科の循環器専門の先生が治療します。頻脈の原因になるのは、刺激伝導系の一種の歪みたいなものですけれど、そこを高周波で焼灼治療すると二度と頻脈発作は起こらなくなります

心臓は神経系と体液系の影響を強く受けている

 自動能があるからといって、この洞結節と刺激伝導系が体全体から独立しているわけではなく、脳と密接に結びついており、交感神経と副交感神経の末梢がたくさん来ています。気の弱い方が人前で話をするとドキドキしたり、好きな異性の手を握ると脈拍が速くなったりするのは、心臓だけが独立しているわけではなく、脳の支配も受けているからです。血液に溶けこんで循環器に影響を与えるホルモンの影響も受けています。神経系と体液性の影響を非常に強く受けています。

ウイークポイントになりやすい房室結節

 正常な人であれば脈拍は安静時に60から90、時には100位までになることもありますが、徐脈性不整脈が起きると、単位時間に発生する電気の頻度が少なくなり、40あるいは30台になって、洞結節は病的状態に陥ってしまいます。洞結節の調子が悪くなると洞不全症候群になります。

 次は房室結節です。心房と心室の丁度中間にあり、洞結節から心房の中を伝わってきた電気をここで一回中継しますけれども、ここは生まれながらの調子によってウイークポイントになりやすいところです。電気がうまく伝わらなくなることがあります。専門的にいうと難しいのですが、心房が収縮して心室に血液を送るためには、ある程度の時間差がなければならない。そのために房室結節が、神様がそうしたかどうかわかりませんが、電気が伝わりにくくなる性質を持っていて必要な時間差を生み出します。ところが、房室結節は障害を受けて電気が伝わりにくくなることもあります。ある時には完全に途絶してしまい、これを完全房室ブロックといいます。房室結節が電気を伝えにくくなる、あるいは途絶してしまう―このように房室結節の調子が悪くなることを房室ブロックといいます。

 心房は右心房と左心房がありますが、電気をリズミカルに伝えなくなり、勝手気ままにあっちこっちの心房部分が電気的な興奮を起こしてしまう現象があります。加藤先生のお話にあった心房細動です。これも1分間に100とか120、130と速い場合もありますし、逆に脈拍が落ちて、3秒、5秒位心臓が止まった状態になってしまうこともあります。徐脈性の心房細動といいますが、ペースメーカーの治療が必要になります。

洞不全症候群、完全房室ブロック、徐脈性心房細動はペースメーカー治療対象

 ペースメーカーの治療対象になるのは洞結節の調子が悪くなった洞不全症候群、房室結節のところにブロックが生じて徐脈になる完全房室ブロック、あるいは完全房室ブロックに近い状態です。心房が律動的に収縮できなくなる徐脈性心房細動もペースメーカーの対象になります。

  我々の意識は、5秒ほど血液が途絶すると消失するといわれています。アダムス・ストークス症候群といいます。房室ブロックなどで心電図が5秒位平らになっていると、今まで意識のあった人が急に意識を失って倒れてしまいます。少なくとも5秒の心停止時間を伴った徐脈性の不整脈はペースメーカーの治療が絶対に必要だということになります。

  房室結節からの電気は左脚、右脚に分かれて流れ、心室に伝わります。そうすると、心室が収縮します。この刺激伝導系を電気が流れるに従って一つの心拍を形成することになります。

カテーテルにさまざまな工夫

 経静脈カテーテルです(スライド省略)。ペースメーカーを装着する場合には、ペースメーカーから出てくる電気刺激を患者さんの心臓に伝えなければなりませんが、これは患者さんの静脈の中を通って右心室の先端の中側から接着するように作ったカテーテルです。いろいろな電極があります。心臓の内面に接触する表面積が小さいほど電気抵抗が上がらないとか、数々の課題があり、メーカーがさまざまな工夫をしており、時代とともにこの先端が変化してきたことが分かります。このように表面積が小さいことが評価されています。

 今お見せしたのは、静脈を通って心臓の内面に接着する電極でしたが、これは心臓の表面に接着するカテーテル電極です。このギザギザのついたところを心臓の表面から心臓の筋肉の中に差し込みます。この先端から電流が流れ、刺激します。これがペースメーカーの本体に入っていく方で、こっちが患者さんの右心室の内面に接着する方です。これが静脈の中をずうっと辿っていくわけです。

 かなり昔のペースメーカーです(スライド省略)。私はメーカーの人によく文句を言いました。こういう尖ったところが患者さんの体の中に入っていくのは非常によろしくない、体に優しいのは真丸いものではないか、と。最近はみんなそのようになりました。

 これは、経静脈カテーテルをいろいろ並べたものですけれど、こういう四角いものはあまりよくないのですが、段々メーカーも丸みを帯びたものを作るようになりました。これも古いものですが、体外式のペースメーカーです。患者さんの脈拍が急に20とか30とかになった時には、患者さんに植え込み式のペースメーカーを装着する時間がない。その時は、緊急に皮膚の表面から静脈にカテーテルを挿入して、ペースメーカーを体の外に置いてここから電気を送りこみます。

 これも古いスライドで申し訳ありませんが、今のペースメーカーはこんなに大きくはありません。この人は経静脈のカテーテルを使ったのではなく、心筋電極といって先程スクリュー式のものをお見せしましたが、心臓の表面からこれを筋肉に差し込んであります。リードは患者さんの皮下組織を通って左の胸の下に埋め込まれているペースメーカーと接続しています。


        
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