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NO.24 |
健康特別講座「不整脈でお困りですか」
外科医の目で見た不整脈
(3/3)
拡張型心筋症に朗報
これは、残念ながらまだ日本には輸入されていないのですけれど、欧米でよく見られるようになってきたペースメーカーです。心臓移植の対象になっている病気の中でかなりの部分を占めるのが拡張型心筋症です。加藤先生のような循環器専門の先生が、たくさんそういう患者さんを抱えて悲しい思いをされているのですけれど、結局、入退院を繰り返して亡くなってしまいます。特に若い人、20代、30代、40代の働き盛りに発症した人が悲惨ですね。まだ小さなお子さんを残して亡くなってしまう。
それに対してどうするかというと、今のところは心臓移植しかありません。その前に人工心臓なのですけれど、人工心臓をつけて動けるわけがないので、人工心臓を使うとしたら心臓移植の橋渡しということです。日本でも心臓移植がどんどん行われない限り人工心臓もなかなか普及しません。
全てではないのですが拡張型心筋症の中には、左脚、右脚にブロックがあって、先に右心室だけに電気が流れて右心室が収縮し、遅れて左心室が収縮するということで、心臓の動きとしてはアンバランスな状態になります。それだけ心臓に負荷がかかるし、非効率的な動きですから、心臓から送り出される血液量も少なくなります。ですから、患者さんはちょっと歩いただけでも、体を動かしただけでも動悸がして体が辛い、倦怠感が強い、寝たり起きたりの生活になってしまいます。
それではどうするかというと、うまいこと考えたなと思いますが、このシステムは先程のペースメーカーと同じく右心室に電極があり、更に、冠静脈洞という心臓で使われた血液が右心房に戻ってくる静脈の経路を逆に辿ってカテーテルをもう一本左心室に入れ、そして両方同時に刺激します。今まで述べてきた刺激法は右心室だけ刺激するやり方で、右心室から刺激伝導系を通って心臓全体を収縮させる狙いだったのですけれど、拡張型心筋症はそういうことをしても左脚ブロックがあって刺激がうまく伝わりません。そこで左心室にもう一つの電極を入れ、両方同時に刺激することで効率よく心室が収縮して全身に送り出される血液の量が増える、という発想です。
これは適用を間違わなければ患者さんにとって劇的な効果があります。メーカーの話では日本でも来年は使われるということです。全部じゃありませんけれど、拡張型心筋症でペースメーカーの適用になる方がいらっしゃれば、非常に生活が明るくなります。来年からは楽しみだと思います。
ペースメーカーと電磁障害
ここ数年マスコミでも話題になっていますし、皆さんも関心をお持ちかと思いますが、特に、心臓にペースメーカーを植込まれた方への電磁障害についてお話します。
低周波の治療器には気をつけてください。針灸に行ってもそうですが、今は簡易なものが売られていますが、患者さんの体に貼り付けて通電する装置は体内に電流が流れるわけですので使わないで下さい。よく質問を受けますが、患者さんの体に電流が流れることによって電界ができますので使わないほうがいいということですね。
最近人気の体脂肪率測定器です。皆さん皮下脂肪を気になさって、お風呂上りに測ったりするようですが、これも、体の中に微弱ですが電流を流しますので使わない方がよろしいと思います。
これは、青い服を着たご婦人がびっくりしているようですけれども、冷蔵庫を使うなということではなくて、きちんとアースをしたものでないと漏電している可能性があるということです。こういう電気器具を使う時はきちんとアースをしましょう。
全自動麻雀卓は命がけ
私はやったことがありませんが、最近は横着な人が多いようで、自分でかき混ぜないで麻雀ができるのだそうです。ペースメーカーをつけた人が全自動麻雀卓を使う時は、命がけでやらないとならないということです。それが嫌だったら、昔のようにお互い混ぜっこしましょう。
温泉地に行くとよくあるマッサージ機。これも磁力で動かしますので使わない方がいいです。
これは、最近流行の電磁調理器です。特に高齢の方々は火の不始末がないということで非常に安全だというのですが、私も母親に一つプレゼントしたのですけれど、ペースメーカーの入った人はすぐそばでは使わない方がいいですね。少なくても50センチは離して下さいと書かれてあります。これもそうですね、IHの炊飯ジャー。このおばあちゃんが乗っているのは電子カーペットですけれど、これも磁力線が出るので避けた方がよろしいということです。
この人は電子カーペットの上でうつ伏せに寝ていますけれど、ペースメーカーとの距離が極めて近くなり、機能を異常にしますので、これはやめた方がいいということです。
電気毛布は一工夫して
電気毛布を使っておやすみになる。これは、よく分かっていないのですが、私はやめてくださいといっています。やめた方がいいと指導しています。寝る前に、電気毛布と一緒に普段掛けている毛布も暖めておいて、おやすみになる時には電気毛布のコンセントを抜いてその温かみでおやすみになる。これが一番安全ですね。
最近スーパーなどは防犯が厳しくなっています。向って左が防犯システムです。真中を通ることと立ち止まらないことが肝要です。磁力線の影響を受けるのは、この近くに寄ったり、ここで立ち止まって話をしたりする時で、非常によくないことです。単に通り抜けるだけなら異常はありません。
これは、航空機に乗る前にチェックされるところです。実際に見ていますと、ペースメーカーの入っている方は係の人にその旨を告げており、そうすると、すぐ問題なく通してくれています。通らないに越したことはないのです。係りの人にいえば問題はないと思います。そうした方がいいでしょう。
磁気ネックレスにご注意
磁力線を発生するものは、特に、ペースメーカーの近くで使わない方がいいでしょう。皮膚に押し当てるようなことはしない。そんな人はいないと思いますが、髭剃り機やドライヤーを押し当てるとか、ありそうなことは電話機を押し当てるとか、年配の方は磁気のネックレスとか、肩凝りに磁気のついたものを貼るとか、そういうものはペースメーカーの近くは避けましょう。ペースメーカーをお腹の皮下に入れている方がおりますので、その方はお腹に磁気ベルトを巻かないようにしましょう。
エンジンをかけたままボンネットを開けていじくり回していると危険です。プラグから磁力線がでる可能性があります。やめた方がいいです。
携帯電話は、メーカー側の勧告でアンテナの先端から22センチ離した方がいいといわれております。ご自身でも気をつけるでしょうけれども、最近は札幌市内では比較的徹底されてきて、込み合った電車などでは使えなくなっておりますが、少なくても22センチは離して使用するようにとなっています。
左胸のポケット避けたい携帯電話
携帯電話は、便利だからついつい左胸のポケットにいれてしまいますが、これはやめた方がいいです。もっと離れたところに入れて下さい。最近、私が心配なのは電磁波によるいろいろな障害です。これから出てくると思います。21世紀の病気の中のひとつの大事な部分を占めるのではないかと思います。私自身も気にしながら左胸のポケットに入れていますけれど、心臓とどうなるのかと思いながらやっています。病気でない方も気をつけられた方がいいと思います。パソコンの普及だとか、我々は電磁波を発生するものに随分囲まれるようになりましたので、これからどうなるのかなと思っています。
近寄らないに越したことはない高圧送電線
高圧送電線の下も要注意です。ここは駄目だということではないようですが、用も無いのに留まる必要はないということですね。近寄らないに越したことはないということです。最近問題になっているのは、高圧送電線の近くで生活している子供達に白血病の発生が多いといわれていることです。
携帯電話とペースメーカーについては、私どもも大勢の患者さんを治療しているので、責任上、どういった影響があるかを調査したことがあります。ペースメーカーが入っている方に、こういう調査をするので協力していただけないかとお尋ねし、納得してくれた方を対象に行ったのですが、結構断られました。それだけでも患者さんに精神的な影響があると思われます。携帯電話を使った状態で、患者さんのペースメーカーが入った皮膚にぎりぎりまで押し付けた場合の影響と、逆に離れた場合の影響を調べました。
精神的な影響が大きい携帯電話
結論からいうと、ほとんど影響はありませんでした。メーカーが詳しい情報を流してくれないので分からないのですが、携帯電話は電磁波に対する防御をかなりやっているようです。いま使用されているペースメーカーは携帯電話のような電磁波の影響はほとんど受けない、と考えていいと思います。
調べたのは二つです。携帯電話が実際にペースメーカーに異常を与えないかということと、もう一つはペースメーカーを植込んでいる方が携帯電話にどういう反応をするのか、精神的な影響があるのかどうか、です。そうしたら、やっぱりあるのですね。患者さんには分からないように、実は、携帯電話は発信しないで、これからやりますと嘘をついてやったのですが、患者さんは動悸をしたとか、なんか不安になってきたとか、胸が苦しいとか、2%位の人が訴えてきました。98%の人は問題ありませんでした。
このことで私がいいたかっかのは、機器には影響がないのですが、ペースメーカーを入れた方々は日常、混雑したところで携帯電話を無造作に使っている人達の中で大変辛い思いをしていることを分かってほしいということです。お聞きした患者さんの中には、地下鉄を降りた女性達がプラットホームで携帯電話をかけ始めるのを見て、頭が真っ白になり、その人達をプラットホームから突き落としてやろうと思った、という方もいらっしゃいました。ペースメーカーを入れた患者さん達が日常、街中で辛い思いをしているということです。私たち市民もそういったことを充分考えてあげないとならないと思います。
<質問>ペースメーカーは保険の適用がありますか。ないとしたら、個人負担はどの位でしょうか。
<大堀先生>
身体障害者の一級に該当しますので個人負担はありません。この治療をしなければならない時には、担当の医師が申請書を出しますので、自己負担は一切ありません。乗り物に乗るとかそういうことに関しては、手帳をもちますので、かなり考えてくれていますので経済的メリットがでてきます。<質問>私はペースメーカーをつけていませんが、何か電磁波から守る方法はあるのですか。
<大堀先生>
メッキしたジャケットが売りだされておりますが、そういうものを着けるのもひとつの方法かなとは思います。ただ、どの程度効果があるか確定的ではないです。全身を蔽うわけではないので、頭の上からきたりした時はどうなるかわからないですね。


