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NO.21 |
パネルディスカッション 血管を守るための正しい知識

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千歳リハビリテーション学院学務部長 伊藤 俊一 氏(いとう・としかず) |
北海道大学医療技術短期大学部理学療法学科卒。84年から北海道大学医学部附属 病院理学療法部勤務、86年から北海道理学療法士会理事。99年、北海道千歳リハビリテーション学院勤務、今年4月から同学院副学院長。 |
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南九州大学教授 |
神奈川県立栄養短期大学卒。天使大学看護栄養学部栄養学科教授などを経て現在に至る。(財)札幌市健康づくり事業団評議員として栄養士の立場から道民の健康維持のために活動。 |
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北海道大学大学院医学研究科循環病態内科講師 |
北海道大学医学部卒、同大学院修了。米コーネル大学医学部薬理学教室研究員などを経て現在に至る。日本循環器学会の心臓病予防ガイドライン作成に従事。道民のスポーツによる健康増進にも努める。 |
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スポーツキャスター 三屋 裕子氏(みつや・ゆうこ) |
筑波大学大学院修士課程修了。 元全日本バレーボール選手。ロサンゼルス五輪で銅メダルを獲得。筑波スポーツ科学研究所副所長、健康日本21推進フォーラム理事など多彩に活躍中。 |

島本和明氏 (しまもと・かずあき) |
札幌医科大学医学部内科学第二講座教授 |
林美香子 (はやし・みかこ) |
フリーキャスター |
無理のない運動継続しよう 伊藤林 まず生活習慣チェックリストをもとに伊藤、杉山両先生から運動と食事の面から具体的なアドバイスをいただきます。
伊藤 チェックリストQ1〜4を中心に運動療法についてお話しします。運動は高脂血症治療の基本であるとともに動脈硬化の予防にもなります。ではどんな運動がいいのか。一言でいえば、無理なく長く続けられる「歩行」がよいでしょう。1回15〜20分の"ややきつい"程度で行うことが理想ですが、運動習慣が無い方は1回3〜5分を数回に分けて始めても結構です。これを週3日以上は行いましょう。
北海道では冬は歩行量が減りがちですが、歩行量よりも継続こそが重要です。そんなときは室内での足踏みや、イスに座っての足踏みでも構いません。プール歩行と同様、ヒザや足に負担が少なく高齢の方にもおすすめです。
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食生活への気配りが大切 杉山
医師に相談 正しく服用を 佐久間杉山 食生活についてチェックリストQ5〜8を中心にお話しします。Q5のお酒の問題から。適量を毎日飲むと善玉コレステロールが増えるといわれます。さらに血行を良くし、気分をリラックスする効果も。でも飲み過ぎは中性脂肪や悪玉コレステロールを増やします。1日の適量は個人差もありますが、アルコール30ミリリットル。これは日本酒1合、ワイン200ミリリットル、ビール600ミリリットルに相当します。
Q6の乳製品は良質なタンパク質を多く含みますから適度に取りたい食品。でも脂肪分も高いので、高齢者やコレステロール値の高い人は注意してください。目安は牛乳で一日200ミリリットルくらい。
Q7の魚か肉かの問題では、魚の割合を高く。魚の脂肪にはコレステロール値を下げる働きがあるからです。肉も血管を丈夫にする良質なタンパク質ですし、貧血を防ぐなどの効果があります。脂の少ないヒレやモモなどを選んで適量を。Q8の野菜は積極的に取りたいもの。生体の酸化を防ぐビタミンや、コレステロールを減らすとされる繊維質が豊富に含まれています。
林 続いて佐久間先生に高脂血症の薬物治療についてうかがいます。
薬の効果を知って感心 三屋
生活習慣の見直しをテーマにさまざまな提言がなされたパネルディスカッション 佐久間 食事や運動でコレステロール値が下がらない場合は薬による治療を始めます。このとき気を付けたいのは薬に対する知識を持って医師に言われた飲み方を守り、正しく飲むこと。疑問を持ったときは、いつでも気軽に相談できる、かかりつけ医を持つことも大切です。そして治療目標値はその人が危険因子をいくつ持っているかにより異なります(危険因子チェックリストを参照)。特にQ1、Q3、Q5、Q6の四項目の中で、該当するものがゼロまたは1つの人は総コレステロール値220ミリグラム/デシリットル未満ですが、2〜3個あると、これが200ミリグラム/デシリットル未満になり、4項目とも該当するか、または冠動脈疾患の病歴を持つ場合は180ミリグラム/デシリットル未満と、さらに厳しくすることが勧められます。
現在日本で使われているコレステロール低下薬ではスタチンが代表的。これには脂質改善作用以外に
(1)血管を動脈硬化になりにくくする
(2)血管を丈夫にして心筋梗塞になりにくくする
(3)血管を若々しく保つ
(4)血液をさらさらに保つ
(5)骨を丈夫にする
―などの効果もあります。林 三屋さん、これまでのお話でどんなご感想をお持ちですか。
かつての生活スタイルに戻す努力を 島本
林美香子氏
(はやし・みかこ)三屋 スタチンってすごい薬なんですね。血管を若々しく、血液をさらさらに保ってくれるなんて。杉山先生のお話はちょっと耳が痛いです。お酒の適量を守るのは厳しそう(笑)。
林 島本先生、アルコールについては男女差もあるそうですね。
島本 ええ、女性の適量は男性の半分。ますます厳しいですね(笑)。
林 では次に島本先生から動脈硬化の危険因子についてご説明いただきます。
島本 まず加齢。男性は45歳以上、女性は閉経後です。さらに肥満、喫煙、高血圧、糖尿病、過去に心臓病(狭心症・心筋梗塞)を起こしたことがあるか、家族に心臓病を起こした人がいるか、高脂血症と診断されたことがあるか。以上の8項目が動脈硬化の危険因子です。
3項目以上が当てはまる人は要注意。高脂血症の診断基準は総コレステロール値220ミリグラム/デシリットル以上というのが一般的です。さらにLDLコレステロール値(140ミリグラム/デシリットル以上)、HDLコレステロール値(40ミリグラム/デシリットル以下)、中性脂肪値(150ミリグラム/デシリットル以上)の値も重要です。
林 ご来場のみなさまから事前に質問をいただいていますのでお伺いしていきます。
三屋裕子氏
(みつや・ゆうこ)
まず61歳男性から。「検査で高脂血症の疑いありといわれました。総コレステロール値260ミリグラム/デシリットル、HDL値62ミリグラム/デシリットル、中性脂肪値152ミリグラム/デシリットルです。毎日40分は歩いています。肉はほとんど食べません。でも甘いものは大好きです。生活習慣で気をつけることはありますか」。杉山 総コレステロール値は明らかに高いですね。まず糖分の取り過ぎをやめましょう。また乳製品や肉、魚、大豆なども過剰に取ると体内で脂質に変わることを忘れずに。ただし野菜は積極的に取ってください。食物繊維が効果を発揮するにはある程度のボリュームが必要。赤・青・黄の3色を組み合わせて、1食につき両手にこんもり盛るくらいの量が目安です。
林 これは複数の方から寄せられたご質問です。「コレステロールを下げる薬は一生飲み続けなければいけないのですか」。
佐久間 コレステロールが高めの方はまず運動と食事療法を。それでも下がらない場合は薬物治療を行います。正常値に戻れば主治医と相談し、服用をやめてもかまいません。
林 最後に血管を守るための一言メッセージをお願いします。
三屋 ぜひ運動をしてください。ただし必死にならず、気楽に。体質改善には長く続けることが大切です。
杉山 口先だけにおいしいものではなく細胞が欲しがるさまざまな栄養素を組み合わせて食べましょう。また食事は楽しんで心豊かに。
伊藤 運動は食事療法と併用してこそ効果的です。そして1年に1度は必ず健康診断を受けましょう。
佐久間 動脈硬化の原因はコレステロールだけではありません。生活習慣を見直して危険因子をできるだけなくす努力を。
島本和明氏
(しまもと・かずあき)島本 高脂血症や動脈硬化は30年前の日本にはほとんどなかったもの。それが生活習慣の欧米化でこんなに増えてしまいました。私たち日本人の体質が変わったわけではありません。生活を以前のスタイルに戻せばこの病気は減るはず。食事も運動も継続が大切です。
林 日々実践してこそ健やかな毎日が送れることを実感しました。自分の健康は自分で守るという意識が大切ですね。本日のフォーラムがみなさんの健康づくりのお役に立ちましたら幸いです。


