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札幌医科大学医学部内科学第二講座教授 島本 和明 氏 |
札幌医科大学卒。同大第二内科助教授などを経て96年から現職。日本循環器病予防学会理事など学会活動多数。高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満など動脈硬化の危険因子と心臓病について広く研究。 |
薬を上手に使いながら高脂血症を治療しよう
現在、日本人の死亡原因の首位はがんで全体の約30%。心筋梗塞と脳卒中がこれに続きます。しかし両者を合わせるとこちらも約30%でがんに迫る勢い。心筋梗塞と脳卒中はどちらも動脈硬化が原因で起こる循環器系疾病、つまり心臓血管系の病気です。がんが体のさまざまな部位に発生することを考えると、心臓と血管に起因する病気の割合がいかに高いかがわかります。
動脈硬化は血管の内膜にコレステロールがたまり、血管が狭くなって起こります。進行すると狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤(りゅう)などを起こす可能性も。ところが困ったことに血管の75%が侵されるまで自覚症状がありません。動脈硬化が「サイレントキラー(静かな殺人者)」とも呼ばれるのはそのためです。
動脈硬化の四大危険因子は高脂血症、高血圧、喫煙、糖尿病。さらにストレスや肥満、加齢、女性の閉経、家族歴が加わります。ほとんどは生活習慣を改善することで予防できるものです。
高脂血症とは血液中の総コレステロール値や中性脂肪値が正常より高く、善玉コレステロールといわれるHDLコレステロール値が低い状態。食べ過ぎ、肥満、運動不足、飲酒、遺伝的体質などに起因します。
高脂血症に高血圧、肥満、糖尿病が加わると心筋梗塞の確率が急激に高まるため「死の四重奏」とまでいわれます。治療は・食事や運動など生活習慣の改善・薬物治療・血液中のLDLコレステロールを抜き取る特殊治療―があります。
最近コレステロール値の大幅低下とがんの関連が取りざたされ、薬による下げ過ぎに不安を抱く方もいるようです。しかし調査の結果、コレステロール値の低下ががんの発生要因ではないことが解明されています。反対にがんが発生するとコレステロール値が下がる場合があるようです。したがって薬剤を使用し、コレステロール値が予想以上に大幅低下したときはがん検査を受けることをすすめます。
5万人を対象に6年間シンバスタチンを使ったJ―LTT(日本脂質介入試験)では、薬の重篤な副作用はゼロという結果が出ています。副作用の可能性は否定できませんが極端に低いといえます。信頼できる専門医のもとで程度と期間を検討しながら服用していれば心配はいりません。
シンバスタチンをはじめとするコレステロール低下薬の効果は目覚ましいものがあります。しかし、基本は生活習慣の改善です。食べ過ぎ、喫煙、深酒を避け、適度の運動と十分な休養を心がけましょう。


