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心臓と不整脈
(5−3)
狭心症、心筋梗塞について
狭心症、心筋梗塞とはどういう病気かを御説明します。心臓は冠動脈という血管で養われておりまして、心臓が正常に働くためには冠動脈という血管の流れがとても大切です。冠動脈に動脈硬化が進み血液の流れが悪くなりますと、心臓の一部に痛みの原因なる物質が溜まりまして、心臓が狭まるような、締めつけられるような痛みを引き起こします。これを狭心症といいます。一方、動脈硬化が進んで、冠動脈が完全に閉塞した場合、心筋梗塞とう病気になります。
狭心症と心筋梗塞の典型的な症状は、胸の痛みですが、元来胸痛にはいろいろな原因があります。皆さんは胸が痛むと心臓の病気をすぐ連想すると思いますが、肺の病気や神経痛など他の原因のことも多々あります。心臓由来の胸痛というのは、胸のまん中の締めつけられるような痛みです。、心臓は胸骨の裏側にありますので、患者さんがしばしば「先生、心臓ではないんですが真ん中が痛むんです」と言う場合は逆に心臓病を疑わなければなりません。また、しばしば胃潰瘍と間違われて、みぞおちが痛いと言う方も中にはいらっしゃいます。胸が締めつけられ、持続時間は比較的短く、身体を動かした時に生じる(ただし、冠攣縮狭心症というタイプは早朝安静時に起ります)、そのような場合は狭心症が疑われます。一方、胸が締めつけられるような症状が、長時間続く場合、また冷や汗やめまいを伴ったりする場合には心筋梗塞が疑われます。稀にこのような症状が全くない、無痛性の心筋梗塞というものもあります。
もう一度申し上げますと、狭心症、心筋梗塞では、胸の真ん中が締めつけられるような痛みが生じ、しばしば冷や汗や吐き気を随伴します。
心臓病を疑った時に、すぐ心臓専門の病院に行かなければならないかというと、そうではなくて、まず最寄りの病院で症状についてお話いただくだけで、かなりの場合心臓病かどうか診断することが可能です。胸の痛みが性状がどうか、どこが痛んで、どのくらいの持続時間か、冷や汗やめまいなどの随伴症状はないかなどの問診により心臓病かどうかの見当がつきます。
具体的に、心臓病が疑われた際にまず行う検査は心電図、レントゲン、血液検査です。そのうえで専門的な検査や治療、カテーテル検査、治療が必要になれば専門の病院へ移っていただくことになります。
狭心症、心筋梗塞は生活習慣病のひとつとして位置づけられています。生活習慣病といいますのは、遺伝や環境因子といった自分の力ではどうにもならない因子ではなくて、食習慣、喫煙習慣、運動習慣といった自分の生活習慣が関わって病気を発症するものをいいます。逆に言いますと、生活習慣に留意することにより病気を予防できるということです。狭心症、心筋梗塞の危険因子の中で高血圧、高脂血症は食事の影響がありますし、糖尿病、肥満も食生活、運動が関係してきます。喫煙、ストレス、過労も生活習慣が関係しています。このように、心臓病の危険因子のかなりの部分が生活習慣に関係しています。
高血圧について
危険因子の中で高血圧の話を少しいたします。かつては上(収縮期血圧)が160以上または下(拡張期血圧)が95以上を高血圧と定義しておりましたが、この診断基準は最近より厳しくなりました。
表7 成人における高血圧の分類 分類 収縮期血圧 拡張期血圧 至適血圧 <120 かつ <80 正常血圧 <130 かつ <85 正常高値血圧 130〜139 または 85〜89 軽症高血圧 140〜159 または 90〜99 中等症高血圧 160〜179 または 100〜109 重症高血圧 >=180 または >=110 収縮期高血圧 >=140 かつ <90最近の日本のあるいは世界の血圧の学会で提唱されている基準を示しますが(表7)、正常血圧は上が130未満かつ下が85未満になっています。至適血圧は上が120未満かつ下が80未満です。上が130から139、下が85から89は正常高値ということで、正常範囲でありながら注意を促されています。さらに、高血圧は軽症、中等症、重症高血圧と分けられ、昔に比べてより細かく分類されています。
一般的な降圧目標は、中高年の方や若年の方、そして糖尿病のある方は130/85未満が目標値と推奨されています。ただし、高齢者の方は、無理に血圧を下げると臓器の血液の流れが悪くなるかもしれないということで、至適血圧基準がやや緩く、血圧の目標値は、上は140から160未満、下は90未満とされています。
高血圧の危険因子のひとつに、塩分の過剰摂取があります。塩分摂取量は昭和62年頃まで減少していました。一日13gから 11gぐらいまで下がりましたが、最近また13gまで増加傾向にあります。これは、外食産業やコンビニが増えて、塩分の多い加工品が多くなったためと言われています。高血圧の方が病院に入院しますと、通常塩分7g程度に制限されますが、塩分制限は日本人にもっと必要ではないかと言われています。
血圧の危険因子ということでまとめますと、塩分、肥満、ストレス、喫煙、アルコールが挙げられます。アルコールはまた後でお話しますが、毎日飲んで大量に摂取すると血圧を上げる働きがあります。また加齢の因子や遺伝因子も関係します。