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心臓と不整脈
(5−2)
不整脈の診断に必要な検査、治療
表3 不整脈の原因となる疾患狭心症
心筋梗塞
心臓弁膜症
心筋症
高血圧性疾患
内分泌疾患など不整脈は、24時間単位で心電図を記録しますと、かなりの人に認められます。ここで、放置していいものとしっかり治療すべきものの鑑別のポイントは、心臓病が潜んでいるかどうかになります。不整脈を起こす病気としては、狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症、高血圧性心肥大、内分泌疾患などがあります(表3)。これらの病気を持っている方すべてに不整脈があるというわけではないのですが、不整脈を有する場合、治療を考慮する必要があるということです。
表4 不整脈に必要な検査心電図
胸部レントゲン写真
心エコー検査
運動負荷心電図検査
ホルター心電図検査
心臓カテーテル検査など不整脈の患者さんにどのような検査をするかといいますと、心電図やレントゲン検査の他に、心エコーで心臓の病気の有無を検索したり、24時間心電計や運動負荷心電図で不整脈の程度を調べます。そのような非侵襲的的検査で心臓そのものの異常が疑われる場合には、心臓カテーテル検査をする場合もあります(表4)。
不整脈はたまにしか出ないということがよくあります。夜中や朝方の限られた時間にしか出ない場合もあります。そのような場合、ホルター心電図という持続型の心電図計による検査をいたします。
この検査では心電図をつけたまま、まったく普通の生活をしていただきます。そして日記に症状を記載していただいて、あとで症状と心電図を照らし合わせることができます。不整脈だけではなくて狭心症の検査としても有用です。
表5 不整脈の治療基礎心疾患はあるか?
症状はあるか?
無症状でも、、生命予後に関係する場合は要治療
心房細動(心房粗動)は要治療不整脈の治療が必要かどうかということをまとめます(表5)。基礎心疾患があるかどうか、生命予後に関係するかどうかということが重要です。心臓病がなく、不整脈の程度が軽く、症状がない場合、心房細動の場合を除き通常経過観察となります。心臓病が存在する場合、不整脈の存在が生命予後と関係する場合、心臓病がなくても症状が強い場合には治療を行うことになります。先程言いました血栓の原因になる心房細動(粗動)という不整脈には、血栓予防の薬を飲んでいただいて、脳梗塞を予防するということが非常に大事になってまいります。
不整脈の治療の目標は、日常生活上の不都合(動悸があるということで不安になったり、旅行先で支障を来すというような不都合)からの解放と、不整脈による合併症(脳梗塞など)の予防、生命予後の改善ということになります。また最近、薬物療法以外に、不整脈の根源をカテーテルで焼灼する治療法も一部の不整脈に対して応用されるようになってきました。さらに人工ペースメーカーに加えて、除細動機能のついたペースメーカー(埋め込み型除細動器)も開発され、重症不整脈に対し用いられています。
表6 不整脈の誘因アルコール
カフェイン
喫煙
過労、寝不足、ストレス
過度の運動不整脈の誘因として多いのはお酒と睡眠不足、過労、ストレスです。この中でも多いのはお酒のようです。お酒を飲んだ時、あるいは飲んだ次の日に不整脈は起りやすく、お酒は控え目にすることが大切です。ほかには、お茶やコーヒーのカフェインも大量に摂りますと誘因になる場合がありますし、過度の運動が原因になる場合もあります(表6)。
不整脈を予防するには、タバコ、コーヒー、お酒などに注意し、規則正しい生活を心がけて下さい。
生活習慣病とは
次に今日のもうひとつの主題であります「生活習慣病」についてお話させていただきます。最近の日本の死因を示します。1980年くらいまでは脳卒中が非常に多かったのですが、公衆衛生の普及で塩分が控えられ、高血圧治療も強化されたため脳卒中は減ってきました。逆に食生活の欧米化でコレステロールが上昇し心臓病が増えてきました。最近では心疾患は横ばいから低下してきておりまして、高齢化社会とともに癌が第1位になりました。第2位と第3位は減っていながらも、心臓病と脳卒中で、生活習慣病ということになります。
動脈硬化を原因とする病気を心血管病といいます。狭心症、心筋梗塞、脳出血、脳梗塞、腎硬化症、閉塞性動脈硬化症、動脈瘤、高血圧性眼底などがこれに相当します。
動脈硬化という言葉をよく耳にします。その本体は高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などにより、血管の内皮が障害され、血管の内膜が肥厚し、血管壁の伸展性が障害され、結果として血液の流れが悪くなる現象です。