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NO.17 |
心臓血管病と薬の正しい知識を得るために
(7−6)
経口糖尿病薬だけでも数多くあります。1番良く使われる薬であるスルホニルウレア剤でも、その作用は非常に軽いものから強いものまであります。その患者さんの重症度に合わせて使い分けをしています。例えば、経口糖尿病薬の中で1番強いグリベンクラミドという薬がありますが、これは3錠(7.5mg)まで使ったらそれ以上はもう使いません。カロリーをまもり、生活習慣を改善してもなお、この量で糖尿病が良くならない人はインリンに切り替えます。生活習慣の改善や薬にも限界があります。しかし、食習慣、生活習慣の管理は常に必要で、これがうまくいけば、同じ経口薬やインスリンでも、より少ない量で、きちっと治療できます。逆に、食習慣、生活習慣をうまくコントロールできない人は、薬の効きが悪く、治療がうまくいきません。最近は非常に良い薬も出でています。インスリンの分泌が早く、また副作用のすごく少ないタイプのものもあります。ですから軽症の患者さんにも対応できる薬の種類が増え、それぞれの患者さんに合った薬の種類と量を考えて使用します。また病態によって増やさざるを得なかったり、逆に良くなれば減らすこともできす。ですから、「1度飲んだらもう一生飲まなきゃならないからイヤダ」と病気を放置することは、ますます病気を悪化させ、取り返しの付かない合併症(重症の心血管病、脳血管障害)を引き起こします。生活習慣の改善や病気の重症度によっては、インスリンや経口薬から離脱できることもあります。環境因子で状況を悪くしているものがあれば、それを是正すれば病気は管理しやすくなって、薬も弱いものに代えられ、錠数も減らせます。インスリンも止めて経口薬に代えられるし、経口薬の人は運動と食事だけで良くなることだってあります。そういうことを理解していただきたいと思います。
次ぎに、コレステロールのお話をします。いわゆるコレステロールと言って皆さんが理解しているのは、「総コレステロール」というものです。値として一番良い(将来の生活習慣病の発症が少ない)のは200 mg/dl以下ですけども、最近の基準では220 mmHg以下、もしくはもう少し緩めて240mmHg以下となってきています。高コレステロール血症(高脂血症)の定義は、この値以上となります。また、悪玉コレステロールであるLDLコレステロールの場合は、140mg/dl以下の場合を正常と定義されます。ただしこれも1回の検査では決めません。前の日にジンギスカン食べたら次の日には高くなりますから、前日普通の食生活をしたうえで、検査日は空腹時で測定するのがより正確です。やはり、遺伝因子は関与することがあります。ことにコレステロールが高い家系というのがあります。もし、ご両親、あるいはおじいさん、おばあさんでコレステロールの高い(総コレステロール300 mg/dl以上)方がいたら、お子さんやお孫さんは遺伝的に高脂血症になりやすい体質である可能性があります。でも、これも糖尿病や高血圧と全く同じで、必ずなるというものではありません。やはり環境因子、生活習慣が重要です。
それから全く違う病気から2次的にコレステロールが高くなる病気もあります。例えば、副腎皮質ホルモンの服用、ネフローゼという腎臓の病気、甲状腺の機能低下症、肝臓の病気があります。自己免疫疾患という、とても特殊な病気ですけど、これもあります。ネフローゼとか自己免疫疾患を治すために副腎皮質ホルモンという薬を使用しますが、その副作用でもなります。ですから、同じコレステロールが高い人でも、何か原因があるかないかということを考える必要があります。原因がわかれば、それを直せば治るわけです。コレステロールが高いからすぐ薬ということにはなりません。先ず原因検索のうえ、適正なカロリー、運動など生活習慣を是正してもらう、そのうえで薬物治療を行うかどうかを決めます。
最近いい薬が開発されました。ちょっと難しい言葉ですが、HMG-CoA還元酵素阻害薬といいます。簡単に言うとコレステロールを作る酵素を抑える薬で、肝臓の中でコレステロールを作る作用を抑えます。この薬は、一般に非常に強力な薬ですが、やはり弱いものから強いものまであって、患者さんに合わせて使います。リブラート系の薬というのは中性脂肪を下げます。ですから、総コレステロールが高い人、それから中性脂肪が高い人、両方とも高い人、いろいろなタイプがありますが、その患者さんに合った薬を使い分けます。いずれも、筋症状に注意し、とくに高齢者、腎障害者には慎重な配慮が必要です。
治療目標は、先程も言ったように、総コレステロールで220 mg/dl以下、LDLという悪玉コレステロールで140mg/dl以下です。ここに「冠動脈疾患がない」とか「その他の危険因子がある」とあります。これはどういうことかといいますと、おなじ高脂血症であっても、すでに冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)になった患者さんでは、そうでない患者さんよりも、より厳密に治療します。これは、再発予防のためです。目標として、普通の健康な方で単にコレステロールが高い人は総コレステロール220 (あるいは240mg/dl)以下に、糖尿病合併、喫煙者、高血圧合併、肥満・運動不足の人は200mg/dl以下に、さらに冠動脈疾患がすでにある人はさらに180mg/dl以下と厳しくします。だから、その患者さん患者さんによって目標値が違うと言うことも覚えておいて下さい。
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