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NO.17 |
心臓血管病と薬の正しい知識を得るために
(7−4)
薬を決めるには合併症や危険因子などを考慮
これはちょっと細かいので申し訳ありません(図5)。アウトラインだけ分かっていただければ結構です。例えば高血圧の患者さんを診たら、いきなり薬を使うかというと、そういうことはありません。基本的に患者さんの高血圧の重症度に加え、合併症といって、どういう病気を他に持っているか、その重症度を考えて、まずライフスタイル、生活習慣を修正してもらいます。そして目標となる140/90mmHg以下になれば、そのまま薬なしで治療を続けます。もし目標の140/90以下にならなかった場合、腎臓病があるとか、以前心筋梗塞を起こしたとか、脳卒中になったとかいう方には、その併発した病気も考慮したうえで、数多くある薬の中から適切なものを選ぶわけです。最終的にこの目標血圧に到達した場合はいいですが、もし目標に到達しなければ、新たな薬をつけ加えるか同じ薬を増量するということを考えます。だから、高血圧の治療薬を2〜3種類飲んでいる患者さんもいると思います。それはどのような合併症があるかということに関係しますし、いろいろな組み合わせで、副作用が無く最大の効果がでるように考えて使います。血圧そのものを正しく目標値まで下げないと、せっかく下げても病気を予防する価値が少なくなりますし、無駄にもなります。薬の十分な効果を得るためには、薬を正しく安全に飲んでもらえるよう、数、種類、患者さんの身体状況、危険因子などを考えて薬を処方します。
高血圧の治療で最初にでてくる"生活習慣(ライフスタイル)の適正化"とは何かと申しますと、これは先程言ったひとつひとつの危険因子を是正すると言うことです。例えば、肥満があれば、さきのボディー・マス・インデックスを26.4%以下になるよう、体重をコントロールする。可能なら毎日30〜40分間、少し早い歩き方で歩くようにする。「ほぼ毎日」と書いてあるのは、運動効果というのは3日ほどで消えてしまいますから週2〜3回以上は行う。「すごく忙しいから普段は出来ない、だから週1回5時間やろう」というのは、けがのもとですし、逆効果になります。決していっぺんでやろうと思わないで下さい。毎日つづけてできる、あるいは1日おきでも良いから、継続できることがとても大事です。今日どうしても出来なかったら、明日やれば良い。でも2倍やる必要はありません。平地歩行が良く、軽く汗をかく程度、30〜40分、同じ運動量を守り、階段や坂道はなるべくさけ、無理なくけがをしない、そんな運動量が最適です。健康のための運動というのは、毎日できること、つまり翌日まで疲れを残さない、自分の最大運動能力の60%位で、自分にあった運動です。
適量のアルコールは善いコレステロールを増やす、と言いましたが、適量と言うのは大体アルコール量で30mlくらい。よく分からないかも知れませんが、例えばビールだったら350〜500ccくらい。日本酒だったら2合以内、ワインでもグラス2杯以内、(300cc)。それから塩分は先ほども述べましたが、ここでは6g。日本人は平均16g食べていますから、せめて半分にはしたいところです。
カリウムは血圧を下げる作用があります。お年寄りでは体のカリウムが減ってきます。カリウムは体の中から欠乏すると心臓が止まり、筋肉が痺れるため、とても大事なものです。カリウムが多く含まれる食品は、野菜・果物です。ですから野菜・果物を多く食べましょう、ということです。大腸癌の予防にもなるし、ビタミンCも入っているし、美容にも良いということになります。逆に、腎臓の悪い方は注意してください。腎臓機能の悪い人、とくに腎不全という病気ではカリウムが高くなってしまいますから、そういう人はカリウムをむしろ制限します。そうでない人、普通の腎臓の働きの方であれば、野菜・果物を食べてカリウムを摂ったほうが良いということです。そのために薬を飲む必要はありません。あくまでも普通の食品から摂って下さい。
カルシウム、マグネシウムは、日本人は欧米人よりも圧倒的に少ないものです。だから、骨粗鬆症("こつそしょうしょう"と読む)って聞いた事があると思いますけれど、骨がもろく折れやすくなる。寝たきり老人の原因として足の骨折がとても多いですけど、その原因にもなります。日本人はもっともっとカルシウム、つまり牛乳、ヨーグルト、チーズを摂らなければなりません(念のため、これらは最近話題の狂牛病の原因には全くなりませんので安心してください)。日本人の食習慣に昔はなかったものですから、どうしても欧米人より少ない。牛乳アレルギーがない限りは色々な方法で工夫して取ることも有効です。例えばシチュウ、カレーライス、グラタンなどに使うなど、工夫してまた意識してカルシウムを摂る習慣をつけて下さい。特に閉経後の女性はこれが急激に減ってきますから、50歳を過ぎた女性は、カルシウムをそれまでよりも2倍くらい多く摂るつもりで頑張ると、骨粗鬆症を防ぐことができます。ちなみに魚の小骨は吸収が悪いですから、無駄とは言いませんが、溶けたカルシウム(乳製品)がより有効です。飽和脂肪酸、コレステロールを制限することも重要です。赤みの肉類、脂っぽいもの、動物性脂は避けるということです。
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