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講演  No.77

血管の老化(動脈硬化)を予防する生活習慣

(2/2)


札幌医科大学循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座
教授 古橋 眞人氏



 次に脂質異常症です。中性脂肪が高い場合、悪玉のLDLコレステロールが高い場合、あるいは、善玉のHDLコレステロールが低い場合、これらをなどを脂質異常症と言います。血管内にコレステロールなどの脂質がたくさんあると、そこに脂のかたまりであるプラークが溜まり、血管が細くなってしまいます。特に細くなっているところは壁が脆弱化して破れやすくなっています。そこが破れると出血を止めるために血栓ができて、その血栓が血管を詰まらせて、その先に血流がいかなくなる状況になります。これが心臓で起これば心筋梗塞、脳で起これば脳梗塞になるわけです。

 コレステロールに関しては、一つ紹介したい病気があります。家族性高コレステロール血症という病気で、生まれながらにコレステロールが高く、200人に一人くらいの割合でいることが報告されています。親のどちらかが家族性高コレステロール血症であると、2分の1の確率で遺伝します。家族性高コレステロール血症が無治療で放置されると30代、40代の働き盛りに心筋梗塞になって急死したり、心筋梗塞の後に心不全になり日常生活が大変になったりします。平均寿命(平成25年)が男性80歳、女性86歳のときに、家族性高コレステロール血症患者の死亡年齢を調べると、なんと男性63歳、女性72歳で、15歳ぐらい差がありました。今はコレステロールを下げる良い薬がありますので、その薬を飲むことで15年の予後を改善できる可能性があります。早めに診断して治療でコレストロール値を正常化することが重要となります。

 次に糖尿病です。日本では糖尿病の疑いを合わせると約2,000万人いると言われています。糖尿病の死亡時の年齢は平均寿命より約10歳低いことが報告されています。死亡の原因に関しては、悪性腫瘍、動脈硬化関連疾患が少し増えて、さらに感染症も増えることが知られています。1型糖尿病はインスリンを作る膵臓の細胞が壊れてしまうことで起こる病気で、多くは小児から思春期に起こります。ウイルス感染が主な原因ですが、一部自己免疫性の疾患でなることがあり、一般的には肥満とは関係ありません。治療はインスリンによる薬物療法、食事療法、運動療法となります。2型糖尿病はインスリンの量が少なくなる、あるいはインスリンが膵臓から出ているけれども効きが悪くなっている状態で、40歳以上で肥満がベースにあることが多く、治療は食事療法と運動療法が大原則となります。効果が不十分な場合は薬物療法で補うことになります。治療の目標値は、合併症予防のためにヘモグロビンA1c7%未満となっています。正常は6%未満ですが、6%未満を目指そうとすると低血糖を起こすことがあり、低血糖は高血糖と同じくらい悪いため、通常で7%未満となっています。

 食事に関しては、減塩食、飽和脂肪酸やコレステロールを減らし、体重をしっかり是正し、お酒も節制することが重要です。

 運動はできれば毎日続けることが重要です。いきなり5〜10キロ走るのは大変なので、毎日歩くところからスタートして、可能であれば少しランニングをするのもおすすめです。また、プールに行って泳いだり、泳がなくても、そこで歩くだけでも全身の運動になります。いろいろ工夫をして運動をする習慣をもつのが良いかと思います(図2)。

 最後に喫煙についてお話します。喫煙本数が増えれば増えるほど動脈硬化関連疾患や突然死の頻度が高くなるのはご存知かと思います。タバコを吸っている人は絶対禁煙が必要です。百害あって一利もないので禁煙してください。タバコを1本でも吸うとリスクになります。5本で少し上がり、20本でさらに上がるわけです。すでに吸っている人も諦めないでください。禁煙して1年〜5年で徐々にそのリスクが下がってきますので、禁煙し続けることが重要です(図3)。もう一つ強調したいのは、吸っている人だけに害があるのではなく、周囲の人への副煙流の問題があります。白い煙の中にはいろいろな有害物質が含まれているので、近くにいる大切な家族の人にも悪影響を及ぼしてしまうことになります。加えて、最近出てきた加熱式のたばこについては、煙はあまり出ませんが、特殊なカメラで見るとたくさん煙が出ていることがわかります。これも止めた方が良いかと思います。

 本日は、血管老化の5大原因を断つということでこの5つについてお話しました。ぜひ「太っている」ダビデやヴィーナスでなく、ちゃんと「痩せている」ダビデやヴィーナスになって健康寿命を伸ばしていただきたいと思っております。

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  講演   すこやかハート
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