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No.70 |
心不全ってなんですか?
(3/5)
安斉 俊久氏
北海道大学 大学院 医学研究院 循環病態内科学教室 教授
喫煙は精神的ストレスよりももっとひどい酸化ストレスを増加させ、心血管の障害を助長します。また、たばこの煙には多くの毒性物質が含まれており、その中の一酸化炭素は赤血球のヘモグロビンと結合すると、酸素の運搬機能を低下させます。
また、ニコチンの作用で血圧が上がったり、心拍数が上がって心臓の負担が増えるので、たばこは百害あって一利なしです。必ず禁煙してください。北海道は喫煙者が非常に多いので、本当に注意してください。
心不全の症状が出るきっかけとして感染がよくあげられます。たかだか風邪と思うでしょうが引いただけで、熱がでて、全身の代謝が亢進し、その分、心臓からたくさん血液を送り出すので、心臓の仕事量が増加します。それが心不全の発症の引き金になります。感染を防止するのは毎日のうがい・手洗い、また心不全の方は、インフルエンザワクチンを必ず受けることを勧めます。
ここまで心不全の発症をどうしたら予防できるかいろいろ説明をしましたが、一番大事なのは早期に発見することです。
心不全の症状を大きく二つに分け示します(図5)。一つは、血液を送り出せなくなることによって起こる症状。もう一つは、血液を十分に受け取れなくなるうっ血によって、体の中に体液が滞る症状。![]()
血液を送り出せない症状としては、まず坂道や階段での息切れが挙げられます。
つぎに腎臓に流れる血液が低下するので、日中の尿量やトイレに行く回数が減ります。
最後に手足に十分な血液が流れないので、手足が冷たくなり、ひどくなると、全身の倦怠感が生じてきます。
では、うっ血するとどうなるか。まず、体重がどんどん増えていきます。1週間で3キロ、あるいは、1日で1キロ以上増える。そういった場合は、多くの場合、水、体液が増えてるという背景があるので、日々体重をはかることが一番大切な自己管理です。
足のむくみもうっ血の症状ですが、夜間に横になると足の血管の外側にたまった体液が血管の中に徐々に戻ります。すると、戻った血液が腎臓にも流れていくので、夜中になると急にトイレに行きたくなるのは心不全の兆候かもしれません。
うっ血すると、腸とか肝臓がむくむので、消化吸収が悪くなり食欲がなくなります。
このほか、特徴的な症状として、夜中になると、呼吸困難を起こすという現象があります。発作性夜間呼吸困難というもので、心不全の診断の中で、唯一、心不全はほぼ間違いないと言われるような症状です。「心不全は夜悪くなる」というのは、覚えやすいかもしれません。
心不全は、今のような症状で見つける以外に、心電図、レントゲン、最近、血液検査でBNPというホルモンを調べる方法が出てきました(図6)。![]()
これらの方法で心不全かどうかは大体診断がつきますが、原因をより詳しく調べるために、その原因が心筋梗塞なのか、弁膜症なのか、高血圧なのか、心筋症なのかを調べる心臓の超音波検査やCT、MRI、核医学検査などを行います。運動して息切れが起こるような方には、心肺運動負荷試験があります。
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