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糖尿病と心臓病のつながり
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三浦哲嗣氏
札幌医科大学 循環器・腎臓・代謝内分泌内科学 教授
このように、糖尿病は動脈硬化を促進させますが、そのほかに加齢、高血圧、コレステロールの異常、そして慢性腎臓病なども促進させる要因となります。
糖尿病や高血圧が腎臓を悪くしますが、腎炎の後遺症で腎臓が悪くなった人でも慢性腎臓病が動脈硬化を促進することがわかってきました。
困ったことに糖尿病に高血圧と両方の危険因子を持っている場合、また、脂質異常と高血圧を持っている場合、脂質異常と糖尿病、糖尿病と三つとも持っている場合など危険因子が重なっている患者が少なくありません。危険因子が糖尿病だけの人に比べて、糖尿病と高血圧、あるいは糖尿病と高血圧と脂質異常といったように、危険因子が重なれば重なるほど、脳卒中や心筋梗塞の危険が高まります(図4)。最近では、ここに慢性腎臓病が加わっているので、健康診断や通常の内科診療でも、これが幾つぐらい重なっているかということが患者さんの管理上は非常に重要です。
では危険因子が重なる背景には、内臓肥満、運動不足、過食、ストレス、遺伝的な要因が潜んでいます。それがインスリン抵抗性をもたらしほかの要因と相まって糖尿病になる。あるいは高血圧になると中性脂肪が上がったり、HDLが下がる、いわゆるメタボリックシンドロームの共通な原因はこういうところにあります。
次に、心筋梗塞についてお話ししたいと思います。先ほどのえのきの「き」とは虚血性(きょけつせい)心疾患のことです。虚血というのは、臓器に血が十分に行かない状態のことで、心臓の虚血の場合は狭心症と心筋梗塞に分かれます。心臓に血液を送っている血管を冠動脈と言います。左側に1本、右側に1本ありますけれども、この血管が動脈硬化によって狭くなって、うまく血液が流れなくなるのが狭心症です。冠動脈の中に血栓がついて、血流がとまってしまって、ここから先に流れなくなってしまうのが心筋梗塞の原因です。
狭心症や心筋梗塞の症状をぜひ覚えていただきたいと思いますが、狭心症の場合は、階段を急いで上がるなどの運動をしたときに、数分間、胸が痛くなって、動けなくなることがあります。あるいは、明け方、トイレ、洗面にたったときに胸の痛みが起こることがありますが、その痛みの長さは数分間というのが狭心症の特徴です。
心筋梗塞の場合は、安静時とか運動時とかに関係なく、突然、激しい胸痛が起きて、15分ぐらい続きます。それだけではなく、何となく不安になったり、動悸になったり、冷や汗が出たりということが起こります。この胸の痛みは、胸の真ん中から左側で、肩に響くようなこともありますが、基本的には胸の真ん中を中心とした症状が出ます。
このように、狭心症や心筋梗塞というものが糖尿病ではふえますが、もう一つ、心不全も糖尿病による問題の一つです。