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No66 |
健康長寿への男女共同参画のすすめ
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長谷部直幸氏
旭川医科大学 内科学講座 循環・呼吸・神経病態内科学分野 教授
きょうは、健康長寿ということを男性も女性もみんな一緒に考えてみたいと思います。
日本の100歳を超えた方のデータを見ると平成元年は3,000人だった百寿者が、現在は67,800人と大変増えました。もう100歳は当たり前の時代が来ようとしていることです。これを男女別にすると9割は女性で59,000人、男性はわずか8,100人と少ないながら頑張っています。
老後とは一体いつからかというと、男性は一般的に定年退職後が老後といえますが、女性は、主婦の皆さんに定年はないので一生現役です。百寿者であれほど差がでる理由のひとつと思います。
これまでは65歳を超えた方を高齢者としてきましたが、お元気なお年寄りがたくさん増えて、もうそぐわないのではないか、75歳からを高齢者と呼んでいいのではないかということで、来年から高齢者の定義が変わろうとしています。そうすると、従来、高齢者と言っていた65歳は准高齢者と呼ぶことになります。
高齢者としてはまだまだひよっこだから自主的社会参加を促す、つまり、なるべく働いて税金を納めてくださいということで、なかなか楽はさせないぞという定義かと思います。90歳を超えると超高齢者という呼び方に変えようとしています。![]()
さて、本日のタイトルにも取り上げた健康寿命(図1)と平均寿命との間には時間差があります。男性の健康寿命は71歳、平均寿命は81歳だから、約10年の開きがあり、女性は74歳と87歳だから13年の開きがあります。つまり、この間に何らかの問題が起きる可能性があることを示しています。これが、今、我々が何とかしなければならない一番の問題だと思います。目指せ健康長寿ということを我々は真剣に考えていかなければなりません。
今世紀の初め、有名な医学雑誌に、21世紀にはアメリカ人の平均寿命は短くなるだろうという論文が出てきて、その理由は肥満が増えるからだという趣旨でした。実際、アメリカ人の肥満度はどんどん上がっていて、平均寿命は短くなっているというのがデータで示されています。いずれ日本もその後を追うのではないかといわれています。
肥満、特におなかの入れ物の中にある内臓肥満があると、高血圧や糖尿、脂の処理がうまくいかず、動脈硬化がどんどん進みます。動脈硬化とは、頭のてっぺんから足の先まで張りめぐらされている水道管のような動脈がだんだん固くなって目詰まりしやすくなることです。その大もとにある肥満の問題を解決するためにメタボリックシンドロームが大きく取り上げられました。
日本人の肥満の現状はどうなっているかというと男性は年代別で見ると年齢が上がれば上がるほど右肩上がりで肥満が増えております。
それに対して女性は違っており、20代は右肩下がりになっています。どんどん痩せているわけです。確かにまちの中を見ていても、スマートな女性がどんどん増えているなという感じがいたします。あのジーンズをどうやってはいたのだろうというのが不思議なぐらいの折れそうな足をしておられる女性を見かけたりしますけれども、そういう女性がどんどん増えて、痩せていっているわけです。しかし30代は横ばい、さらに40代になると、もういいやという感じで右肩上がりになり、50代、60代はどんどん肥満に向かっています。
この肥満というものが高血圧に与える影響は20代から30代では男性よりも女性のほうが高血圧になりやすいというデータがあります。
肥満の実態を表現するイメージとしておなかの輪切りをよく見かけますが、おなかの入れ物の中にある脂が内臓脂肪と言います。このおなかの入れ物の外側のつまめる脂を皮下脂肪と言います。これがたくさんたまっている方と、中にたまっている方、つまり内臓脂肪蓄積型と皮下脂肪蓄積型です。これはどちらも脂がたまっていて肥満ですが、おなかの入れ物にたまっている脂のほうが生活習慣病と関係が深いことがわかってきました。
この内臓脂肪と皮下脂肪を貯金に例えると、内臓脂肪は普通預金、皮下脂肪は定期預金と言われます。その意味は内臓脂肪は崩しやすいから普通預金、皮下脂肪はなかなか崩せないので定期預金なのです。つまりダイエットをすると皮下脂肪、つまめる脂ですがこれはなかなか減りません。一方おなかの中の入れ物の脂はどんどん減ります。これは見かけにこだわらずダイエットの努力はすべきだということを教えています。
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