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No64 |
心疾患と運動
(8/9)

絹川真太郎氏
北海道大学大学院医学研究科 循環病態内科学講師
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スポーツにおける年代別、種目別の突然死は、若い人はランニングや水泳などで多くみられ、中高年になるとランニングとゴルフです。そして、高齢者になるとゴルフやゲートボールのときに起こることが報告されています。(図8)ただ、スポーツ全体で考えると、必ずしも多い発生頻度ではありませんので、過度に心配する必要はありませんが、自分の健康状態をチェックしておく必要があります。
では、年代別のスポーツ競技における突然死の原因ですが、若い人は心臓の壁が厚くなっている肥大型心筋症という病気が多く、年齢が高くなると冠動脈の疾患、虚血性心疾患、心筋梗塞が非常に多いということです。
もう一つ、心臓しんとうという状態があります。これは、心臓突然死の原因の一つで心臓に既往症のない健康な人、特に子どもが多く、前胸部に衝撃を受けた直後に昏倒し、心停止が起こることがあります。心臓しんとうというのは、疾病ではなく、胸郭が未発達な子どもに発生する外傷性の心停止です。もともと心臓に病気がなくて発生すると言われます。
例えば、子どもの前胸部にボールなどが当たり、軽い衝撃を受けたときでも起こり得ると言われています。心臓が拍動しているリズムの中のあるタイミングで衝撃が加わったとき、特に、野球やソフトボールなどの球技で起こることが多いのです。子ども同士のボール遊びの最中でも起こり得ることが知られています。
心臓しんとうの一例ですが、2007年の高校野球地区大会予選のときに、飛翔館高校2年生の投手が左胸に強烈なライナーを受けて前のめりに崩れ落ち、監督やお父さんが呼びかけても応じない状態になりましたが、たまたま観戦していた消防士、救命救急士が心肺停止状態と判断して心臓マッサージを始めました。これが非常に大事なことです。
2007年ですから、もうAEDがあったわけで備えつけのAEDをマウンドに搬送し、心臓マッサージを続けながら、AEDの電気ショックで心拍が再開したということです。そして、119番通報した救急隊員が駆けつけたときにはもう意識を戻していたということがありました。
心臓しんとうというのは、球技でなることが多いのですが、このほか兄弟げんかや夫婦げんかの仲裁などにも気をつけていただきたいと思います。
突然死の完全な予防は難しいのですが、定期的なメディカルチェックを受けることが大事です。健康状態、体力、環境条件、体調に応じた運動、適切な水分補給、ウオーミングアップとクーリングダウンの徹底が重要で、いろいろな症状を感じたら、すぐに中止しましょう。それで、心停止が起きたら、直ちに周りの人が駆けつけて心肺蘇生をすることが非常に大事になります。
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