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講演  No60

レジェンドジャンパー葛西紀明 努力と健康管理で掴んだ銀メダル

(3/8)


鈴木 章氏

葛西紀明氏
土屋ホームスキー部監督兼選手



 ただ、初めてのオリンピックですので、相当なプレッシャーがありました。やはり、プレッシャーに押しつぶされて、V字もうまく開くことができず、多分、片仮名の「レ」みたいな感じになっていたと思います。こんな何が何だかわからないまま終わってしまったオリンピックがアルベールビルでした。
 その2年後にすぐオリンピックが来ました。本来、オリンピックは4年に一度ですが、夏と冬のオリンピックを2年置きに交互にやるという調整があり、94年にノルウェーのリレハンメルオリンピックが来ました。僕は、この2年分を得したなと思いました。リレハンメルに行くときには、日本チームのレベルが非常に高くなってきて、ほぼ世界のトップに立てるぐらいのレベルまで上がっていました。92年の悔しいオリンピックがあったので、ぜひメダルをとりたくて、リレハンメルオリンピックに向かいました。その理由として、妹のためにという思いがあったのです。
 私の妹が16歳の高校1年生になった年に、学校の血液検査にひっかかりました。何か難しい病気かもしれないということで旭川の日赤に行きました。調べたところ、再生不良性貧血という白血病に似た病気でした。これは、移植をしなければ治らない病気と言われ、10万人に1人ドナーがいるかどうかというものなのですが、ドナーは見つかりませんでした。しかしその後、臍帯血移植という治療法が見つかり移植を受けて、いろいろな副作用はありましたが、妹は元気に生きています。
 その妹のために、リレハンメルオリンピックで金メダルをとって、金メダルを煎じて飲ませたいという強い気持ちを持って挑みました。
 そんなリレハンメルオリンピック、個人戦では、ノーマルヒルで5位入賞、ラージヒルは13位か14位でした。迎えた団体戦、日本チームの総合力もすごく高く、これはメダルがとれるぞというレベルまでになっていました。メンバーは、1番手に西方仁也さん、2番手に僕の先輩の岡部孝信さん、3番手に僕、4番手に原田雅彦さんということで挑みました。
 1本目は、みんなK点120メートルを越えるいいジャンプをして、そして2本目は、西方仁也さんが135メートルの大ジャンプをしました。岡部さんも133メートルの大ジャンプです。僕は、ちょっと緊張して失敗したのですが、何とかK点の120メートルです。そして、最後に原田さんにアンカーを託して僕ら3人が下で見守っていたのですが、滑ってきてぱっと飛んだ瞬間、成功したか失敗したかが大体わかります。原田さんが飛んだ瞬間に、3人は口をそろえて「あっ」と言いました。これはまずいと思いました。ただ、2位のドイツに50ポイントの差をつけていました。これは99%ひっくり返されることのないポイントです。メートルにすると40メートルぐらいでしょうか。原田さん、1本目、122メートル飛んでいます。105メートル飛べば金メダルです。僕らは、ほぼ金メダルを手にしていました。これでやっと妹に見せられると思いました。
 ところが忘れもしません、原田さんは97. 5メートルで落ちてしまったのです。その原田さんが滑りおりてきて、ブレーキングトラックで、頭をずっと抱えていました。次に飛んだドイツの選手は、135メートルの大ジャンプで、テレマークもぴたりと入れまして、99%はひっくり返されることのないポイントを、残りの1%でドイツチームに大逆転されて、日本チームは銀メダルに終わってしまいました。
 僕ら3人は外でずっと待っていましたが、原田さんは、頭を抱えたまま、なかなか帰ってきません。しかたなく原田さんのところに歩み寄って、「原田さん、日本チームは久しぶりにメダルをとることができたんだよ」と言って肩をぽんぽんとたたきました。そうしたら、原田さんは、申しわけなさそうに頭を抱えて振り返りました。泣いているのかなと思ったらちょっと半笑いの腹の立つ顔をしていたんです。「久しぶりにメダルをとれたんだよ」とは言いましたが、ここだけの話、本当に蹴飛ばしてやろうと思いました。でも、次の4年後、また頑張って金メダルをとればいいやといって、銀メダルでぐっと我慢をしました。

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