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No59 |
長寿のヒント
(6/7)

長谷部 直幸氏
旭川医科大学 循環・呼吸・神経病態内科学 教授
日本国民の上の血圧が2mm下がったらという試算があります。年間で脳卒中が9,000人減り、心筋梗塞が4,000人減り、腎不全が2,300人減ると言われており、血圧を下げていくことがいかに重要かがわかります。さて、塩です。日本人は塩分を摂り過ぎているとよく言われます。塩分を摂り過ぎますと血圧が上がり、動脈硬化を経て脳卒中、心筋梗塞、腎不全を起こしてきます。世界には食塩を摂らない民族がいまして、「ヤノマモインディアン」という種族ですが、高血圧の人は一人もいません。このことからも塩を摂らないと血圧が上がらないことがわかります。日本人は塩を一日10.7gぐらい摂ると言われ、中国、インド、イタリア、英国、米国と比べても一番摂取量が多いのです(図3)。しかも日本人は食塩を摂ると血圧が上がりやすい遺伝子を持った民族なのです。
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生活習慣の中で塩を減らしますと、上の血圧が5mm、下の血圧が3mmぐらい下がります。また野菜や果物の多い食事を摂ることでも血圧が下がります。あるいは減量しても、運動をしても、お酒を控えても下がります。ですから生活習慣をまず修正しましょう。それでも血圧が下がらない時は先生に相談して必要に応じてお薬を使いましょう。
長寿者の特徴の四番目は「脈が遅めの人が多い」で、米国で高血圧の患者さんを集めて脈拍と死亡率の関連を調べた疫学調査によると男女にかかわらず心拍数が上がれば死亡率も上がるという結果が出ました。生き物の心拍数×寿命は一定ではないかという説があります。マウスやハムスターの心拍数は1分間に500回ぐらいで寿命は短く、馬、ライオン、象、クジラなどは心拍数がすごく少なくて寿命が長いのです。
では、ヒトはどうでしょう。脈拍の速さを自在に変えることはできませんが、原因があって速さがかわることがあります。その代表が不整脈です。サラリーマン川柳に「ときめきは 四十過ぎれば 不整脈」というのがありますが、久し振りにドキドキしたと思ったら不整脈だったという悲しい一句です。長嶋茂雄さんが脳梗塞になったのも心房細動という不整脈が原因と言われていますが、これは年齢とともに増加します。
不整脈にはいろいろな種類があって心房細動では症状がまったく出ない場合もありますが、少し速くなりすぎる場合や血栓ができやすい事に対して治療が必要になります。しかし不整脈には心臓が止まっているのに近い致死的なものがあり、この場合にはAEDなどを使って救命しなければなりません。話しが脱線しましたが、心房細動はそんなに恐ろしいものではありませんが、コントロールが必要な不整脈なのです。
長寿者の特徴の最後は「老後も働いている人が多い」です。仕事を辞めないことが大事だということを、いろいろなところで経験しました。
例えばご自分一代で会社を興し、功なり名を遂げたのでそろそろ息子さんに全部譲り、自分は一切口を出さず、何事にも関わらないという大変物分かりの良い方がいます。そうすると何にもすることがないので、あっという間に気持ちが滅入って、落ち込み、ボケてしまいます。ここから立ち直るには物凄く苦労します。できれば、何と言われても仕事にしがみついて頑張っているほうが長生きできるのです。
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