![]() |
No59 |
長寿のヒント
(3/7)

長谷部 直幸氏
旭川医科大学 循環・呼吸・神経病態内科学 教授
「カロリー制限をすると長生きすること」が医学的に明らかにされております。ネズミを使って、「餌を好きなだけ食べられる」グループと「餌をいつもより三割減らされた」グループに分けて育てると、餌を減らされたグループのネズミは少し小ぶりに見えるものの元気がよく、1ヶ月長生きしました。しかしネズミが1ヶ月長生きしてもそれがどうしたと思いますよね。ではアカゲザルではどうでしょう。同じ実験をしたところ餌を減らされた猿のグループは平均寿命25歳のところが7年も長生きをしました。つまり日本で昔から「腹八分目は長寿の秘訣」と言われていることが科学的にも正しいことが分かりました。是非、腹は八分目にして長寿を目指したいと思います。
長寿者の特徴の二番目は「喫煙者はいない」です。
タバコには有害物質が4,000種類も含まれるといわれ、そのうち200種類は発がん物質です。心臓の表面には冠動脈というマスクメロンの皺のような血管が走っていて、これが心臓に栄養を供給しています。そのおかげで心臓は休みなく動き続けますが、もし血液が来なくなると心臓の組織は死んでしまいます。これを心筋梗塞と呼びますがタバコを吸う程、その確率は増えるのです。タバコを吸っている人の指先の血の巡り具合をサーモグラフィーという装置で調べてみますと、タバコを一服して30秒後には血流が悪いことを示す薄い青色、そして1分後には真っ青になります。これが正常を示す黄色や赤色に戻るのに3分かかります。しかし問題はタバコを吸っている人の隣にいて、たった2秒間他人の吸ったタバコの煙を吸った場合でも、その人の指先は青くなり、同じく正常に戻るのに3分間かかるのです。
お父さんが吸っているタバコの煙を主流煙といい、タバコの先からもくもく上がる煙を副流煙といいますが、実はこの副流煙のほうがニコチンで20倍、タール、ニッケル、一酸化炭素で15倍もふくまれています。この煙を吸わされている奥さんや子どもさんのほうがより悪影響を受けているのですから、タバコはやめなければいけません。
私が知っている三本の指に入るヘビースモーカーに「K本 聰」さんという方がいますが、3年前のこの市民フォーラムで講演をして、その後に我々とパネルディスカッションをしていただきました。私はタバコはやめなさいと言うのですが絶対にやめないと言って頑張るのです。「21年間続いた名作北の国からは43万本のラークマイルドのおかげで書けたのだ。そんなにタバコを目の敵にするのならどうして自動車の煙が許されるのか」とか色々と屁理屈を言いますが、実はタバコを一度やめたことがあります。そうしたら、今度は脚本が書けないと言うのです。脚本はタバコを吸っているから書けるという仕組みが出来上がっているようです。無理矢理やめると書けなくなるのでそちらの文化的・芸術的損失のほうが大きく、しかたなく私は医者の建前上やめたほうがいいとは言いますが、あとは自己責任で吸って下さいと言っています。
![]() |
![]() |

