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No57 |
講演 患者さんのための循環器受診ガイド
〜気をつけたい症状とは?〜
(5/6)
筒井 裕之氏
北海道大学大学院医学研究科 循環病態内科学 教授
循環器の病気でも、狭心症、心筋梗塞以外に命にかかわる病気が二つあります。一つは急性大動脈解離です(図5)。大動脈というのは、心臓から足のつけ根のところまで行く非常に大きな血管です。そこから頭に行く血管とか腎臓とかお腹に行く血管がわかれていまして、その名のとおりの大動脈です。そこの壁が裂けてしまう病気で、裂けると壁として弱くなり、そこから血液が漏れてしまいます。体の中で出血し、多くの場合は命が保てなくなります。胸の痛みというよりは、激烈な背中の痛みが急に起こり、痛む場所が解離の程度によっては移動することもあります。この病気は多くは高血圧、マルファン症候群の患者さんがかかることが多く、その結果脳血管障害を起こしたり、腎臓の血液の流れが悪くなり、非常に重篤になりやすいという病気です。有名なところでは、石原裕次郎さんが緊急手術を受けて、このときは助かっています。
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急性大動脈解離の診断にはCT検査が役立ちます。これを撮りますと、比較的、簡単に診断ができます。しかし背中の痛みなので時として筋肉痛と診断され湿布で様子を見ておきましょうということで大変なことになることもあります。
もう一つの肺血栓塞栓症は、肺に行く血管が詰まります。肺に行く血管を詰まらせてしまうものがどこからやってくるかというと、足の静脈に血の塊ができて、それが心臓のほうに流れ、肺に運ばれていきます。血の塊は大きいので、肺の細かい血管に詰まってしまうというのがこの病気です。肺の血管が詰まるので、呼吸困難を起こし、胸が痛いという症状が出てきます。ただ、こんなに重篤な病気なのですが、軽い場合から非常に重症な場合まで、ばらつきが大きく、比較的軽い場合にはなかなか診断がつかないことがあります。
ではどういうときに起こるかというと、血の塊が足の静脈にできるのは、足をあまり動かさない場合です。例えば長期にわたって横になる、よくあるのは手術の後です。だから産婦人科とか整形外科で手術をする場合、肺血栓塞栓症の予防に注意をしています。それから、飛行機に長く乗っていると、足を動かさないから血の塊ができて詰まってしまう、いわゆるエコノミークラス症候群です(表4)。
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