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No57 |
講演 患者さんのための循環器受診ガイド
〜気をつけたい症状とは?〜
(6/6)
筒井 裕之氏
北海道大学大学院医学研究科 循環病態内科学 教授
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心臓病の代表的症状の二つ目、呼吸困難。そしてそれが特徴の病気、心不全です。これは、心臓の働きが非常に悪くなったときに起こる病気ですけれども、よく皆さんは「胸がこわい」と言って、何が恐ろしいのかなと思うのですけれども、それは胸が非常に息苦しくてしんどくなってしまうということです。心不全のときにはこういった症状が出てまいります。息が苦しいというのは、心不全だけではなくて、いろいろな心臓の病気や、呼吸器の病気に多くみられます。
心臓病の代表的症状の最後は動悸、失神です。
動悸というのは、通常、自覚しない心臓の拍動や鼓動の乱れを自覚することです。脈が速くなったり、遅くなったり、乱れたりします。これも、心配が要らないものから、非常に重篤な不整脈までいろいろあります(表5)。
今日皆さんにぜひ覚えていってほしいのは、脈の見方です。多くの場合、手を広げて親指のつけ根のところのちょっと盛り上がっている橈骨の少し内側をさわっていただくと、そこは拍動が一番触れやすいと思います。手のひらよりももっと下です。手の骨のつけ根のぐりぐりした内側をさわっていただくと脈拍に触れられます。病院の看護師が触れるのはそこですが、この回数を見ます。大体は1分間とか、短い場合は30秒ぐらいはかっていただいて、どのくらいの数があるか、規則正しいかどうかを自分で見ます。
さて、不整脈には徐脈性不整脈と頻脈性不整脈とあります。
徐脈性不整脈とは図6のように脈拍が少なくなるとめまいや立ち眩みを起こし、心臓がとまることがあると失神を起こします。失神を伴うときには、ペースメーカという機械を入れる必要が出てまいります。ペースメーカは、今、比較的小さくなって治療がしやすくなっています。
逆に脈が非常に増える頻脈性不整脈とは図7を見ていただくと、心室頻拍と心室細動は、いかにも悪そうな感じですね。脈が非常に増え、200近くの脈がありほとんど心臓が有効に動いておりません。これをこのまま放っておくと亡くなってしまうことがあるという非常に危険な不整脈です。高円宮様が、47歳のときに、先ほどの心室細動という不整脈により突然亡くなるということがありました。
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現在では心室細動がどこで起きても大丈夫なように、AEDという自動体外式除細動器の設置が公共の場などで増えてきました。また、不整脈が起こっても治療をするという機器もありますし、それを体の中に埋め込むことも治療としてできるようになっています。
最後になりますが皆さんが胸痛、呼吸困難、動悸など気になる症状があらわれたときは、どんな症状かを今日お話ししたことを参考にして、これは大変だとか、これは大丈夫だという判断も含めて、自分で症状を整理し、早目に病院を受診してください。そうすると、診療は非常にスムーズに行くのではないかと思っております。
健康で病院に行かないのが一番いいのですから今日のお話は役に立たないのが一番いいのですけれども、もしそういうことがあったときにお役立ていただければと思います。
どうもありがとうございました。
座長・長谷部直幸先生(旭川医科大学 循環・呼吸・神経病態内科学 教授)
胸が痛い狭心症、心筋梗塞。息切れや息苦しい心不全。胸がドキドキする不整脈という患者さんが気をつけたい三つの症状を治療も含めて分かりやすく説明していただきました。
冒頭に患者さんと先生とが意思の疎通をはかるのは「異文化交流」のように難しいと言われました。私のところでも先生が「器質的な異常ではなく、機能性の異常です」と説明したところ、患者さんが「やっぱり気のせいですか」と言われたことがあります。我々は思いのすれ違いを擦り合わせながらやっていますが、今日は上手な病院のかかり方、先生への相談の仕方についてのヒントとなる貴重なお話を聞けたのではないかと思います。
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