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No56 |
心臓病予防の肝腎かなめは腎臓にあり
〜心臓病と腎臓病の深いつながり〜
(6/8)

三浦 哲嗣 氏
札幌医科大学 医学部 内科学第二講座 教授
そこで、生活習慣の修正目標です。まず、重要なことは減塩ということになります。1日に6グラム未満というのはなかなか大変ですけれども、目標は6グラム未満です。食塩以外の栄養素としては、野菜や果物を積極的にとってください、それから、飽和脂肪酸、動物性脂肪を余りとらないように、それから、魚を積極的にとりましょう。
減量というのは体重を理想体重近くにちゃんとコントロールしましょうということです。
それから、運動ですが、これは、あくまでも心血管病のない人が対象になります。ですから、運動をしていいかどうか、慢性腎臓病がある場合にも、運動が腎機能を悪くする可能性がありますので、ここは、やはり主治医に相談して運動していいかどうか一度チェックを受けた上でやっていただきたいと思います。
節酒というのは、お酒を余り飲み過ぎないようにということです。エタノールで20から30と書きましたけれども、日本酒では大体1合、ビールで大瓶1本、ワインで150CCぐらいですけれども、これ以下にしてください。それから、禁煙です。
ここに挙げましたように、生活習慣の複合的な修正は1個だけではなく、複数やるのが非常に効果的なことがわかっております。
では、どれくらいこういうことをしたら血圧が下がるかということになります。どれをとっても上の血圧が大体4ぐらい、拡張期血圧が2ぐらい下がります。ですから、そんなにドラマチックに物すごく下がるわけではありません。でも、やはり、重要といいますか、効果はあります。それと同時に、もう一つは薬の効き方が非常によくなります。ですから、薬物治療の前にまずこういった生活習慣の修正というのは非常に重要です。
では、一番難しい減塩6グラムというのはどの程度のものか、ちょっとお示ししたいと思います。
食事は、糖尿病もあるような方で、カロリーは1,600カロリー、脂質を1日に35グラム、食塩を6グラムです。そうすると、朝ごはんはトーストが1枚、お昼は麺類になって、晩ご飯は、みそ汁はついていませんが、魚の切り身があって、あとは野菜です。これだと6グラムですが、皆さん、どうでしょうか。毎日続けるのはなかなか大変ではないかと思います。調味料や何かを相当工夫しないと、6グラムというのはなかなか難しいです。
一方、塩分をたくさんとるのは非常に簡単です。例えば、カップラーメンが分かり易いと思います。現在ではカップラーメン自体に塩分量が実際に書いてありますけれども、この中に塩分が5グラムも入っていますから、これ一つを汁まで飲んでしまうと、ここで6グラム近くまでいってしまって、もう1日の塩分の限界までわずかです。
お集まりの方はこういうものを余り召し上がらないと思いますが、子どもやお孫さんなどがこういうことをすると、習慣が続いてしまいますので、高血圧の予備群、慢性腎臓病の予備群をつくっているのと同じことになってしまいます。
ちなみに、若い人たちのことを言うと、例えば、フライドチキン2ピースはそんなに多いと思われないかもしれません。しかし、2ピースを食べると、脂質は30グラムぐらいになりますし、実は塩分も3、4グラム、つまり1日の許容量の半分が越してしまうことになります。
例えば、コンビニのお弁当を見るとどうでしょうか。食塩を制限したお弁当をつくると、だれも買ってもらえないのではないかというぐらいに、現在はカロリーも塩分も非常に過剰な状態が続いています。
それから、血圧の薬ではどうでしょうかというと、余り薬を飲みたくない、あるいは1種類で十分ではないですかと言われます。しかし、CCBとかDとかACIは薬の種類ですが、どの薬を使っても1種類で血圧が140、90ぐらいになるというのはせいぜい40%です。ですから、大体 2 種類ぐらい使わないと下がらないというふうにお考えいただきたいと思います。
現在、65歳未満の患者を対象に調べてみると、降圧目標の130、85に到達している人は実に4割しかおりません。65歳以上だと、7割近くの方は140、90を切っておりますけれども、3割ぐらいはまだ目標に達していないのが現状です。
ですから、この目標に達するように、降圧目標、治療目標に達していない2割あるいは3割といったところを限りなくゼロにするためには、生活習慣、それから、やはり適正な薬物療法、ひいてはそれが慢性腎臓病も減らすことになります。
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