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講演  No56

心臓病予防の肝腎かなめは腎臓にあり
〜心臓病と腎臓病の深いつながり〜

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三浦 哲嗣 氏

三浦 哲嗣 氏
札幌医科大学 医学部 内科学第二講座 教授



 この会場の方は、よくご存じかと思いますけれども、動脈硬化に関与するのは高血圧と糖尿病と脂質異常、コレステロールが高いことです。

 高血圧単独だけではなくて、高血圧と糖尿病を両方持っている人、あるいは全部持っている人というのは、リスクが重なっていて脳卒中や心筋梗塞の危険が高いということです。

 最近わかったのは、実はここに慢性腎臓病もあるということであります。それでは、腎臓を守るにはどうしたらいいでしょうか。

 ここまでお話ししたように、血圧、血糖、それから、データは示しませんでしたが、肥満も腎臓を障害する大きな要因ですから、それを予防しなければいけません。

 それから、脱水の予防ということになります。高い熱が出たり、あるいは、水分がとれないで非常に下痢が続いて脱水になったりするということも、腎臓障害をもたらす重要な誘因になっています。

 溶連菌感染というのは、溶連菌という細菌によって、よく上気道ののどとか扁桃腺の感染が起こりますので、それを放置したり単なる風邪薬で様子を見ないで、きちんと抗生物質で治療してもらう必要があります。

 残念ながら、もし慢性腎障害が既に起きていたら、その進行をとめるにはどうしたらいいかというと、やはり、血圧をコントロールする、塩分をきちんと制限する。

 また、慢性腎臓病がある程度進んで、ステージ(病期)が重症の方に行きかけた場合ですが、このときは食事のたんぱくを少し制限しなければいけません。

 それから貧血の管理です。腎臓機能障害が進むと貧血になりますが、それもきちんと治療していなければいけないということがわかっています。

 血圧と腎臓の機能の関連をもう少し詳しく述べてみます。血圧の高さと、1年間に腎臓の機能が下がる程度についての研究があります。その結果では、血圧を高いままにしておくと、1年間で糸球体ろ過率、eGFRが下がる程度はうんと大きい。

 例えば、高血圧を治療しているといっても、平均血圧が113と高い場合、1年間でeGFRが10下がってしまいます。eGFRというのは正常では約100ですから、1年間で10下がってしまうと10年間ではゼロになるということですから、透析が避けられないということになってしまいます。

 そういうことで、現在では、こういう慢性腎臓病のある患者では、血圧を130の85以下、平均血圧で100以下くらいまできちんと血圧を下げないと、ただ薬を飲んでいるというだけではだめだということを示しています。

 つまり、血圧を適正な値にすると腎臓機能の低下を予防できるでしょうということであります。そこで、高血圧について、もう一度、復習してみたいと思います。

 高血圧の重症度というのは、軽症、中等症、重症というふうに分かれていて、下の血圧が100から110、上の血圧が160から180の間が中等症で、これより上に行けば重症となっています。

 最近、注目されてきているといいますか、重要性が理解されるようになってきたのは、家庭血圧が重要だということです。下の血圧が90以上、上の血圧が140以上を高血圧と言うというのは診察室での血圧のことです。ただし、家庭血圧は、家では診察室ほどストレスがないので、135の85以上を高血圧としています。ところが、患者の中には、診察室では140の90以上だけれども、家では血圧が全然高くないという人がいて、これは白衣高血圧です。白衣を見るとストレスで血圧が上がる。

 具体例として診察室血圧と家庭血圧の対比を示します。診察室ではかると大体血圧は170の100ぐらい、ところが、家ではかると130の80ぐらいで、全然、高血圧ではありません。ですから、診察室の血圧だけ見て血圧の薬を出されてしまうと、家で血圧がうんと下がって、ふらついたり非常に調子が悪くなるということが起きてしまいます。

 もっと困ったことは、仮面高血圧というものです。これは、診察室ではかると140の90以下だけれども、朝であったり、夜間であったり、職場、家庭のストレスで高血圧になる人もいます。つまり、血圧というのは、寝ている間に下がっていて、活動しているときに高くなるというリズムがありますが、例えば、この方は、早朝に家庭血圧で135を超えている。ここで薬を飲んだりしているので、外来の血圧は非常にいい値になっている。でも、やはり、寝て、朝起きるときに早朝高血圧になっている方もいますし、朝の血圧はいいけれども、夜寝ている間に高血圧になる、それから、日中、仕事あるいは家庭の問題、ストレスで血圧が高くなる人もいます。

 特に、早朝の高血圧は腎臓を非常に痛めることがわかっています。ですから、ぜひ、家庭血圧をはかっていただきたいということであります。

 家庭血圧のはかり方としては、朝、起床後1時間以内の薬を飲む前に、一、二分間安静にしてカフを心臓と同じ高さに置いてはかってもらいます。朝、起きたときと、就寝前の安静時になります。

 今、血圧手帳をお持ちの方もたくさんいらっしゃるかもしれません。しかし、先ほど、申し上げたように、実は、血圧だけよくしても、コレステロールであるとか血糖であるとか、そういったこともあわせてよくしないと脳卒中や心筋梗塞を予防することはできません。

 そこで、北海道心臓協会が生活習慣病から身を守るということで健康手帳をつくっています。そこではどうなっているかといいますと、血圧の経過を書くページ、そして、コレステロール、中性脂肪、尿酸、血糖、また、よく見ていただくとここに先ほどお話ししたクレアチニンとか尿たんぱくとかを記載するようになっています。

 ですから、北海道心臓協会の健康手帳を使っていただいて、こういったことについてきちんと検査を受けて記載してもらい、すべての危険因子のコントロールができているかどうかということをご理解いただいて、主治医の先生に説明してもらうことが大変重要ではないかと思います。

 つまり、これらすべてをきちんと把握して、今、どのレベルにいるのかということを見るためには、血圧手帳がだめだというわけではありませんが、血圧の数値だけではなくて、コレステロール、それから、糖尿病、きょうお話ししている慢性腎臓病の状態についてきちんと把握することが必要だと思います。

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