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講演  No56

心臓病予防の肝腎かなめは腎臓にあり
〜心臓病と腎臓病の深いつながり〜

(3/8)


三浦 哲嗣 氏

三浦 哲嗣 氏
札幌医科大学 医学部 内科学第二講座 教授



 それでは、腎臓の障害といいますか、今、我々は腎臓の働きをどうやって評価しているかというと、一つは、血液検査である血清のクレアチニンというもの、これは血液検査ではかることができます。もう一つは、eGFRという聞きなれない言葉だと思いますが、これは、先ほどご説明した腎臓でろ過される血液の1分間当たりの量を示す、大ざっぱに言えばそういうことになります。ですから、eGFRという数値が低くなればなるほど、ろ過される量が減りますので、それは腎臓の障害が重いことを示します。クレアチニンという値を使いますと、老廃物の蓄積の指標のようなものなので、クレアチニンが高くなるほど重症となります。つまり、このクレアチニンとかeGFRという血液検査で知ることが出来ます。eGFRはクレアチニンと年齢と性別から計算することができますので、これは血液検査からはかることができます。

 もう一つは、皆さん、よくご存じの尿たんぱくです。たんぱくというのは、体に非常に大事で、正常では尿には漏れません。たくさん尿たんぱくが漏れるということは、それだけ腎臓が重症な障害を持っているということになります。

 今日、一番大事なスライド(図3)の一つはこれになります。

図3 外来通院患者1,120,295例を対象にした解析

 これは、アメリカの研究ですが、実に外来通院患者100万人以上を対象にして、今、お話ししたeGFRを横軸にとって、死亡率、それから、心血管イベントというのは、脳卒中や心筋梗塞の頻度を示していまして、こちらになるほど数値が小さいですから、腎機能が悪いことになりますが、ごらんのように腎機能が悪くなればなるほど死亡率は上がって、心筋梗塞や脳卒中の頻度も上がっていくことになります。

 実は、図3の赤枠の中の人たちは症状がないか、ほとんどありません。この人たちはほとんど自覚症状がありませんが自覚症状がないからといって、腎臓の障害は軽くてリスクが低いとは言えないということになってしまいます。

 今、腎臓の老廃物、排せつ機能をはかるeGFRの指標で、低くなればなるほどリスクが高くなるというお話をしましたけれども、同じようなことはたんぱく尿の程度でも言えます。

 尿たんぱくが出れば出るほど、やはりリスクは高くなります。つまり、尿たんぱくの程度、それから、eGFRの程度がそれぞれ心血管イベントのリスク、脳卒中、心筋梗塞のリスクを上げていることを示しています。

 では、慢性腎臓病はどれぐらいいるのでしょうかというと、実に人口の5%から10%です。ということは、今、日本に1,300万人、実に成人の8人に1人です。そんなにいるのかと思うかもしれませんが、自覚症状が出ていないということであります。

 実際にどうかと見てみますと、例えば、先ほどのeGFRという値ではほとんど正常だけれども、尿たんぱくだけ出ている人が61万人、ごく軽度だけれどもeGFRが低下している人が170万人ですから、軽度の腎障害だけで230万人ぐらいです。

 ところが、1,000万人ぐらいの方は中等度から高度の腎臓の障害があります。これは血液透析の予備群というだけではなくて、前のスライドでお示ししたように、こういった方たちは心臓や血管病の危険因子を抱えていることになります。

 では、どういった腎臓病があって腎臓が悪くなっているのでしょうか。

 まず腎臓そのものに病気が起こる場合があります。いわゆる腎炎というもので、いくつかの種類がありその他に腎臓以外の病気によって二次的に腎臓病が起こる場合がありますが、その原因として最近は、やはり生活習慣病である糖尿病であるとか高血圧、それから肥満関連の腎症といったようなものがどんどん増えています。ですから、こういったことを予防することは、腎臓を守ることと心臓や血管を守ることにつながるわけです。

 年齢別に見てみますと、10代、20代、30代といった若い方たちの腎不全の原因はやはり腎炎が多いですが、45歳以上になると糖尿病が多いので、腎障害から守るためには、やはり、生活習慣病である肥満とか糖尿病を予防することが腎機能障害から守るために最も重要であることがわかります。

 もう一つの見方として、要因別に調べてみました。そうすると、年齢が尿たんぱくの出現に与えるインパクトは、一見、そんなに大きくないように見えるかもしれません。

 しかし、茨城県がまとめたデータによると、eGFRが60以下に下がる、つまり、慢性腎臓病と明らかに言えるような値になっている人の年齢分布は、例えば、50歳代だと男性で10%弱ぐらい、女性で15%ぐらいですが、60代になると20%前後になっていきます。70代になると、男性でも20%、女性だと30%ぐらいになります。

 それから、血圧が高くなればなるほど、尿たんぱくが出やすくなりまた、糖尿病によっても尿たんぱくが出る危険は2.5倍ぐらいになることがわかっております。つまり、現在では、糖尿病と高血圧が尿たんぱく出現の一番大事な危険因子になっています。

 それでは、糖尿病でなければいいかというと、そうではないわけです。血糖が高いことです。

 血糖が110以下の場合ですが、正常の方を見てもたんぱく尿の頻度というのはゼロではなくて2.9%です。慢性腎臓病、つまり、先ほどのeGFRが下がるというもので見た場合の腎臓病は12%ぐらいありますけれども、これが、血糖が少し高くなって110から125だと尿たんぱくや腎臓病のリスクが 4 倍になります。

 それから、空腹時血糖が126、糖尿病ということになると、そのリスクは7倍になります。それぐらい、血糖が高いということは尿たんぱくや腎臓病のリスクになるということが日本のデータからも示されています。

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