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No56 |
心臓病予防の肝腎かなめは腎臓にあり
〜心臓病と腎臓病の深いつながり〜
(2/8)

三浦 哲嗣 氏
札幌医科大学 医学部 内科学第二講座 教授
最初に、肝腎という話をしましたけれども、実は、心腎連関ということがきょうのお話のテーマです。
最近、心腎連関ということがよくわかってきました。どういうことかといいますと、まず、心臓病と腎臓病はお互いに関連して進んでいきます。正常の状態で心臓と腎臓は非常に密に関連しているからです。その理由は後でお話ししますが、心腎連関とはそういうことであります。
それから、大事なことは、腎臓の障害が非常に軽く自覚症状のないときから、腎臓の障害によって心臓や血管の動脈硬化が進んでしまうということです。
自覚症状がありませんから、これを早期に見つけようとすると、尿検査や血液検査をすることが基本的に重要になります。
それでは、腎臓というのは、一体どういう働きをしているかということを振り返ってみたいと思います。これは、構造を示した模式図です(図2)。腎臓は体に二つあって、動脈から血液を受けますが、腎臓の中に糸球体という構造がありまして、毛細血管の一つの形ですけれども、動脈血が糸球体を通るときに血液のろ過が起こって老廃物を尿にして出します。そして、老廃物が除かれた血液が静脈に戻り、体の循環ということに戻っていくプロセスになります。この糸球体というのは、実は100万個ぐらいあります。こういった構造をしておりますけれども、実に非常に大量の血液が腎臓を流れています。心臓というのは 1 日に6,000リットルの血液を体に送ります。1 分間にすると、心臓は4リットルから5リットルの血液を体じゅうに流しています。そのうち、約4分の1と言っていいでしょうか、800CCから 1リットル分ぐらいは腎臓に血液が流れてきます。
その結果、何が起こるかといいますと、ここで1日に約150リットルもろ過が起こります。1日に150リットルもろ過が起こって、150リットルのおしっこが出ると、人間は干からびて死んでしまいますから、実はこのうちの約100分の1だけ尿にします。
つまり、一たんろ過したもののうちから、必要なものをもう一度血液の中に取り戻して1.5リットルぐらいにして、本当に不必要なもの、それから、本当に今これくらい水分を外に出した方がいいという量だけ出すようになっています。
腎臓の働きは、今、お話ししたように、血液の中の老廃物を出します。逆に言いますと、必要なものは出さないということになります。
それから、体内の水と電解質、塩分を調節するということで血圧の長期的な調節に非常に重要な役割を持っています。
今日は詳しくお話ししませんけれども、骨の維持に必要なビタミン、ビタミンDというものがちゃんと働くためには腎臓の機能が重要です。
それから、腎臓から出るホルモンがないと貧血になってしまうということがあります。こういった働きを腎臓がしているわけですが、その結果、当然、腎臓病が進行しますと、症状としてはむくみが出たり、体がだるくなったり、食欲不振が出たり、呼吸困難が出たり、不眠になったりと、いろいろな症状が出ます。しかし、こういった症状が出るというのは、9割以上と言ったらオーバーかもしれませんけれども、少なくとも8割以上も腎臓の働きがなくならないと症状が出ません。ですから、こういった自覚症状が出てからでは、なかなか取り返しがつかないということになっています。
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