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講演  No54

質問・討論コーナー「北の国から元気を出す工夫」
(1/4)


坂東 元 氏

坂東 元 氏

倉本 聰 氏

倉本 聰 氏

 

 長谷部 直幸 氏

進行: 長谷部 直幸 氏
旭川医科大学内科学講座
循環・呼吸・神経病態内科学分野教授

長谷部氏(以下長谷部) 講演で、坂東さんには命の営みのすばらしさというお話をいただきましたし、倉本さんには文明に頼りきった暮らしの危うさを教えていただきまして、お二人とも期待どおり、本当に心揺さぶるご講演だったと思います。皆様からいただきましたご質問、ご意見とお二人のご講演を踏まえまして、少しお話を伺わせていただこうと思っております。
 北海道心臓協会も30周年ですけれども、我が国のテレビドラマ史上に残る最高傑作「北の国から」も放送開始30周年ということです。数々の名場面があったドラマ「北の国から」ですが、泥のついた1万円のピン札の場面というのが、皆さんからベストシーンとして最も支持されたそうです。倉本さんはこのシーンがベストだと皆さんに支持された理由 はどの辺にあるとお考えでしょうか。

倉本氏(以下倉本) あれは自分の経験からなんです。戦後おやじが死んで、おふくろが金がないはずなのに無理してどこかからひねり出して、500円札を僕にくれたんです。その500円札がどうしても使えなかったんですよ。その後、僕は稼ぎ出して、ほかの500円札は使えるんだけど。500円札というものが500円の価値というものではない別の意味合い を持っている。つまりお札って、確かに価値で言えば1万円は1万円なんですけれども、そこに渡された人の思いとか受け取ったときの感情とか、そういう物語が加わるという気がするんですね。それを貨幣価値だけで考えることはどうかなと僕は思っています。

長谷部 坂東さんもこの「北の国から」のファンであったと聞いていますが、どんなシーンが思い出に残っていますか。

坂東氏(以下坂東) 子どもたちが、電気もない何もないところでどうやって暮らすのという、最初のほうの富良野で暮らし始める部分がすごく何か印象にありますね。

長谷部 僕はやっぱり月並みですけど、螢ちゃんがお母さんの電車を追いかけるシーンです。お父さんのことを思っているから、妙に冷たくしているわけですね。だけど、お母さんが離れていくというときにもう泣きながら追いかけるという、何というか、お父さんの気持ちを思いやりながら、お母さんも慕っているといういじらしさに泣きました。
 動物園の動物たちというのも、人間に気を使うような感情を示すことはないでしょうかという質問がきています。夏の暑い日に旭山動物園に行かれた方の感想で、オランウータンのジャックがもぐもぐタイムのときに綱渡りをして見せてくれたそうです。暑いから動きたくないときに、決して道路の反対側にある餌を食べたいから行ったのじゃなくて、来園した人を期待どおりにやってあげなければとでも考えているんじゃないかと、その方は思ったということなんです。動物園の動物が人間の期待に配慮して行動することがあるかということですが、坂東さんいかがでしょうか。

坂東 期待に応えてというわけではないのですけど、特にジャックくらいになると、人が何を考えているか。感覚の中で全部わかっていますから、多分そのときは何かきっと温かく見守っている人たちだったのでしょうね。気まぐれで、渡らないったらもう渡らないんですけれども、人がどういう反応をするのかというのは楽しんでいますね。
 別にもぐもぐタイムじゃなくても渡っているんですが、人間って上を見たら、みんな口がぽかんとあくんですよ。彼らなりの時間の中でお客さんを見ながら、楽しんで反応したりしているのかなとは思いますね。

左から坂東氏、倉本氏、長谷部氏

長谷部 やっぱりそういう要素はあるんだなということですね。
 「北の国から」では、ストーリーのエピソードとして出てくる動物はあまりなかったように思いますが、一つ印象に残っているのが、農耕馬のドサンコの話です。無用の長物と化したドサンコが、たしか吹雪の中で、ブルドーザーでも除雪車でも捜しきれなかった人を捜し当てるという感動的な場面。デジタルにアナログが勝ったみたいな、行き過ぎた文明に対する強烈なアンチテーゼといいますか批判といった要素が多分あるんだと思うんですけど、このシーンはどういうことを意図してでき上がったんでしょうか。

倉本 これは、僕が富良野で農家の青年から聞いた話がもとになっているんです。 農家ではほとんどが農耕馬を飼っていたわけですね。曲り家(まがりや)で一緒に住んでいますから、家族みたいになるんだそうです。ただ、絶対名前はつけなかったそうです。なぜかというと、冬苦しくなると売っちゃうから、そのときに情が移っちゃいけないというので、絶対に飼い馬には名前をつけないという不文律があったみたいですね。それで、そのうちブルドーザーが入るようになって必要なくなったのだけど、放せなくてしばらく置いていたんだそうです。でも、もうこれは売ろうということになったのだけれど、馬は今売るとすぐにドッグフードになっちゃうわけですよ。それでかわいそうで、前の日にごちそうしたんだそうです。そうしたら馬がやっぱり察したらしいんですね。それでトラックが迎えに来たんだけど、馬小屋から出したけど動かなくなっちゃって、主人へ顔をこすりつけるんだそうです。見たら大粒の涙を流していたというんですよ。それで一家全員ぐっときちゃって、どうしようと思ったら、今度は馬がぱっと首を離して、すたすたと自分から踏み板に乗って、トラックに乗っていったというんですね。その話がものすごく印象に強くて、それをちょっとこういう形で脚色したんです。

長谷部 倉本さんに対するご質問の中で、動物と人間とどちらがお好きですかというのがあるのですが。

倉本 人間の場合、雄と雌とで相当違いがあるというような気がしますが(笑)。昨日うちの犬に頭突きされてけがしちゃったんだけど、動物のほうがいいですね、人間はいろいろ言いますし。

長谷部 倉本さんのドラマの中では人間のエピソードがあまりにすばらしくて、動物のエピソードを持ち込む必要がないのではないですか。

倉本 テレビドラマ界では、動物を持ち込むのはひきょうだと言われているんですよ、動物と子どもは。「北の国から」はもうさんざん子どもを使っちゃったんで。

長谷部 走っていますよね。子どもたちがいつも走っているという。

倉本 まあ演技ができないから走らせるんです。(笑)

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