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No52 |
命を見つめる
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旭山動物園園長、ボルネオトラストジャパン理事
皆さん、こんにちは。今日は心臓協会主催ということで、和やかにやっていいものなのか、神妙にやらな きゃならないのか、ちょっと迷っています。
震災と原発の問題とか、何か色々なことがそろそろもう限界だよというところまで来ていながら、なかなか変われない社会が あって、本当に思い切って何か価値観とか幸せ感とか豊かさを実感することなどを変えていかないといけないようなところにあるような気がします。今日は動物たちの暮らしを見ていただきながら、いま一度自分たちの暮らしだったり、命は大切というんだけど、何が大切なのかなみたいなことをちょっと考えてもらえる場になればと思っています。
旭山動物園は有名にはなりましたが、有名になろうと思ってやってきたわけではなく、どんな命もみんなすばらしいよねということを共感してほしいと思って、色々な取り組みをしてきた結果が今なのです。たまたま数字がついてきて、変に経済的なことの話題が多くなって、自分たちとしてはちょっと不本意なところですけれども、これから本当にしっかりと北海道で暮らすということの豊かさなどを実感できるようなことにつながっていくことをしていきたいなと思っています。
札幌では、最近ヒグマが出てきて大騒ぎしていますけれども、昔からヒグマはいたわけです。関わりがないときは関心を持たない、不都合なところで出てくるともう要らないみたいな…。新聞を見ていたら、ドングリをやって山に追い払えみたいなことが出ていましたけれども、それは違うだろうと。彼らはずっと昔から僕らを見続けてきているわけで、だからその中で北海道の豊かさって何なのかなと考えたいと思います。
北海道はそんなに広い島ではありませんが、500万人以上の人がいて、今3000〜5000頭のヒグマがいると言われています。地球上でこれだけ狭い島の中にこれだけ沢山の人がいて、地上最大の肉食獣が3000、5000といるところってないんですね。本当に奇跡の島なんです。だから、僕たちがそういうところに暮らしていて、何を豊かに感じるのか、もっとクマが出てくることを誇りに思ったほうがいいぐらいな、本当はそんな北海道でありたいなと思います。
旭川のほうも今サケが遡ってくるようになってきたんです。それはもともとは川をきれいにしましょうということや、堰堤をつくり過ぎてしまって魚が遡ってこられないことから、サケを川の豊かさの象徴みたいにして、地道な活動をして遡ってきたのですね。そうして、サケがいっぱい遡ってくると、そこにクマが出てきたらどうするんだみたいな議論になってきます。出てきたら困るんですね。
サケが遡ってくるのを目的に思うからそういうことになるので、本当はサケが遡ってきた豊かさって何なのかというところをもっと先に目的を持っていけば、もっと違う豊かさみたいなものを本当に感じられるようになるんじゃないのかなと思ったりします。
ということで、動物園の僕らの理念みたいな部分も含めつつ、命というものをどうなんだろうというのを考えてもらえたらなと思っています。
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