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No50 |
知って減らそう心臓病
ここまで進んだ診断と治療
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島本 和明氏
皆さん、こんにちは。先程の輪嶋先生の講演の中で、菊池先生がやったのと同じ体操を実は私、4年位前に別のところの舞台でさせられたことがあったんですね。全然できなかったんです。だから、今日菊池先生うまくやったらどうしようかなと思っていたんですけど、うまくやれなかったのでホッと(笑)。もう皆さんの頭、脳はすっかり活性化されていると思いますけれども、心臓協会は心臓病、循環器病から身を守るということでつくられている協会ですので、この後少し心臓病のことを一緒に勉強させていただきたいと思います。とりわけ今日は新しい診断法とか治療法のことも含めてご理解をいただいて、この後ご自身で心臓を守っていただくということで、少しでも皆さんのプラスになれば幸いと思っております。
心臓血管系の死亡率はがんとほぼ同じ
さて、日本における主な死因、皆さん何が怖いかというと、まず99%の方ががんだと言われます。平成15年の成績ですけれどもがんで亡くなっている方、確かに26%、一番多いんですね。だけど、心臓病が15%、脳血管障害、脳卒中が11%、両方合わせると25%。実は死因で見ると、がんと心臓血管系の病気というのは同じなのです。心臓・血管病もがんと同じ位重要だ、守るためにはどうすればいいかということを真剣に考えなければいけないということです。
さて、実際にこの心臓血管系の病気を起こす基礎疾患、もとの病気として糖尿病、高血圧、高脂血症や肥満があるわけですけれども、糖尿病はとうとう一番新しいデータで1,000万人の患者さん、予備軍を入れると2,200万人なんです。高血圧は4,000万人です。1億3,000万人のうち4,000万人。赤ちゃんも入れてですから、とんでもない数の患者さんがいます。予備軍などちょっと高い方を入れると5,500万人で、2人に1人ですね。脂質異常症、コレステロールとか中性脂肪が高い方は3,000万人で、肥満の方も3,000万人。そして脳卒中、心筋梗塞で亡くなる方が、先程申し上げましたようにがんと同じ位いるんです。特に最近は糖尿病が増えています。糖尿病の合併症として目が見えなくなる、腎臓が悪くなって透析に入る、足を切る、もちろん脳卒中や心筋梗塞もあります。こういった色々な合併症を起こしてくる方が大変に多い。全部これらは循環器系、心臓血管系の病気のもとの病気ですし、その結果こういう最終像になってくるわけです。
厚生労働省は日本の国民の健康を見ていく「健康日本21」という新しい政策を2000年につくりました。しかし、「健康日本21」で名前を成人病から生活習慣病に変えたんですけれども、全然生活習慣がよくなっていないんですね。歩く歩数は年々減っているんです。肥満者は年々増えているんです。朝ご飯を抜く中高生は年々増えているんですね。ストレスを感じる人も増えている。全然生活習慣が改まっていない。そこで、もうこれで5年経ちましたから、厚生労働省もこのままではなかなか日本中で生活習慣が改善しない、見直しの時期ということで「健康日本21」政策を見直して、去年の4月からメタボ健診つまり特定健診、保健指導が動き出してきたわけです。従来の基本健康診査から特定健診と特定保健指導に、ここで重要なのは、健診だけではなくてリスクの高い人は保健指導もやっていくということです。やはりただ検査をしてデータを返すだけでは良くならない。実際に食事や運動を指導しないとなかなか健康が良くならない、健康的な生活にならないということで、昨年から保健指導を入れたわけです。これは従来市町村でやっていたものを、国保、社保、協会けんぽという保険者が行います。合計7年間で受診率を高めて25%病気を減らそうという目的で特定健診・保健指導が昨年の4月から動いてきています(表1)。
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受診率の低い北海道
しかし、ついこの間道新に出たばかりの記事で、皆さんご存じだと思います。主に中小企業の方たちが加入されている協会けんぽ、以前の政管健保と言われていたものですけれども、受診率が全国で36%、3分の1方しかこの健診ドックを受けていない。北海道は32%。不景気の影響もあるのかもわかりませんが、一番少ないほうの地区に北海道が入っていました。さらに国民健康保険、国保で見ると受診率28%でさらに少ない。北海道は19%です。これも全国平均をずっと下回っていますし、一番低いほうにまた入っている。協会けんぽも国保も、北海道はこのメタボ健診の受診率が非常に低いんですね。
このメタボ健診というのは糖尿病、高血圧、肥満、高脂肪血症を抑え、肥満を抑えて、心臓血管系の病気を減らそうというのが主な目的で行われています。そういう国の政策ですから、心臓病から身を守るためにやはりまずは健診を受ける。そして、指導をしたほうがいいと思われる方は指導を受けていく。この入り口の受診率が北海道は一番低いほうなものですから、こういう状況に今あるということを皆様には十分にご理解いただいて、皆さんの心臓病、健康を守っていくためにどうすればいいかを考えていただくことを前提にして、この後お話を聞いていただければと思うわけです。
さて、この心臓病の予防を理解する。そして取り組んでいくために、まず心臓病ということをよく解っていただきたいと思います。先程申し上げましたように、心臓病を起こす原因の疾患としての高血圧や糖尿病、そして脂質異常症や肥満ですね。これはこれまでも色々なところでお話を聞いていると思いますので、ぜひご自分で、あるいはかかりつけのお医者さんと相談して守っていただきたい。こういった病気の結果として心臓の病気や脳卒中が起きてくるわけです。
実は心不全というのは皆さんよくお聞きになると思うのですけれども、心不全は心臓の機能が落ちた状態ですから、原因は何でもいいんですね。心臓の病気すべてで心不全を最後には起こしてくる(表2)。その原因の疾患として、例えば高血圧などが関係している心肥大とか、皆さん一番興味があるのは狭心症、心筋梗塞だと思います。あるいは弁膜症。先天性の心臓病、心筋症や心膜炎あるいは感染性心内膜炎と色々な病気がありますし、最近特に高年齢で不整脈が非常に増えてきています。皆さんにとって一番ポピュラーなのは、やっぱり心筋梗塞、狭心症、心肥大と不整脈だと思います。そして脳卒中ですね。こういったいろいろな心臓血管系の病気を十分に理解をしていただきたい。
そうすると心臓病が疑わしいときにどうするか、どんな検査があるのか。皆さんよくご存じなのは心電図です。胸の写真、そして心臓超音波(心エコー)という検査もよく色々なところで行われていますから、皆さんも十分にご存じと思います。さらにCTとか核医学、MRI、心臓カテーテル、こういったもうちょっと特殊な検査、これらが今もっともっと進化して、より簡単に受けられるようになってきています。特に狭心症、心筋梗塞や不整脈の領域でこういったものが非常に進んできていますので、こういう新しく進んでいる分野のところを紹介をさせていただきたいと思います(表3)。
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