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No45 |
大切な人を突然死でなくさないために
〜あなたに救える命があります〜
(4/5)
カメルーンのサッカー選手でホエというワールドカップに出るような一流の選手が、プレイ中にピッチ上で倒れてそのまま突然死するという事が起こりました。突然死の原因が何であったかを予想するのは中々難しいのですけれども、このように非常に若い方にも突然死は起こるという事です。さらにもっと年齢が下がって、小学生から高校生、こういう学校の生徒さんにも突然死は起こります。日本でも学校の管理下、いわゆる授業中などの突然死で年間に50〜100人、全国でお子さんが亡くなっています。これはあくまでも学校で起こった突然死で、学校の外で起こった突然死はこの数値には含まれていませんが、大体この3倍位ではないかといわれています。したがってやはり年間に数百人のお子さんが突然亡くなっている。先ほどの突然死の7割が心臓突然死だとお話しましたけれども、やっぱり70〜80%は心臓の病気によると考えられています。お子さんの突然死は運動に関係したものが多いというのが特徴です。心臓震盪と言われるのが時々新聞などに出ています。これは前胸部の非常に軽い衝撃とか打撲によって、先ほどからご紹介しています非常に怖い不整脈である心室細動を生じて、心臓突然死をきたすという病気です。非常に若い人が多い。野球が多いのですが、サッカーなどの球技でも起こっています。ただ非常に強い骨が折れる位の強い衝撃が胸に加わる訳ではなく、投げたボールとか打ったボールが当たったとか、骨には異常が無いくらいの柔らかい衝撃によって、心室細動が起こると言われています。
結局心臓突然死というのはあらゆる年齢の方に起こる危険性があるわけです。なぜか男性が多いのですが、これは先ほどの心筋梗塞などの病気が男性が多いという事が関係しているわけです。一番多いのは50代、60代の方ですけども、女性になりますと60代、70代の方に多くなってきます。では若い人20代、30代には無いかというと、若い人にも突然死は起こるという事をお話しました。では、どこで起こるか。重要なことは、病院の中で起こるというのはむしろ極めて稀です。家、道路、職場、公衆の場所、こういった医療機関ではない所で起こるというのが、この心臓突然死の非常に大きな問題になるところです。結局心臓突然死というのは、いつでもどこでも誰にでも起こりうる危険性があり、それで日本全国で年間3〜5万人位の方が命を落としているという事です。
ではどうやって予防するかという事になります。心臓突然死が起こる原因となる心室細動が起こった時には、除細動という治療しかありません。もうこれ以外にこの心室細動を止める方法は無いわけです。即ち非常に不規則な心室細動という心電図になっていますので、これを電気ショックで止めて正常な心電図に戻してやる。これが除細動と呼ばれる治療です。それではいつ除細動すれば助かるのかという事ですが、心室細動になると脳には血液が行かなくなります。したがって意識がなくなります。そのままにしておきますと大体1分間に10%ずつ蘇生率が低下していきます。したがって心室細動が起きて10分経つとその方を救命出来る可能性は極めて低いという事になります。最初の数分が命の分かれ目、勝負という事になります。
わが国は救急車が非常に早い時間でやって来ますけれども、それでも実際に119番してから平均で6分かかると言われています。当然119番に電話をするまでの時間もあります。それから救急救命士が来て実際に除細動するまでに、平均大体9分はかかってます。そうしますとどんなに早く119番通報をして、どんなに早く救急救命士の方が除細動をしても、殆どの方は助けられないという事になるわけです。結局、救命出来るかどうかは患者さんが心室細動になってからいかに早く除細動するか、これはもう時間との勝負です。そうしますと救急救命士の方が来るのを待っては居られないわけで、そこで必要となるのがこのAEDという機械です。この機械を皆さん地下鉄の駅とか色々な所で最近ご覧になるのではないでしょうか。何の箱かなと思っておられるのかもしれませんが、これが自動体外式除細動器です。英語のAutomated External Defibrillatorの頭文字をとってAEDと呼びます。日本語でもAEDと呼ばれていますが、正式な日本語の名前は自動体外式除細動器と言います。何が自動かと言いますと、これは自動で心電図を解析してくれるのです。それから除細動をするかどうかというのもこの機械が判断してくれる。除細動するかどうか─これはボタンを押さないといけませんけれども、除細動してくださいというのも機械が指示してくれる。実際に除細動するということも機械がやってくれる。そういう事で自動という名前が付いているわけです。実際に開けてみますと機械に1、2、3と書いてあります。1、2、3と、この通りにこの機械を使えばよいのですが、実際どういう風に行われるかというのを動画と実演でご覧いただこうと思います。
まず最初に意識を確認します。それからできるだけ回りの人を呼び、人を集めます。それから119番に通報し、AEDがあるかどうかを確認します。そして顎を左手で持って呼吸をしているかを確認します。その後に呼吸をしていないという事がわかりますと心臓マッサージをします。
AEDが到着したら、傷病者のすぐ傍に置きます。本体にはボタンは三つしかありません。まず電源を入れますと、音声が流れますのでその後はその指示の通りに操作します。
上半身の衣服を脱がせます。次にパッドを取り出し、1枚目を書かれている絵のとおり右側の鎖骨の部分に貼り、2枚目を左側の脇腹の部分に貼ります。機械が心電図の解析をし、必要があればボタンを押すように指示が流れますので、点滅しているボタンを押します。ショックが完了すると「完了しました。…胸骨圧迫と人工呼吸を開始してください」と音声が流れます。
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