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No45 |
大切な人を突然死でなくさないために
〜あなたに救える命があります〜
(3/5)
では、この心臓突然死の原因になる不整脈を起こす心臓の病気にはどういうものがあるのかという事ですが、この病気は今日お見えの方の中にもお持ちの方がいるかもしれません。一番多いのは虚血性心臓病と言われる病気で、心筋梗塞などがこれにあたります。心臓を栄養している血管の病気です。心筋症という、原因がよくわかっていない心臓の筋肉自体に異常が起こる病気があります。これには肥大型心筋症などの病気があります。それから弁膜症、さらに心臓に構造には何にも異常は無いけれども不整脈だけを起こす病気があります。それにはブルガダ症候群、QT延長症候群といった名前の付いている病気があります。色々な病気が突然死の原因になるわけですが、このような病気のある患者さんが先ほどご紹介したような不整脈を持っていると、突然に命を落とすという危険性が高くなるとご理解いただきたいと思います。特に心筋梗塞というのは、発症したときにもこのような非常に危険な不整脈が出やすく、心筋梗塞が非常に重症な方では急性期だけではなく慢性期の、暫く経った後でも不整脈が起こるという事があります。心筋梗塞というのは心臓の表面を栄養している冠動脈という血管に動脈硬化が起こって、血管が詰まり血流が途絶えてしまって心臓の筋肉が死んでしまうという病気です。心筋梗塞になると、胸が押さえつけられる、締め付けられる、といった非常に典型的な症状があります。また、非常に不整脈が起こりやすいので、注意が必要な病気です。心筋梗塞を起こしたときにも注意が必要ですが、心筋梗塞からだんだん心臓の機能が悪くなる心不全という状態になりますと、また不整脈が起こりやすくなってきます。
心臓の超音波の検査をしまして、心臓を輪切りにして心臓の働きを見ると左心室という心臓のポンプとして一番大事な所が丸く見えます。心不全になりますとそこがまず大きくなっていますが、心臓の動きとして見てみますと正常な方の心臓というのは収縮、弛緩を繰り返しています。一回一回心臓が収縮するたびに心臓に電気が流れているわけです。これが心不全になりますと非常に心臓の動きが全体に悪くなってまいります。心臓の動きが悪いというだけではなくて、心不全の状態になりますと不整脈も起こしやすくなってくる訳です。心不全になってきますと呼吸するのが苦しくなる、息苦しいといった症状が出てきます。また、非常に疲れやすくなってきます。そういうのを皆さん「胸がこわい」という風に表現されるんですけども、これは非常に心不全の時の症状をよく表しています。非常に疲れやすくて胸が苦しいといったような症状が出てきます。心不全というのは、重症になればなるほど不整脈による突然死を起こす危険性のある方が多くなるかというと、必ずしもそうではなくてむしろ心不全として症状が軽くて「ずいぶん良くなって来たな」という患者さんの方がむしろ突然死する危険性がある、突然死を起こした患者さんが多い、という研究のデータもあります。したがって心不全になったという方はずっと治療しないといけない訳ですが、心臓の働きを良くしてさしあげるばかりでなく、不整脈にも十分に注意していかないといけないということになる訳です。
肥大型心筋症は先ほどの心筋梗塞と違い、どうしてこういう病気が起こるのかまだよく分かっていない病気です。心筋症という病気は多いのですが、その中でこの肥大型心筋症というのは、その名前の通り心臓の筋肉の肥大が起こるという病気です。高血圧がありますと、血圧が高い事によって心臓の筋肉の肥大が起こります。皆様方の中には先生から心肥大があると言われている方がおられるかもしれません。高血圧で肥大が起こるという事も良い事ではないのですが、肥大型心筋症というのは高血圧などの原因がなくて心臓の筋肉の肥大が起こるという病気です。特に閉塞性の肥大型心筋症という血液が心臓から出て行くところの心臓の筋肉が厚くなるというタイプの肥大型心筋症は、非常に危険な心筋症であることが知られています。肥大型心筋症の患者さんの一番多い死亡原因は心臓突然死です。10%位の方が突然死する危険性があると言われています。小学校、中学校、高校の学生さんが、特に運動した時に起こる心臓突然死の原因としては多いという事で、注意をする必要があります。
突然死の家族歴は要注意!
もう一つ、あまりお聞きになる事がないかもしれませんが、ブルガダ症候群という病気があります。これはなぜか日本を含む東南アジアに患者さんが多く、しかもなぜか男性に多い。若年から壮年の男性が夜間突然亡くなる原因になるという事で、ポックリ病と言われている病気の原因のひとつはこのブルガダ症候群ではないかと言われています。この病気は心電図を撮るとある程度診断がつくので、心電図の検診などでこのブルガダ症候群じゃないかという事で異常が見つかる事があります。結構その頻度は多くて、正常な方の0.5%という事ですから200人検査をしますと一人必ず見つかるという位頻度の高いものです。それではみんなが危険な不整脈を起こすかというと、必ずしもそうではなく、どういう方が実際に危険な不整脈を起こすのかは検査をしないとわからないという病気です。
これは私どもが経験した大変残念な患者さんの例です。40歳の男性で職場の検診で「心電図異常があるので検査を受けてください」という事で来られたのですが、全く元気な方で何の症状も無い。自分はどこも悪く無いし、運動をしても困らないという事でしたが、心電図を撮りますと普通ではない所見ですので、検査を勧めたのです。この方が必ず詳しい検査を受けた方がよいと考えた最大の根拠は、心電図の異常所見もありますが、お父様が30歳代に睡眠中に突然死なさったという病歴があるということなのです。これを突然死の家族歴と言いますが、ブルガダ症候群は時々同じ家族の中に発生するという事があります。このようにご家族の中に突然亡くなられた方がいるというのは、非常にその方は危険だという事を表しています。是非とも検査を受けて治療を受けていただく事をお勧めしましたが、ご本人が症状も無いので暫く様子を見たいということでした。ところがこの方は46歳の時にお父様と全く同じように睡眠中に突然亡くなりました。もう亡くなってしまった後では何とも治療のしようも予防のしようもないわけです。
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