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NO.4 |
不整脈
(2−2)
不整脈はすべて治療の必要があるのか
健康そうな高校生の半数近くに不整脈
私たちは平成元年から2年にかけて、旭川市内の、明らかに健康と思われる高校生ボランティア230人にホルター心電計を装着し、記録された不整脈を集計してみました。その結果、心室性期外収縮が74人(32%)に、徐脈性不整脈の1つである第2度房室ブロックが32人(14%)に、他にもいくつかの不整脈が出現していることが判明しました。不整脈=病気とする考えは全く早とちり
図2は、このうち心室性期外収縮の1日発生頻度と人数の関係をグラフにしたものです。これは、健康人にもある頻度で不整脈が存在することを示すデータで、「不整脈がある」すなわち「病気」とする考えは全く早計であるといえます。「不整脈には安易に投薬するな」が世界的傾向
近年、不整脈に対し安易に投薬することの非を説いた臨床的研究が世界的に相次いでいます。不整脈治療のための薬剤(抗不整脈薬)は、有効性と副作用を併せ持った両刃の剣だからです。過去の一時期のような、症状も危険性も乏しい心室性期外収縮が1日何干個出ているからそれを少しでも減らすべく投薬する、という時代は終わりました。
不整脈治療の実際
どういう不整脈を治療すべきなのかそれでは、一体どのような不整脈が真に治療すべきものなのでしょうか。以下に、治療を要する不整脈の種類、およびその出現状況につき列記します。カテーテル使い発作発生部位焼く療法も
(1)心房性期外収縮、心室性期外収縮など、それ自体は危険ではないが、動悸などの自覚症状が強く、日常生活などに支障を来す場合。
(2)何らかの心疾患があり、随伴する不整脈が心機能障害を助長すると思われる場合。
(3)頻脈性不整脈のうち、発作的に出現し、持続が長く、症状も強く、何らかの処置を加えなければ停止しないもの。
(4)徐脈性不整脈の高度のもので、心室の停止が数秒以上に達し、それに基づく症状(極端な場合失神)がある場合。
(5)上室性頻脈性不整脈の一つである心房細動では、全く不規則に心房興奮が起こり、時に左心房内に血栓を生じ、これが塞栓症の原因となり得るため、積極的に治療する。
(6)直接生命に危害を及ぼし得る不整脈(心室頻拍、心室細動など)。
通常、抗不整脈薬とは頻脈性不整脈に対する薬剤をいいます。上記の(1)(2)(3)(5)(6)において適用されます。近年、(3)のような発作性頻拍のうち、心臓内部のその発生部位がかなりはっきり固定できるものに対して、カテーテルを用いて発生部位に熱変性を起こして根治する治療法(カテーテルアブレーション)が開発され、注目されています。抗不整脈はいかんせん対症療法にすぎず、このような根治療法は今後ますます発展していくものと思われます。電気ショック与える「植え込み型除細動器」に健保の適用
(4)のような高度の徐脈性不整脈の場合、一時的にある種の投薬がなされることもありますが、結局は心拍数確保のためのペースメーカー移植が必要となります。
(5)の心房細動では、抗不整脈薬の投与と同時に血栓対策が重要です。
(6)に該当するものの全不整脈中の出現頻度は低いですが、心臓突然死の原因の大半はこれであるとされており、最も強力に、時にはいくつかの薬剤を併用しつつ慎重に経過を見る心要があります。このような患者さんに対し、体内に移植して、致死性不整脈発生時に自動的に直流電気ショックを与え、蘇生を図る装置(植え込み型除細動器)が開発され、ごく最近わが国でも健保適用となり、実用されています。
おわりに
不整脈の大半は、危険なものではないもし何らかの機会に不整脈が発見されるか、あるいは不整脈を思わせる症状が出現したとき、まず第一に考えて頂きたいことは「不整脈の大半は危険なものではない」と認識されることだと思います。要治療の不整脈もあるので、一度ホルター心電図を
われわれ医師も、不整脈のある方に安易に投薬することは、いたずらに重症感を持たれるという懸念と抗不整脈薬の副作用という両面から極力避けております。仮に投薬を行うにしても、副作用の少ない、動悸感を取り除くだけが目的のもの(例えば精神安定剤など)にとどめております。
ただ、先に述べた如く、治療が必要な不整脈も存在することは事実です。その確定診断のためには結局は心電図、可能ならホルター心電図をとるべきで、その意味では重い症状のない方でもお気軽に最寄りの病院を受診された方がよろしいでしよう。これらの検査で要注意の不整脈がなく、またその他の所見から、背景に重篤な心疾患もないようでしたら、まず安心されて結構だと思います。

