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高血圧
(4−1)
札幌医科大学第二内科助教授
島本和明
私たちの健康を損ねる病気はたくさんありますが、心臓・血管病はガンと並んで寿命に大きく影響する強い敵です。敵に勝つには敵を良く知ることが大切です。このシリーズでは極くありふれた、しかし、健康には極めて重要な心臓・血管病を取り上げ、わかり易く解説をします。
執筆者には循環器病の専門家をお願いしました。日常生活の中でちょっとした知恵を働かせて、心臓・血管病の予防に努めていただきたいと思っております。内容に関しご希望、質問があればどしどしお寄せください。
高血圧の人は脳卒中、心臓病のような合併症を起こしやすく平均余命が短いことはよく知られています。成人病として重要な位置を占める高血圧を克服するためにも、高血圧をよく知ることが最も重要です。
血圧とは血管の中を通る血流によって血管の壁にかかる圧で、心臓の拍動に伴って変化します。すなわち心室収縮の初期に血圧は最高となり、心臓が拡張して静脈側から血液が入ってくるとき最低となります。前者を収縮期血圧(最大血圧、最高血圧)、後者を拡張期血圧(最小血圧、最低血圧)といいますが、単に血圧の上とか下ともいいます。高血圧とはこの圧力が高い状態でWHOの基準(1978年)ではなるべく静かな環境で測られた座位の血圧(随時血圧)で最大血圧160、最小血圧95mmHg以上を高血圧、141〜159/91〜94を境界域高血圧、140/90以下を正常血圧としてますが、最近の基準では140/90以上を高血圧とするものが一般的となってきてます。
両親が高血圧ならば子供の60%に、片親だと30%に遺伝する
高血圧は遺伝性が強い病気です。両親が高血圧なら子供の60%に、片親なら30%に遺伝するといわれていす。また、日本人は欧米人に比ベて約2倍の食塩をとってます。ヤノマノインディアンという南米の原住民は全く食塩をとらない人種ですが、この人たちには高血圧がありません。日本国内でも東北地方は食塩摂取量が特に多く、高血圧の発症頻度も多いことが知られています。従って親が高血圧であった人や食塩を多くとる人は要注意です。そのほか、ストレスの多い人、ついつい過労になりやすい人や肥満、寒冷、コレステロ−ルのとり過ぎでも高血圧を起こしやすいので気を付けなければいけませんし、以前に慢性腎炎や妊娠中毒症などの病気にかかったことのある人も注意しなければなりません。
健康診断などで見つかる例多い
高血圧の特徴は、初めのうちは症状がなく、いつから血圧が高くなったか分からないことが多いということです。従って高血圧は健康診断、生命保険加入時、集団検診などで偶然の機会に発見される頻度が高い病気です。その後高血圧が持続することにより心臓、腎臓、血管に変化がきてついには脳血管障害(脳出血や脳梗塞)、心不全、尿毒症、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)を起こすというように非常に慢性に経過します。高血圧の主な症状を示しますが、多彩でしかも特徴が無く、また血圧の高さと症状の有無・強さとは必ずしも平行しません。
高血圧の主な症状
1)脳神経症状頭が重い、頭が痛い、ふらふら感、めまい、視力障害、手足のしびれ、耳鳴り、いらいら、興奮しやすい、不安、不眠、注意散漫、物忘れ
2)心臓症状動悸、息切れ、起座呼吸、心臓ゼンソク、胸部・心臓部の圧迫感、疼痛
3)腎不全症状口渇、多飲、多尿、頻尿、全身倦怠感、食欲低下、吐き気、嘔吐、頭痛、貧血
4)その他くび筋、肩のこり、体のほてり、精神緊張時の冷汗

